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使ってみた。 『ドリンク用冷蔵ケース』

パン屋さん時代に考えたこと、やってみたこと、使ったもの 19.

ここからは、パン屋さん時代に使ってみた道具や機器など、ぼくが良かったと思ったモノの話を書いてみる。
中には特注で作ったものがあれば個人店規模では必要ないもの、本来の使い方とは違うものもあるし、これらを店のサイト(ぼくのブログ)で紹介していたのも5年以上前になるからいまならもっと良いものが出ているかも知れないので、そこはご了承ください。

まだ京都今出川の店(赤色の店)しかなかったころ、最初に困ったのは製法を変更したときだった。
長時間の冷蔵発酵は、これまで書いたようにメリットも多いけれどデメリットとして、当日用意してある生地を使い切るとそれ以上忙しくなっても基本的には追加が難しく、売り切れを起こすことになる。だから生地を冷蔵保管できるスペースがそれなりに必要といった側面がある。

製法が変われば工程も大きく変わるので、本来それに応じた設備や機器が必要になるけれど、開業するときには想定していなかったので設備を追加するほどの予算もなければ、それ以前に厨房にはこれ以上製パン機器を置けるスペースも残っていなかった。
仕方ないので段取りを工夫し既存の設備でどうにかやり繰りをしていたものの、4年目に入り突然忙しくなったことで製造能力(生地の保管スペース)の限界になった。

早い時間に売り切れを起こし(ぼくはこれを善しとは思わなかった)、それでも遠方から来店されるお客さまに申し訳ない思いだったぼくは、何とか冷蔵庫を置ける場所を確保できないものかと考えたけれど、どれだけメーカーさんのカタログを見ても厨房のわずかに残ったスペースに収まるサイズのものはなかった。

こうなったら家庭用冷蔵庫の中を改造してもらうとか、できないものか(家庭用なら縦長なので設置面積が足りると思った)とバカなことを考えていたとき、ふと思いついたのが縦長のドリンク用冷蔵ケースだった。
サイズを調べるとこれならかろうじて設置することができる。また、考えていた以上に高さのあるものがあった。

ぼくはメーカーさんに「これを買うので、一緒にお願いしたいものがあります」と依頼をした。
ドリンク用冷蔵ケースの中には何枚か網棚が差してあるけれど、パン生地を仕舞うのには使えない。そこで冷蔵ケースの内寸に収まる冷板(焼成用でなく生地を冷蔵庫などに仕舞うための天板)をできるだけ軽い素材で作って欲しいとお願いをした。仕舞う生地はドリンクほど高さがないので、結構な枚数を作ってもらった憶えがある。

もちろん本来の使用方法でなければ製パン用冷蔵庫でもないのでベストではないけれどあの頃ころ、あともう少し冷蔵スペースさえあれば・・・と痛感していたぼくにとっては、買って本当に良かったと思えるものだった。
また、このときに既製品でなくてもお願いをすれば、ちょっとしたものなら作ってもらえる可能性があるということを認識できた。

やはり何事も「やってみなはれ、やらなわからしまへんで」ということなんだと思う。

つづく


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