私だけのオカチマチ
京浜東北線に乗っていると、御徒町駅を通った。降りる駅ではなかったけど、なんだか懐かしい響きだなぁと思う。
小さいとき、家族で東京に行って上野や御徒町のあたりに行った。そのときの記憶が、ゆっくりとよみがえる。
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家族に連れられ、アメ横に来た。信じられないほど人がいて、店員さんのエネルギーも普通のスーパーとは違う感じ。賑わう通りを歩き、お菓子の卸売りをしているお店に来た。
「安いから好きなお菓子買いな」
そんなことを言われたと思う。いつもなら高いお菓子は買えないのに、ここで選べば何でも買ってもらえる! 子どもながらに興奮した。美味しそうなお菓子を見て、気になったものはかごにいれる。だけど、私の癖なのか、そう言われるとたくさん入れるのをためらってしまうのもあり、そのときどのくらいお菓子を選んだのかあんまり記憶はない。
「オカチマチ」という場所では、お菓子が安くてたくさん買ってもらえる。私はそんな風にインプットしてしまった。
だから御徒町は、お菓子が安いから訛ってオカチマチなのだと思っていた。
今思うと単純すぎて逆に面白い。今は漢字がわかるから、お菓子ではないことはわかる。徒というくらいだから、歩くことに関係するんだろうなぁと思い、だんだん由来が気になってきた。調べてみると、騎馬に乗れない下級武士(御徒、御徒組)が多く住んでいたから「御徒町」というそうだ(出典はここから)。
その理由を聞いても、やっぱり私にとって御徒町はお菓子の町というイメージは拭えない。そう思う人は世の中に私一人かもしれないけど、それでも土地と私の間にそういう結び付きがあることが、なんだかとっても嬉しいのだ。私にしかわからない繋がりがあることが、愛おしくてたまらない。
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そういう場所を、これからも持っていきたいと思う。それが事実とは違うことであっても、そういう繋がりがあっていてほしい。
ここはみんなでバレーして遊んだ公園だな。いつかこのイルミネーションを好きな人と見たんだよなぁ。そんな思い出が、何でもない土地を彩るとき、これからも"私にとって"の場所が増えればいいな、と密かに願っている。
P.S. 久しぶりに御徒町で降りてアメ横に行ったけど、エネルギー溢れるあの通りはやっぱ楽しかったです。通りに出てしまいそうな居酒屋の席も、なんだか由来を聞いたら納得でした。
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