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永遠にさよなら

異変は突如起こった。
身体が震える、なんだか息苦しい。
夜の23時のことである。

やばいやばいやばいやばい。
深呼吸して落ち着こうとするも焦るばかりで部屋の中をうろうろする。
座っていられないのだ。

これはあかん!
実家に電話し、病院行ってくる!と宣言すると今から行くから!とお母さまが家まで来てくれる。タクシーで病院に着くと受付で、2時間待ちですがよろしいですか?と聞かれる。そんな感じで逆に大丈夫か、と思ってしまう。
夜間救急で来る人を2時間待たす前提とはなかなかである。
とはいえ、しんどいのは事実なので待つことにする。

病院の待合とは不思議なものだ。偉そうなおっちゃん、いかつそうなタトゥー入りまくりのにぃちゃん、ハイヒールを履いたギャルでさえ大人しく待っている。ごはんが運ばれてくるのを待たされたときやバスが来るのが遅かったときには文句を言うのに病院では何も言わない人が多い。
非常に静かな空間である。

母の隣でぼーっと待つ。
長らくぼーっとしていなかった気がする。スマホも見ず、母との会話もなくただ待つだけ。気づいたら症状はほぼなくなっていた。
なんやねん自分。。
お母さま、こんな遅くにほんまごめん。もう帰っても大丈夫よと言いかけたが、今度は右半身が熱くなり湿疹が発生した。
もう!なんなん!!
となったところでやっと呼ばれたのである。

診察室の中で、今日自分が何をしていたかを思い出す。普段と違うことはしていないか。普段と違うものを食べていないか。
「あ、玉露を飲みました。」
今日は友人からいただいた高級茶”玉露”をウキウキ開けて家でゆっくり楽しんでいたのだ。
「そういえば2.3日前、アイスに抹茶クリームをかけて煎茶を飲んでいたときも同じような症状があった気がします。何ヶ月か前、緑茶ペットボトル3本飲んだ時も。あぁ、アレルギーですね」
結局自分で結論を出してしまった。
忙しいのにごめんよ、研修医くん。
母まで呼んでまったく人騒がせな女である。

帰り道タクシーの中で調べてみた。
玉露、抹茶、煎茶、緑茶
色々呼び方はあれど結局は日本茶である。
日本茶アレルギーなんか聞いたことがない。
だいたい緑茶は免疫力があがるし、むしろ健康になる飲み物のはずだ。
調べたところで日本茶アレルギーはヒットしなかった。

何件かサイトを見ていたところ、緑茶にはカフェインが含まれていますと書いてあるのを見つけた。
しかしながらカフェインの代表はやはりコーヒーだろう。
普段私はコーヒーは飲まない。飲む習慣がない。ただ、飲めないこともないし、飲んでもなんの症状もない。
コーヒーなんもないけどほんとにカフェインか?と思い、さらに調べてみた。

100mlあたりのカフェイン含有量
1位:玉露160mg
2位:コーヒー60mg
3位:インスタントコーヒー57mg

コーヒー1位ちゃうんかい!1位玉露やん!しかも断トツやん!マジか!!
どうやらコーヒーレベルのカフェインはいけても玉露レベルのカフェインはダメなことが決定したらしい。

日本が誇る高級茶を我慢するか、症状を我慢するかの二択である。
悩んで相談したが、職場の後輩には「いや、1択ですやん」と普通に怒られてしまった。
だって日本茶好きなんだよ!!お茶ラブなんだよ!日本人なのに悲しすぎる・・・・。

世の中の飲み物にはカフェインが含まれているものが多い。
コーヒー、紅茶はもちろん緑茶、烏龍茶、リポD、レッドブル、オロナミンCまですべてカフェインが含まれているそうだ。今までの経験上おそらく1回摂取量がそんなに多くなければ大丈夫な気がするが自覚してしまったが故、気軽に口にはしにくくなった。もちろん飲んだ玉露はその日のうちに母に回収された。

30代後半にして楽しみを1つ奪われてしまったのだ
ちょっとだったら大丈夫と誰か言ってくれ!

そんなとき、救いの情報が入ってきた。
ツバキ科の茶葉から抽出するお茶はカフェインが含まれている。
だが穀物などにはカフェインは含まれていない。
要するにそば茶、とうもろこし茶などは飲めるということだ。
日本茶ほど飲む習慣はなかったが、この際全部飲んでやろうととりあえずスーパーにあるお茶を買ってきた。

そば茶:そばの香りがしてとても満たされる感じがする。
とうもろこし茶:さっぱりしていて冷やしたらよりさわやかになりそう。
ついでに
ルイボスティー(マメ科):清涼感のある健康的な香りのお茶。

どれもおいしい。
職場に持っていくお茶は烏龍茶からルイボスティーに変更された。
休みの日には家でゆっくりそば茶、お風呂あがりにはとうもろこし茶。
あれ?ちょっとおしゃれになってない?
いろんなお茶の味知ってる女かっこよくない?

日本茶が飲めなくなっても世の中には美味しいお茶はたくさんあるのだ。
今度はハーブティーに手を出してみよう。
視野が広がって結果オーライだ。

悲しい別れのあとにはおしゃれな世界が広がっていた。






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