見出し画像

進むも地獄、退くも地獄

まずは、今年の日銀金融政策決定会合の日程を。

出典:2024 年の金融政策決定会合等の日程(日本銀行)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/m_ref/mref230728a.pdf


この会合、それに伴う会見がある日の植田総裁は憂鬱だろうなぁ。

メディアや国民から円安をどうにかしろ、金融緩和をやめろ、と叩きまくられ、もう学校へ行きたくない小学生が、朝になるとお腹が痛くなるのと同じような心境じゃないか、と思う。
日銀だって金利を上げないとダメなことも、金融緩和をやめないとダメなことも当然わかってる。

「やらない」のでなく、「できない」というのが、おそらく正しい。

今の日本が八方塞がりの状況であることは、経済に興味のない人でも薄々は感じているだろう。
そもそもこんな状況になったのは、アベノミクスの失敗した「部分」と、黒田・前日銀総裁の頑な過ぎる金融緩和政策による副作用、弊害だと思っている。

それでもアベノミクスには功罪両面あったと思うし(ぼくは今のところ「罪」の方が大きかったと思っている)、黒田・前総裁に対しては「なぜ?」と感じることが多々あるけれど、そこを今更責めても仕方がない気もする(検証は必要)。
擁護するつもりもないけれど、先日おもしろい本を読んだので、この辺りのことは後日改めて。

何はともあれ、黒田・前総裁のトンデモな置き土産を植田総裁は引き継いだことになる。
もう同情さえするけれど、それにしてもこんな火中の栗を拾うとしか思えない役目をよく引き受けられたな。ちなみに、日銀総裁の年収は3500万円とされている。
全然、割りが合わんわ。

そんな不憫でならない植田総裁は、就任早々から次々と重要な選択を迫られることになった。

金融正常化、マイナス金利政策や大規模金融緩和を一体どうすんねん

マイナス金利を解除しながらも国債の買い入れを続けるという矛盾する判断に、日銀の苦悩を感じる。
そして現在、利上げをするのか、しないのか、という選択を迫られている。賃金が上がらず、GDPの約60%を占める個人消費が下がっているのに利上げできるのかな。

これまでも述べているように、利上げをすれば低金利で延命してきた中小零細企業の多くは倒産するだろうし、住宅ローンを抱えている人たちはかなり大変なことになる。日銀自体も民間銀行への利払いが相当増えるし、金利が上がれば国債価格が下がるので保有している銀行なども大きな損失になる。
こうして内需が縮小すると、経済成長ができず円安にもつながることになる。
また、先述したように利上げで一番困るのは、予算の財源にいくらでも国債を発行できると麻痺している依存症の政府である。

かといって利上げをしなかったら足元を見られ、海外だけでなく国内の投機筋からも円売りを仕掛けられるし、相変わらず円キャリーに使われることになる(これは後述する)。
これだけ大量に発行し価値の薄まった日本円を持ちたいと思う人はいないから、日本の個人投資家だって当然のように円を売る。つまり、海外だけでなく国内からも舐められ円安になる。
そして、生産性や利益率の低いゾンビ企業をまた延命することになり、やはり経済成長は望めなくなる。

まさに「進むも地獄、退くも地獄」という、率直に述べれば、もう詰んだとさえ思える状況が、今の日本の現実といえる。

つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?