夜中の雨音クインテット
ここ数日、季節外れの暑い日が続いて、体調が思わしくなかった。
年齢のせいかいわゆる「気象病」の傾向も顕著に出て来て、気圧の乱高下が体調に大きく影響するようになっている。
数年前に大きな病気もしたことだし、それによって機械仕掛けになったり、運動ができなくなったりと、肉体的な側面では大きく変化してしまったのだから、病気以前と比べようにもそもそも比較にならない。
そうでなくても体は誰しも着実に老いるものなのだし、その一方で同じ速度で老成していくとは限らない精神とのギャップが大きくなっていくのは仕方がない。
僕は老いることについては比較的寛容というか、さして抵抗はない。
生物としての宿命を受け入れているなんて大げさなことでもなくて、抗うよりももっと面白いことが他にあるだろうよと考えているだけだ。
いろいろなことに対して労力の無駄にならないかどうかを考えるようになったのも老いつつある一つの証明なのかもしれないけれど、当人としてはそれほどの感触はない。何か面白いことを探している時の感覚はティーンエージャーだった頃とあまりに変わりがなくて、逆に驚くほどだ。
季節外れの暑さも一段落したようで、先ほどから雨が降り始めた。
夜が更けると静かめのピアノジャズを選んで流しながら、1時間ほどの時間を書き物をしたり、本を読んで過ごすのが日課になっている。
今夜はそれに加えて外の雨音が心地よく響いている。
あまり良い習慣ではないが、すっかり夜中の今、丁寧に淹れた珈琲を飲んでいる。
夜更け、ジャズ、雨音と珈琲。夜としては申し分のない取り合わせだけれど、これに煙草の煙が加わってクインテットになれば完璧だ。
このクインテットを好むのは、今よりずっと若かった頃からだ。
人は想像するほど簡単には老いることはない。
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