見出し画像

コーヒーについての私的考察 9.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

「1杯ずつ丁寧にハンドドリップで」というのは、ぼくらおじさん世代からすれば「そんなん昔から喫茶店でやってたやん」と、特に目新しいことでもないと感じるし、この辺りを象徴とするのは、サードウェーブについてメディアのミスリードに思える。
また「シングルオリジンで」といった聞き慣れない言葉からもわかるように生産者さんや農場にまでこだわり、これまで以上に豆の品質、焙煎まで素材を活かすことにこだわったのがスペシャルティコーヒーなんだとぼくは認識している。
自分の好みはともかく、やはり「スペシャルティコーヒー」とメディアが喧伝する「サードウェーブ」を混同しちゃいけない気がする。

もしかしたらぼくらが学生時代、喫茶店で隣りに座り新聞を読みながらブラックコーヒーを飲んでいたおじさんは、違いのわかる男だったのではないかといまになって思う。
ぼくが知らなかっただけで当時から豆の品質や焙煎にこだわった喫茶店のご主人や焙煎士さんはおられただろうし、ひょっとしたらいまのスペシャルティコーヒーに近いこだわりを持った方もおられたのではないかとも思う。

これはコーヒー業界に限らないけれど、昔との決定的な違いをぼくは情報や流通の差だと思っていて、昔の人がこだわりたくてもこだわり切れなかった部分を可能にしたのが、それらの発達、恩恵であると思っている。
昔は不可能だったものやことが可能になったことで、当然 「良い」とされるものの基準も時代とともに変化するはずで、そういった時代背景によって生まれてきたのがいまのスペシャルティコーヒーであり、サードウェーブという流行なのではと捉えている。

うちが渋谷の店、日比谷の店でそれぞれコーヒーをお世話になっている内田さん(創作珈琲工房 くれあーる)、山本さん(Unir)は、コーヒー業界ではとても名の知れた方で、お二方ともいろんな審査会で審査員を務められるほどの方だったりする。
ちなみにぼくは知り合ってからしばらくの間、内田さんのことを自転車マニアのコーヒー屋さんで気さくなおじさんくらいに思っていて、これほど業界の偉い方とは存じ上げていなかった(内田さん、ごめんなさい)。
そんな内田さんは、ぼくのFBに「因みにコーヒーの酸ですが、審査会などに行くとリンゴ酸、酒石酸、クエン酸などは味の良い方に分類され、酢酸などは悪い方にされます。これに糖を合わせこんな味になる…、などとやってます」とコメントをくださった。
また山本さんは試飲の際、スペシャルティコーヒーの浅煎り、香りについての雑談の中で「そこまでしないと、もう差が付けにくくなっているんです」といったことも仰っていた。

コーヒーって深いなぁと思うと同時に、漠然とぼくはコーヒー業界も行くところまで行った気がすると感じた。

つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?