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連載小説 下宿あだち(40)


後半残り僅か、ポンタが蹴ったボールは相手の裏のスペースにタイミングよく飛び出したゴンの前に、ボチャン、と水を跳ねて落ちた、ボールが転がる事を予測して飛び出したキーパーは水溜りでボールが止まった事に驚き慌ててゴールに戻ろうとするが、冷静なゴンはそんなキーパーの頭上をフワリと超すループシュートを放った、

キーパが飛びつくも届かない、そのままボールはゴールに吸い込まれた、


ポンタの高校は後半残り僅かのところで先制点を上げた、ゴールを決めたゴンの元に皆が集まり、ヤッタ、ヤッタ、と万歳している、ポンタはゴンに真っ先に駆け寄りギュッと抱きしめた、大雨に打たれ静かになっていた応援席も皆傘を投げ出しずぶ濡れになりながら飛び上がって喜んでいる、ポンタ達の歓喜をよそに黄色い軍団はすぐにゴールの中からボールを拾うと全速で戻り試合の再開を待っていた、主審は早く自陣に戻るようにポンタ達を促した、

先制された黄色軍団は残り時間があと僅かでも慌てることはなかった、応援団もあの野太い声で淡々とエールを送り続けている、ただでさえ鋭い彼らの眼光は先制されたことで一層凄みを増した、

試合はロスタイムに突入した、相手のコーナーキック、これが恐らく最後のワンプレーとなるだろう、ここを凌げば優勝だ、そして目標だった全国大会に行ける。


つづく

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