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焼き菓子のスゝメ 3.

「成り立つわけがない。絶対に無理だし、店潰れるからやめとけ」と、お師匠さんからアドバイスされたのは、食パンをやめると決めたときだった。
「パン屋というのは、食パンがこれくらい売れないと成り立たないというデータもあるくらいなんやから」とも言われたのは商品構成のことで、もちろん一般的なパン屋さんを目安とされている。

だけれど、パン屋さんというより ”小さなフランス屋” をやっているくらいの気持ちだったぼくにとって、棚に在るべきものは食パンやあんパンでなく焼き菓子の方が自然だった。
きっとそう思っていたのはぼくだけで、お客様はそう思われていなかっただろうけれど。

食パンやあんパンを作らないことで見込めない売上分が懸念なら、その分を焼き菓子で埋めれば良いとぼくは考えた。
焼き菓子を作るなら機器や道具は普段からパンで使用しているものがあるし、材料も小麦粉、砂糖、バター、卵、アーモンドプードル・・・とパン屋さんに常備しているものばかり。新たに必要なものがあるとすれば、お菓子の型くらい。

それに加え、パンは大型のものでもないと基本的にはその日にしか販売することができないけれど、焼き菓子は包装や保存方法を間違わなければ日持ちもする(もちろん焼き菓子であれば何でもというわけではない)。

機器や道具も揃っていて材料もある。
これだけ焼き菓子を作れる条件が揃っていて、どうして作らないの?とさえ思ってしまう。

つづく

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