小説風雑文
「どこにも何にも到達しない声」
そう少女が言った。僕は街の片隅のアパートの一室に彼女を連れ込んでいる。
「何も見えない。何も聞こえない。目は見えるのに。空が青いことを知っているのに。天井。蜘蛛の糸。世界の果て。ああ…」
僕は彼女をベッドに横たわらせる。そしてブラウスのボタンを1つずつ外していく。胸元をはだけさせ、そしてブラをずらす。姿を現した乳首の周りを指先で優しく優しく撫でていく…
「砂漠しかない。世界。ああ、いつだって砂漠にもどってくる。マムルーク…ベドウィン…。砂漠の民…」
そこで僕は愛撫を止める。「砂漠」という言葉から僕は何十年も前のことを思い出していた。タクラマカン砂漠をジープで横切り、ロブ・ノール湖畔まで遺跡調査に行ったあの時のことを…
あの時僕はまだ大学の博士課程に在籍していた。あの時は自分がこんな風になるだなんてことは想像すらできなかった。僕は今なぜこんなことをしているのか?わけのわからないことを呟く少女をなぜ自宅に連れ込んでいるのか?そしてなぜその少女を半裸にして愛撫をしているというのか?
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