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21歳の誕生日と"おくりもの"

 バイト帰り、友人との約束のために渋谷に出かけた。これを降りたら半蔵門線に乗り換えて~と考えている自分に驚く。20歳から今まで一番成長したことって、もしかして都会の電車乗り換えなんじゃないだろうか。

 11月21日で、21歳になった。20歳の誕生日から、よくここまで生きてきたなぁと思う。去年の今ごろは、学校に行けなくなって疲れきっていた。何度も何度も「もう消えてしまおうか」と考えては、ゲーム実況をただひたすら見たり、家にあるお菓子を食べきったりして、生きてきた。

 この一年で一番成長したことは電車の乗り換えかもしれないけど、一番学んだのは「あ、私って生きるの得意なんだな」という気付きだと思う。

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 最近、出産の動画を見た。人が誕生するって、こんなにも大変で、感動することなんだなぁと改めて感じる。

 後日母と電話しているとき、自然と「産んでくれてありがとうね」と言った。そしたら「え? 大野くん?」と返ってきた(VS嵐のオープニングトークで、誕生日のときに大野くんが「お母さん、いつも産んでくれてありがとう」と言うネタである)。細かい内輪ネタが通じるのが嬉しい。そのままでいてくれ、母。

 私にはまだ、出産なんていろいろと耐えらんないだろうなぁと考えながら、ふと昔読んだ絵本を思い出した。『かみさまのおくりもの』という可愛らしい本だ。内容は全く覚えていなかったけど、子どもを産むこととその絵本は私の中で強い結び付きを持っていたのだった。

 子どもたちは産まれたとき、神さまから一つおくりものを貰う。天使がそれを運んできてくれる。

 その絵本を思い出したとき、「じゃあ、私へのおくりものって何だったんだ?」という疑問が浮かんだ。そして思い付いた答えは、「生きるのが得意」というおくりものだった。

 もうダメだ。もう今すぐここからいなくなりたい。そんな強い衝動に駆られ、行動に移そうとした夜が何回もあった。朦朧とする頭の中では何も考えられないのに、どうしてか涙が溢れて止まらない。その涙に耐えきれず、私はいつも未遂で終わってしまう。そんなことを繰り返した何回目かで分かる。「あぁ、私はどうしても生きてなきゃいけないんだな」と。

 私がいなくなれば、悲しむ人がいることを知っている。だから私はそのために生きてなきゃいけない。生きるしか道がない。

 そして、私はどんなに落ち込んでいても食べることはできるし、寝ることも出来てしまう。そのうち、「生きるの得意なんだ私」と開き直ってきたのだった。得意なことって、何にも考えてなくてもその方向に向かってしまうことを言うと思う。それなら私はそれだ。

 そしてこの私の「生きるのが得意」というおくりものは、神さまだけがくれたわけじゃない。神さまを通じて、私の周りの人やもの、全てがくれたものだ。

 また遊びに行こうねという約束。今度あの人にこれについて話したいという気持ち。ゲーム実況の動画更新。好きなアーティストの新曲。見ているドラマの結末。

 何回も思っていることだけど、私はあなたがいなきゃ生きてこれなかった。たくさんのものをあなたからもらった。生死の淵で漂ったとき、確かに私は手を引かれた。

 だから本当にありがとう。誕生日になるといつも思う。誕生日おめでとうと言われると、「こちらこそ本当にありがとう」と言いたくなるのだ。私と話してくれて、関わってくれてありがとう。あなたに、本当に助けられてるよと。

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 周りに恵まれていること。それって運だけど、私の力にしてもいいと最近は思えるようになった。恵まれているからこそ、私は全力でやりたいことをやっていく。そして私がやったことが、誰かの力になればもっといい。

不幸にならないでくれ
僕の大切な人たちへ
あなたがただ生きていてくれる
それが僕は ただ ただ うれしい

傘村トータ「大切な人たちへ  / feat. 初音ミク」

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