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焼き菓子のスゝメ 2.

タイトルにある「焼き菓子のススメ」は、もちろん食べる方もお勧めだけれど、実は作る方のつもりで書いている。それもパン屋さんに。

ぼくは最初の1軒目のときから、かなり焼き菓子を作ってきた。
種類も数もパン屋さんにしては多かった方だと思う。
ぼくのキャリアの中にお菓子屋さんはなかったけれど、きっとレストランでデザートを担当していたときの経験がそうさせた。


いまでこそ、あんパンも作っているけれど創業から大丸京都店がオープンするまでの16年間、ぼくは頑なまでにあんパンを作ってこなかった。
最初の店をつくるときにぼくが言っていたのは、「棚にあんパンが並んでいる方が不自然で違和感を覚える店(内外装)にする」だった。

ところが時代は、90年代後半。それも京都の西陣と呼ばれる場所でこんなスタイルが受け入れられるはずもなく、お客様からは毎日「あんパンは?」「あんパンはないの?」とイヤになるほど訊ねられた。

このとき、お師匠さんからは「食パンのないパン屋なんて成り立つわけがない。絶対に無理だし、店潰れるからやめとけ」とアドバイスをされている。
他の方からも「あんぱんも食パンもないパン屋なんて、イチゴショートとシュークリームのないケーキ屋みたいなもんや」と嘲笑されたこともあった。

『小さくて強い店』について考えてみた 10.

お師匠さんたちの言葉は仰る通りで、実際に店は潰れそうになった。だけどこれらの言葉は純粋なパン屋さんを前提としたもので、いま思えばぼくが食べもの屋さんとしてやりたかったのは、レストランやパン屋さん、お菓子屋さんといった明確な業態のものでなく、もっと漠然とした ”フランスの好きな食べものを集めた店” だった気がする。

そんな当時のぼくは、胸中こう思っていた。

「あんパンがなければ、焼き菓子を食べればいいじゃない」

つづく




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