自社のマーケターを育成したいなら、会社の本棚に置いてあると感心する7人の著者
おはようございます、iCAREという会社でマーケターをしているたけC(twitter)といいます。
「たけCさんはマーケティング学び始めたときに、誰の本を読んでたんですか?」
良い質問ですよね。多くの人はおすすめの書籍を聞くときに「どんな本」と聞くところを、「誰の本」と著者にフォーカスしていますからね。著者を知れば、芋づる式に名著を知ることができるのでナイスな質問です。
この質問への回答と合わせて、事業会社においてマーケターを育成したい会社が本棚に置いておくべき本という観点でおすすめの著者をまとめてみました。
ダイレクト・レスポンス・マーケティングに出会い、コピーライティングへ
あくまで私の経験上・・・という前置きの上ですが、スタートアップや新事業部においてインハウス(自社の)マーケターを育成したい場合に、「どこから勉強を始めたらいいんだろう?」というのがあるあるな疑問です。
答えから言ってしまうと、ダイレクト・レスポンス・マーケティング(略してDRM)の考えや実例から習得するべきだと思うんですね。
DRMとは、伝統的なマス・マーケティングとの対比で生まれた考え方ですね。どっちに優劣があるわけではないのですが、0→1フェーズにおいてスピード感をもって売上を伸ばすには適したマーケティング手法です。
マス・マーケティング
製品カテゴリや製品そのものの認知を広めることで、顧客の想起を獲得して、購買機会を最大化しようとする市場シェア獲得方法。
ダイレクト・マーケティング
メーカーが流通を介さずに、直接顧客にセールスする。顧客の属性(性別・年齢・地域など)データが手に入るので効率的な販売戦略が立てられる。
ダイレクト・レスポンス・マーケティング
顕在的なニーズがある顧客にセールスするだけでなく、潜在的な見込み客を幅広く集めて、継続的な売上獲得を目指したマーケティング手法。
私が初めてダイレクト・レスポンス・マーケティングに出会ったのが、大学3年生の頃のアルバイト。サプリメントの通販をしていた社長1人・アルバイト1人(私ですね)の小さな会社だったので、着実に儲けを生み出すコツを教わりました。よくあるサプリメントの売り方なんですが、↓のような流れです。
・初回は買いやすいように、定価の半額で販売する
・二回目以降は定価になるが、定期購入なら半額のまま
・定期購入を促すため、DMで継続的にアプローチする
・定期購入者には、関連する新商品を販売してLTVを引き上げる
要は、損して得とれ方式な売り方なんですね。初回購入だけの時点では赤字になるんですが、定期購入が続けられることで初めて黒字になります。
そこで鍵を握るのが、転換率(コンバージョン率)を改善するためのコピーライティングのスキルですね。
初回購入時、リスティング広告のCPAを下げるために広告文とLPを最適化すること。定期購入を促す際に、DMの内容や封筒の宛名を工夫すること。そもそもターゲットに価値を伝えやすくするための商品名の付け方。
ダイレクト・レスポンス・マーケティングでは、広告で集客してから実際に利益が生まれるまでに複数の段階を踏みます。そのため、こうした言葉の使い方ひとつで転換率が少しでも変わると、売上に大きな差が生まれるんですね。
結論としては、スタートアップや新事業部においてインハウス(自社の)マーケターを育成したい会社では、ダイレクト・レスポンス・マーケティング x コピーライティングの組み合わせでスキルを身につけるのが効果的だ。ということです。
では、
ダイレクト・レスポンス・マーケティングとコピーライティングを学べる7人の権威とその代表的な著書を順番に紹介しましょう。
もし私がマーケターとして面接や入社したときに、本棚にこれらの本が並んでいたら志望度が赤マル急上昇すること間違いなしですね。
1人目:神田昌典
とあるカンファレンスに立った神田さんは、自身のことを「日本のマーケターの父」と紹介しました(笑)半分冗談ですが、半分ホントですね。
おそらく30後半から50歳ぐらいまでのマーケターで、「神田昌典」を知らない人はいないでしょう。近年はセミナーへの登壇も数少なく、著書も監訳・監修ばかりなので、以前ほどのカリスマ性は見られませんが、間違いなく私の世代では「マーケターの父」です。
まぁあえて辛口なコメントをすると、神田さんの著書はそのほとんどが二番煎じ本なんです。多くは海外のマーケティングを日本流に置き換えているだけ・・・とも言えるのですが、逆に日本流に置き換えていることこそが神田さんのスゴさだとも言えます。
実は、このあと紹介する著者6人中5人が外国人です。当然ながらその著書の中で紹介されるマーケティング事例も、海外事例ばかりなんですよね。
