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使ってみた。 『しまちゃん IV 』

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

パン屋さん時代に考えたこと、やってみたこと、使ったもの 33.

ここ数年、ぼくの興味の中心は製パン機器や道具といっていい。
仕事をする上で機器肯定派であることはこれまでも書いてきたし、元々ぼく自身が便利な道具や機器が好きだということもある。

昔を思えば広めの厨房を持つことができるようになったけれど、製パン機器も大きなものにしてきたから、いくつも入れるとすぐに手狭になる。
もうこれ以上製パン機器が入らないと判断したぼくが次にやったことは、できるだけコンパクトで生産性を高めてくれそうな道具や機器をを探すことだった。
無論その目的は大きな機器を入れるのと何ら変わらない。

ぼくが探したものの一つに皮むき機がある。
(だから昨日、一昨日とタルトフィヌ・オ・ポムの話を書いた)

店をはじめたらタルトフィヌ・オ・ポムを必ず作ると決めていたぼくは、フランスのお店で使っていた皮むき機が欲しくて、帰国する前にパリの道具屋さんで同じものを購入した。
手動だけれどとても優れもので、皮を剥き終えるとスライスもできているというプロ仕様の道具だった。

この皮むき機は何年か使用した後に壊れてしまい、同じものを探したけれど当時日本では見つけることができなかった(いま調べたら日本で同じものが買えるけれど、10万円以上もする)。
仕方なくよく見かけるプラスチック樹脂製のものを使っていたけれど、とにかく使用するりんごの数が多かったので、よく壊れ何台も買い直すことになった。

皮むき機を使用していても製造が追いつかないほどタルトフィヌ・オ・ポムは売れたため、もっと早くて便利なものはないかとネットで探し見つけたものがこれ。

しまちゃんIV

スイッチはフットスイッチ

商品名の由来もよくわからないけれど、阿蘇カラクリ研究所という工房で技術者の福山さんが1人で作られているもの。

webサイトを見に行くと、発注するのが不安になるようなよくわからない作品が 次々と出てくるけれど、福山さんの技術は確かそうだし書かれていることを読んでいると仕事に対する誠実さ、真摯さが伝わってくる。
またそれは発注の為のメールのやり取りからもひしひしと感じられた。

元々は梨をむくための道具として作られ、大量の干し柿を作られる農家さんのために改良を重ねていまの形になったそう。
その構造は恐ろしくシンプルで、アルミ製の土台にインダクションモーターを載せ、それに回転針をつけて回すという仕組みになっている。

福山さんはメールのやり取りの中で「その機械は単に回るだけなので何の工夫もありません。泣けるほど単純で技術のカケラもありません」と書かれていたけれど、その姿は余計な機能や装飾のない無骨さこそがカッコいいし、トグルスイッチ好きなぼくにはたまらないつくりになっている。

現在は、りんごを皮ごと使うようになったので、じゃがいもパンに使う大量のじゃがいもの皮を剥くのに使用している。
使いはじめてもう半年以上になるけれど、一度の不具合もなければ故障もない。
決してハイテクではないけれど、この質実剛健さこそ、現場が本当に求めている道具だと思う。 

つづく


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