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『小さくて強い店』について考えてみた 7.

※こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

無理をする、気合いや精神論で何とかしようとする働き方はしない方がいい。とは書いたけれど、実際にはよほど仕組みのできているお店でもない限りそういったことが避けれない場面はやはりある(だから仕組みをつくることは大切)。

例えば開業直後の時期がそうだし、年に何度かある繁忙期などには多少の気合いだっている。
問題なのはこれが常態化することで、特にお店を始めたばかりのときは大抵の人があれもこれも作れるので作ろうとする。
ところがこれまでそれができていたのは、勤めていたお店には自分以外にスタッフが何人もいてくれたからであって、それを1人、2人で始めたお店で同じようにやろうとするには当然無理がある。だから却って必要な製造量を作れなくなったり、また無理に増やそうとすると今度は身体を壊すほどの長時間労働になる可能性が高くなる。

そんな簡単なこともわからないのかと思われるかも知れないけれど、意外とわからない人は多い。いや、頭ではわかってはいるだろうけれどお店を始めたばかりの人というのは、それほど気持ちが前のめりになっているし必死でもある。
ぼく自身そうだったから気持ちはとてもよくわかる。
それなりの額を借入れ、はじめたお店である以上作れないといけないし売れもしないといけないけれど、通常お店というのは2年、3年でやめるわけでもないので何年間も継続させる必要がある。

ギリギリの人数でお店を運営するのは、誰か1人が怪我や病気にでもなれば恐らく臨時休業になるだろうし、場合によってはそれが長期になることだってあり得る(最近、ぼくの身近でも何軒もこれがあった)。
ぼくには、もうこれだけでも小さなお店の大きなリスクとしか思えないし、最大の懸念だとさえ思う。

ぼく自身はどうしてきたかといえば、やはり無理をしてきた。
休みを取らなかったり寝ずに働き続けるといったことをやってきた。
当時はそうせざるを得ないと本気で思っていたけれど、きっと他にやり方や方法はあったと思う。それをしなかったのは単純に、ぼく自身が考えの足らないバカだったということに尽きる。
「あのとき(の大変さ)があったからこそ、いまが」といった見方もあるかもしれないけれど、ぼく自身はまったくそう思わない。
それよりもあんな無茶な働き方をしていながらいまこうして無事に続けていられることの方がたまたまで、運が良かっただけとしか思えないし、何よりあのときにもっと考えてやっていれば、いま頃もっと前に進めていたに違いないと思えてならない。

生産性の低さを長時間労働で補うといった考えは、悪しき慣習を助長させるだけで決して問題の本質を解決するものじゃないし、またそれを正当化するためによくわからない精神論や業界でしか通用しない常識を持ち出しやり過ごそうとするのは、やはり思考停止なんだと思う。

つづく




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