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連載小説 下宿あだち(46)


たった今切ったばかりのピンクの公衆電話が鳴り出した、ポンタが受話器を取ると日奈子からだった、やっぱりやめとく、と言うではないか、

天まで昇る様な幸せな気持ちは一気に地の底まで突き落とされた、ポンタの喜びは唯のぬか喜びとなった、

その代わり日曜日は家にご飯食べに来て、お母さんが楽しみにしてるから、と日奈子は言った、夕飯に呼んでくれるのはとても嬉しいがポンタは少々複雑な気分だった。


夕飯をお呼ばれした帰り道、途中まで日奈子が送ってくれた、

ポンタごめんね小さな街だから噂になっちゃうと悪いから、でも映画に誘ってくれてすごく嬉しかったありがと、と日奈子は言うとポンタの頬にチュッとキスをした、

驚いたポンタは手でほっぺたを押さえながら日奈子を見た、じゃまた明日おやすみ、と言うと日奈子は目を逸らし踵を返し走って帰って行った、

今しがた自分の身に起きた奇跡のような出来事を現実とは思えないポンタは自分の手の平を眺めしばし立ち尽くしていた、

満月がお堀の水面に反射してキラキラと綺麗な夜だった。


つづく

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