「海外事例だから日本市場では使えない」なんてことは絶対ないのですが、やはりそのままでは当てはめづらいノウハウや事例があることも。。。そんなダイレクト・レスポンス・マーケティング事例について、神田さんは自身のビジネスやコンサルティング先で実践しているので、まさに日本流に置き換えられています。
そんな神田さんの著書の中でも私がもっとも感銘をうけたのが、『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』。
スタートアップ的に言えば、PSF・PMFを達成するために必要な実践的理論が学べますし、ワークショップ的に進めることもできます。とりあえず本棚に一冊置いておいて、インハウスマーケターが入社した際には実践させてみることをオススメします。
2人目:ジェイ・エイブラハム
今やダイレクト・レスポンス・マーケティングでは常識である、アップセル/クロスセル・USP(Unique Selling Proposition)・返金保証といった手法を広めたのがジェイですね。
神田さんの『60分間〜』と、この『ハイパワー・マーケティング』は同じ本棚に並べてほしいのでピックアップしました。使い方としては、神田さんが個別の具体論や事例を豊富に紹介している一方で、ジェイは本質的な理論や考え方に気付かせてくれますね。
いわゆる、経営者視点や顧客感情視点といったものって、なかなか身に付かないと思うんですよね。当たり前ですけど・・・インハウスマーケターと言えど、サラリーマンですからね。
そういう意味で、事業責任者や経営幹部としても引き上げたいマーケターがいるならば、この本を読ませて感想を聞いてほしい一冊です。
3人目:ダン・ケネディ
今日紹介する7人のうち、まず最初に買うべき著者は誰か?と問われれば、間違いなくダンです。
BtoBビジネスにおいて今や王道となっているコンテンツ・マーケティング。この言葉が生まれる前から、インフォ・マーケティングを提唱しているのがダン・ケネディであり、ダイレクト・レスポンス・マーケティングとコピーライティングを高いレベルで実現している起業家でもあります。
ダン自身は「コンテンツ・マーケティング」そのものについて言及していることは少ないのですが・・・
中長期的にCACを低減していく施策として、BtoBビジネスにおいてはコンテンツ・マーケティングは取り組まない理由がありません。しかし、残念なことに日本のコンテンツ・マーケティングはどこまでいっても「SEOに最適化して無料でリードを集める方法」という誤った理解になってしまっています。
そうではなく、「リードとの継続的な関係づくりのために有益な情報を発信する」ことなんですよね。
・誰と関係づくりするべきか?
・どこで情報を発信すると効果的か?
・どんなメッセージの出し方が収益につながるか?
といった、ダイレクト・レスポンス・マーケティングの基本中の基本とコピーライティングのコツを同時に教えてくれるのが、ダンを一番に推薦する理由です。
4人目:デイビッド・オグルヴィ
「広告に使っているお金の半分は無駄になっている。
問題は、どちらの半分かが分からないことだ」
ジョン・ワナメーカーが示した広告界の課題。ドキッとしませんか?
私が運用型WEB広告を回し始めていたころ、広告運用の師匠からこの言葉を紹介されて、反省した心の痛みは未だに忘れることができません。
当時(2009年頃)はまだまだ運用型広告のノウハウが世の中に浸透しておらず、ある程度の知識があればとてつもなく安いCPAでコンバージョンが獲得できていました。だから、採算がとれるアカウント設計が一度できると、改めて改善することを怠っていたんですね。
そんな驕っていた時期に投げかけられた言葉と同時に、推薦されたのが本著『ある広告人の告白』でした。
インターネットでオグルヴィについて調べると、その多くがコピーライティングの技術・ノウハウについて言及しているものがほとんどです。しかし、本著から学ぶべき本質は技術ではありません。広告の制作・運用に取り組む姿勢(マインドセット)なのです。
「広告(クリエイティブ)が生み出すべき成果は何なのか?」
広告を読んだ人々を楽しませること?美しい言葉の並びで感心させること?・・・いや違う。広告の成果とは「売る」こと、それ以外にないのだ。
「売れる広告を生み出すために必要なことは何なのか?」
才能か?言葉を紡ぎ、デザインを創るセンスか?・・・いや違う。売る広告には、商品を知り尽くすリサーチが欠かせないのだ。
世の中に出して終わりな昔のマーケティングではなく、継続して運用することが成否をわける現代のマーケティングだからこそ欠かせないマインドセット。オグルヴィからぜひ学んでいただきたい。
5人目:ジョン・ケープルズ
コピーライティングの勉強を始めたい?
コピーがそこそこ書けるようになったけど、一皮むけたい?
