“コンサルタント“ って、なんですか 2.(余談)
ぼくがお店をやっていた21年間、コンサルタントに依頼しようと思ったことは一度もなかった。
店を潰しそうだった時代、軌道に乗ったと感じた時代、拡大へ進もうとした時代、いずれの時代も一瞬たりとも依頼しようと頭を過ったことがない。
コンサルどころか店のデザインも自ら依頼することはなかったし、デザイナーさんに入ってもらうにしても自分の意向を強くお伝えし、それを形にしてもらった。
余談になるけれど、ぼくが19歳のとき最初に修業をはじめたお店は小さなオープンキッチンで、カウンター越しに料理などを提供し、お客様と雑談をすることもしばしばあった。
ある日、年配のお客様から「君も将来は自分の店をするんか?」と訊かれたことがある。
ぼくが答えるよりも先に横にいたお師匠さんがこう答えられた。
「彼は必ず自分でやります!ずっと店をやると言っていますから。そうですね、例えば彼の月給を100万、200万にしてやっても、それでも彼はいずれ辞めて自分で店をします」
ちなみに、このときのぼくのお給料は、11万円で税込年収は132万円だった。
ぼくには料理でお世話になったお師匠さんが二人おられるけれど、このお二人がおもしろいほど対極的な方で、最初のお師匠さんはそれほど料理の技術があるわけではなかったけれど話術に長け、とても魅力的でとにかく商売が上手い人だった。
二人目のお師匠さんは、とても技術が高く料理をされている所作まで見惚れるほど早く美しかったけれど、職人気質が強過ぎたこともあって商売は上手くなかった。
このお二人を繋げれば、きっとお互いに良い影響を与え合うに違いないと考えたぼくは、お二人を飲みに誘ったことがある。
バーカウンターに座り、ぼくを真ん中に両脇には二人のお師匠さん。
場も和み話が盛り上がったころ、お二人がこんな会話をされたことをよく憶えている。
師匠 A 「ところでBさん、やっぱりこいつ(ぼく)は、いまも店をやる言うてますか?」
師匠 B 「言うてます、言うてます。ずっと、店やるって言うてます」
師匠 A 「やっぱり言うてましたか」
師匠 B 「Aさん、もし西山が将来店ができなかったら、こいつどうなると思います?」
師匠 A 「死によるんとちゃいますか。こいつは、店をやるために生まれて来たような人間やさかい」
師匠 B 「やっぱり、そう思いますよね」
冗談を話しているようでもなく、この間お二人ともずっと真顔で話されていた。
このとき、ぼくは23歳。
お師匠さんたちからこう言われるほど、ぼくは技術の習得もそうだけれどそれ以上に店をするための勉強を並行して続けてきた。
それは内外装のデザインのこと、店をする上で必要な経営のこと、それから外食業界の潮流を追い続けるため、当時刊行されていたフードビジネス誌も読み続けた。
そんなぼくが現役時代程度の規模であれば、コンサルティングを必要としなかったのも自然なことだったと思う。
つづく
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