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使ってみた。 『連結ドーナツ抜き型』 後編

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

パン屋さん時代に考えたこと、やってみたこと、使ったもの 30.

何か良い方法はあるはず・・・
思いついたのが、大きなシートバターを作ったときと同じ分割機だった。

この油圧の力なら切れるんじゃないか?それも均等に

早速、3連結で試してみる。
抜き型で分割機を痛めると困るので底にまな板を敷き、その上にドーナツ生地、そして連結型の刃を生地に向けてフタをし、スイッチを押す。
ドキドキしながら分割機のフタを開けて唖然・・・

(認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを)

油圧のスイッチをどれくらい押し続ければいいのか見当がつかず、押しすぎた抜き型は生地を切るだけでなく一緒にまな板も貫通し、おまけに3連結の真ん中は溶接が外れ壊れてしまった。

(よく見ておくのだな。実戦というのは、ドラマのように格好の良いものではない)


失敗し壊れたプロトタイプ RX-78-1


それでも、ぼくはこのとき確信をした。

絶対にイケる。

失敗を踏まえ検証し、懲りずにamazonで抜き型を箱買いして改めて職人さんに作ってもらったのが20連結。

通称 RX-78-2

分割機の内寸ギリギリで収まるサイズ、下に敷くのはまな板でなくステンレス製の板。油圧の力で溶接が外れないように補強と、刃だけに力が集中して壊れないよう抜き型の間には4本の柱も溶接してもらった。
これが実践で使用するものになる。

(見せてもらおうか、連邦軍のモビルスーツの性能とやらを)

試してみると結果は想像以上だった。

(ええい、連邦軍のモビルスーツは化け物か!)

何はともあれ、これで一度に20個のドーナツ生地を抜けるようになった。

その後、分割機を買い替えることになったため、内寸の違いにより連結抜き型も作り直すことに。

3代目となるRX-78-3 通称G-3 を作るにあたり、2代目から改良した部分がある。
2代目がかなり重かったため余計な補強をなくし、抜き型の間隔もギリギリまで狭くして少しでも軽量化をお願いした。
そして課題だった抜き型の中に入った生地を指で押し出す作業。
かなり手間な上、重い連結型を立てて支える人と型に入った生地を指で押し出す人という2人掛かりだった作業を1人でもできるようにと考えた。

そこで、もう一つ製作をお願いしたものがこちら。

通称 Gファイター

生地が入ってしまう部分すべてにステンレス製の棒が入るようになっていて、抜き型と重ねたときに「棒で生地を押し出す」というアナハイム・エレクトロニクス社も驚きの最先端テクノロジー。
重ねるときに位置がズレると、またそれがスタッフにとっては小さなストレスになると考え四隅にはガードも付けてもらった。

本体そのものが軽量化され、生地を取り出す作業も容易になったため、このドーナツを一度に20個抜くという作業が1人でもできるようになった。

(さらにできるようになったな、ガンダム)

つづく

※ ()内は、そのときのぼくの心情を描写したモノローグ。




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