コメンテーター津良野房美#3
去年の今頃、ワイドショーはコロッケウイルスの話で持ち切りだった。
ウイルス禍の真っ只中に"ヅラ評論家"としてデビューした房美には全く仕事が来なかった。コメンテーターはウイルス研究家達の独壇場だったので仕方ない。
その後しばらくしてアメリカでワクチンが開発され日本国民全員が接種を終えた。
すると人々は瞬く間にウイルスの事をすっからかんに忘れてしまった。
しかも一年以上抑えていた鬱憤を一気に爆発させた国民は、仕事をほったらかして毎日朝から晩まで、ところ構わずどんちゃん騒ぎを始めた。
老若男女問わず道路の真ん中で踊り狂う。全裸で踊る人も続出した。 DJポリスも出動したが一緒になってパンツ一丁でラップを歌った。すれ違う他人同士は禁忌だったハグやキスをしまくっている。
ワイドショーは狂乱する国民の姿を連日放送した。
スクランブル交差点で裸踊りしている民衆の中継を、醒めた表情で見ていた房美は、いつものべらんめえ調で思っていた。
"馬鹿騒ぎしやがって!サル共!"
"オメーら忘れんなよ!
政治家達はオメーらが忘れるのを待っているんだぞ!
ウイルス騒動の時のあのタコな政策も七十五日でオメーらはきれいさっぱり忘れてしまうんだろ!
オメーらが忘れた頃に選挙して、しれっと当選してやろうと政治家共は悪巧みしてるんだぜ!"
どんちゃん騒ぎは半年ほど続いた。
国民がお祭り騒ぎに飽きだし、正気を取り戻しはじめた頃から、少しずつ房美に仕事の依頼が入り始めた。
つづく
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