ぼくとフランソワ・シモンさんの15年。 7.
※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。
本屋さんでCasa BRUTUSを手にしたぼくは、それまで同様、表紙買いをして家路を急いだ。
本文を読めば、またあの難解な特有の言い回しや文章が待ち受けていると身構えたけれど、今回はそうでもなかった。レストラン批評のときのような難解な表現は影を潜め、いくばくかの辛辣さは垣間見られるものの全体を通しとてもわかりやすい言葉で表現されていた。
ページを読み進めるとベッカライ・ブロートハイムの明石さんやビゴさん、パンテコの松岡さん、ルヴァンの甲田さんといった日本の第一人者の方々に会いに行かれインタビューをされている記事へと続く。
いま読んでもどのインタビューも面白いけれど、特に松岡さんとのやり取りはとても興味深くて面白い。
そしてインタビューページの次は、レストラン批評のときとはまた違う刺激的なページが待っていた。
クロワッサン、バゲット、カンパーニュ。関東、関西でいちばんおいしい店は?
タイトルの下には、たくさんのパンが並んだテーブルとそのパンを食べようとするシモンさんの写真。それも黒色の目隠しをされていて、それがブラインドテイスティングであることを示唆している。
日本にはいろんな種類のパンがある中で、クロワッサン、バゲット、カンパーニュというフランスのトラディショナルなもので比較、ランキングしようというのが、とても ”らしいな” とぼくは思った。
当然オーセンティックなものが評価されるという意図も伝わってくる。
ここで本物論ということを書きはじめるのはナンセンスだと思うし、ややこしくなるから書かないけれど、当時のぼくが考える「もしも本物があるならば」という見方をすれば、結果は腑に落ちるものだった。
ランキングの詳細も本題でないので書かないけれど、中でも目を見張ったのは関西の1位。何と、クロワッサン、バゲット、カンパーニュのすべてが神戸のコム シノワさんだった。
クロワッサンとバゲットは関東、関西それぞれに分かれランキングされているのに、何故かカンパーニュだけは東西を合わせてのランキングだったので、コムシノワさんはその中で1位になったことになる。
これはぼくの推測になるけれど、カンパーニュだけが東西に分けずランキングされていたのは、当時カンパーニュを作られていたお店が少なかったのではないか。
クロワッサン、バゲットに比べ、カンパーニュというパンに対する消費者の認識も、やはり今と比べると低かったに違いない。
そう思うと、こういったところからも時代の変遷を感じる。
何はともあれ、3冠になったコムシノワさん。
そのお店は、同業者やパン好きさんには今更説明不要な業界のスターシェフであり、とてもチャーミングで愛すべきキャラクターの西川シェフ(現サ・マーシュ )が率いて来られたお店である。
つづく
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