だったら、初心者であれ中級者であれコピーライティングを学ぶならこの伝説的な名著は真っ先に買うべきでしょう。広告に向きあうマインドセットをオグルヴィから学ぶとしたら、技術はすべてケープルズから学べるといっても過言ではありません。
・
・
・
と言っても、読み方には注意が必要です。本著の最大の特徴は事例・サンプルが豊富に掲載されていることなんですが、実はこのサンプルが学ぶ上で厄介者なんですね。
当たり前なんですが、英語の書籍ですので元のコピーは英語です。それを日本語に訳しているのですが、ほぼ直訳です。だからサンプルの文体をそのままに真似してしまうと、日本語としては読みづらさが残ったり、意図した狙いにそぐわないコピーになってしまうことも・・・
私自身も痛い経験をしていました。文体ママにキーワードだけ変えたキャッチコピーはそこそこの成果はだすのですが、大当たりすることはなく。さらに競合も同じ文体のコピーを掲載するので泥仕合になってしまうんですね。
ですので、サンプルそのものは参考程度に、コピーの構成要素や技術的ノウハウをインプットする読み方がおすすめです。
6人目:ジョセフ・シュガーマン
(装丁が変わりました・・・以前の水色とピンクが好きでした)
ケープルズの書籍は関連本含めても分厚いです。初心者にとっては手が出しづらいかも・・・というならば、シュガーマンをおすすめします。まるで一つのセミナーを聞いているかのような流れで、売るためのコピーライティング・広告文の作り方を学ぶことができます。
「コピーライティング」について日本人が著者の本はそう多くないです。(Amazonで40冊程度)
なので、コピーライティングに関する書籍を3冊ほど読むと「どれも同じことが書いてあるなぁ」と気付くと思います。そうなると、「原典となった書籍はどれなんだろ?」と気になるタイプの読書家さん、いますよね。
実は私もそうなんですが、コピーライティングに関して調べてみると、ケープルズの『ザ・コピーライティング』とシュガーマンの『10倍売る人の文章術』が原典になっていますね。
技術的な体系はこの2冊で学び、日本語としてのサンプルを知りたい場合に日本人著者のコピーライティング本を参考にすると仕事に活かしやすいでしょう。
7人目:松尾茂起
ここまで6人の伝説的マーケターとその著書を紹介してきたんですが、ある1点だけ残念なことがあるんですよね。
それはSEOやSNSを想定したデジタルマーケティングが加味されていないという欠点。
いまやどんなマーケティングをとるにしても、GoogleによるSEOを無視できないですし、twitter・Facebook・Instagram・YouTube・LineといったSNSも使わなければデメリットにしかなりません。
しかし、これらのサービスが台頭してきたのは直近10年のことなので、今日紹介した書籍ではまったくと言っていいほど触れられていません。
そこでダイレクトレスポンスマーケティングの大家のノウハウを、現代デジタルマーケティングに落とし込んだマーケターが松尾茂起さんです。
松尾さんは当時、SEOに強いWordPressテンプレート『賢威』の販売者として認識していたのですが、上記の赤い本『ソーシャルメディア時代の新SEO戦略』を読んだ時に衝撃を受けたんですね。
Googleが求めるSEOの本質とSNS(twitterやはてブ)の連動性をこうも分かりやすく図示できるマーケターが、日本にいた!
なにより松尾さんの本を読むべきだと思うポイントは、日本人の感性・日本人の思考を前提にマーケティングノウハウが組み立てられているから。識字率が高くハイコンテクストな会話が多用される日本人ならではのSEOや、諸外国とは異なった使われ方をするSNSを読み解いた上で、コピーライティングスキルの使い所を教えてくれる稀代のマーケターです。
赤い本はすでに時が経ちすぎて(2011年発売)いますが、『沈黙の〜』シリーズは10年使えると言っても過言ではないので、表紙にだまされずに会社の本棚に揃えておいてほしいですね。
なんで、ダイレクトレスポンスマーケティングはSaaS界隈で話題にならないんだろうか?
以上で、自社のマーケターを育成したい会社なら、本棚に置いてあると感心する7人のマーケターをご紹介しました。いやー長かったですね。
各書籍を紹介しながらふと疑問に思ったことがあります。
なぜ、DRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)はSaaS界隈では話題にあがらないんでしょうか?取り組んでみると分かるのですが、実はDRMの考え方ってTheModelと同じなんですよね。
たしかに違いはあります。DRMは個人事業主〜小規模法人レベルでの高利益率を獲得することを目的にすることが多く、TheModelは短期間での事業拡大・市場シェア獲得を目的にするスタートアップで採用されていますね。
ただ、どちらの考え方にしても見込み客・顧客の立ち位置をファネルとして切り分けることで「再現性のある収益構造」を作り出そうとしていることに変わりはありません。
これまでDRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)に触れたことがなかったスタートアップ界隈のマーケターや、伝統的なマスマーケティングしか知らない大企業の新規事業部の方には、ぜひ今日紹介したマーケターたちの書籍から学んでみてほしいですね。
それでは!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?