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連載小説 下宿あだち(48)


吉田先輩がようと窓を開け、ほれと今日の戦利品のチョコレートをポンタに差し出した、

共通一次試験と国立大学二次試験を終えた吉田先輩は毎日パチンコ屋に通い出した、夜ごとポンタの部屋の窓を開け階段に座り込みその日のパチンコの話をするのが日課になっていた、先輩の話はとてもわかりやすく、またポンタの興味をそそった、

ゼロ戦と言うパチンコ機種は台の中の飛行機の羽が拾った玉が真ん中の当たり穴に入ると連続して羽が開き玉をどんどん拾うらしい、今日は一台打ち止めにしたと言う、フィーバーという機種はデジタルが付いていて777か333が揃うと大きな穴が開き二箱いっぱい玉が出るらしい、今日はこんなに儲かったといつも先輩は鼻高々に話した、

お前はあと二年無理だな、と言われたが毎晩話を聞かされるポンタはパチンコがやりたくて我慢出来なくなった、

この街のパチンコ屋に行って見つかったら大事になる、ポンタは春休みの帰省時に大阪で途中下車しパチンコ屋に寄ってみる事にした、

大阪駅前のパチンコ屋は客も疎らだった、見るからに幼さの残る風貌のポンタを店員達はチラチラと訝しげに見たが何も言わなかった、ポンタはドキドキしながら初めてのパチンコを打った、

しかし吉田先輩から聞いていた様にジャンジャン玉が出る事は無かった、玉はみるみる無くなり追加追加を繰り返すとあっと言う間に手持ちのお金は尽きた、挙句もう少しで出るだろうと日奈子の土産代に取っておいた分まで全部スッてしまった、

ポンタは自分用に買ったRCのTシャツをお土産として日奈子にあげた、清志郎の顔が大きくプリントされたとても外では着られない様な柄だったが日奈子はとても喜んでくれた、パジャマで毎晩着ているらしい。


つづく


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