見出し画像

使ってみた。 『TRUSCO テーブルリフト』 前編

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

パン屋さん時代に考えたこと、やってみたこと、使ったもの 34.

パン屋さんの厨房には、何かと重いものがたくさんある。
その中でも特にハード系のパンを焼くことが多いお店だと1日の間に何度も持ち上げることになるスリップピールと呼ばれる生地をのせて窯へ入れる道具。

スリップピール

これがとにかく重い。面積があるから体感する重量は実際以上に感じる。
うちの店のものを量ってみたら本体だけで約12kgもあった。
ただでさえ重いスリップピールに焼成前の水分を含んだパン生地を載せるのだから、パンの種類によっては総重量が20kg近くにもなる。

持ち上げるのにもコツがあり「腕で持ち上げようとしたら腰を痛めるから。膝の屈伸を使って持ち上げて」と教えるけれど、3段ある窯の上段に入れるとなると、もう1人では持ち上げれない子も出てくるし、無理をすると腰を痛めることにもなりかねない。

うちの新宿スタッフの中には、華奢な女子なのに「私、4段窯の一番上でも普通に入れることできますよ」なんて平然とした顔で話す強者もいるけれど、いやいや、そんなスキル求めないし、求めたらアカンでしょ。

かなり以前からパン職人志望の多くが女性だと感じていたこともあり、製パン機器メーカーさんに「スリップピールを軽量化できませんか」と相談したこともあるけれど、答えは「難しい」。
理由は、「軽量化の代償として強度が弱くなるから」とのことだった。
なるほど、確かに。

輸入品でも国産でも窯によっては自動あるいは手動のスリップピール昇降機付きのものがあるけれど、これがとにかく高額で恐らくほとんどの個人店では手が出ない。そこでぼくは、製パン機器メーカーさんと修理や挨拶などで顔を合わせる機会がある度にこう話した。

「知っています?いま、パン職人志望の子って、ほとんど女子なんですよ」

「職人さんも問屋さんもメーカーさんも何かと言えば “業界のため” って、みなさん言われますよね。本当にそう思われているなら製パン機器メーカーさんがいま作るべきものは、個人店でも使える価格のスリップピール昇降機ですよ。
それができれば女子も働きやすい環境になりますし、男女関係なく腰を痛める人も少なくなるはずです。人材確保の面を考えても将来に渡り業界のためになりますよ」

「それにめっちゃ需要あるはずですから、これ作れたらかなり売れると思いますよ」

と、4社ほどの方に懸命に語っていたのが、もう10年以上前のことになる。

つづく




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?