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使ってみた。 『大きなドゥコンディショナー』

パン屋さん時代に考えたこと、やってみたこと、使ったもの 20.

ぼくが店をやっていたときは本当に色んなものやことを試し、メーカーさんや職人さんにも無理をお願いして作っていただいたものもあった。

店をはじめるにあたり製パン機器を選定するときは、作りたいものや工程、立地などから想定する製造量、予算などによって決めると思うけれど、新宿三丁目のマルイさんへ出店したときには、想定する製造量がまったく想像もつかず本当に困った。
うちのことだから最初は売れないことは想像できたけれど、ハイパーウルトラスーパー超一等地だけに後々に売れたときのことも考え製造能力を用意する必要がある。

お世話になっていた製パン機器メーカーのベーカーズプロダクションさん(以下ベーカーズ)に相談し、用意することになった窯は通常の3段窯と4段窯の2台。
他にも大きなものや数も多かったけれど、超一等地故に今度は厨房面積を広く取ることができない。苦肉の策として5Fにも厨房を作ってもらうことになったけれど、それでも1Fでなければならない機器が収まりそうになかった。

厨房の狭い通路幅を確保するために、フリーザーは本来なら側面になる方を正面にして扉を作ってもらい、面積は足りなかったけれど天井高はかなりあったため、特注でドゥコン(ドゥコンディショナー)を作って欲しいとベーカーズさんにお願いをした。

「可能な限り背を高くして、天板が1枚でもたくさん入るようにしてください。それを2台」

ドゥコンは庫内の温度や湿度を設定通りに保つ必要があり、ベーカーズさんからは「こんな大きいやつ作ったことないわ。ちゃんと機能せんかっても知らんで」と言われたことをよく憶えている。

「ベーカーズさんの技術なら大丈夫ですよ。宜しくお願いします」というぼくの無茶振りに応え作っていただいたドゥコンは、「外側を1枚もののステンレスで作る必要があるから、これが作れる大きさの限界やった」とも言われた。

このドゥコンは新宿での8年間活躍してくれて、その後も日比谷へ移ることになった。

つづく


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