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勝手に新競技「棒幅跳び」

若い頃、仲間内でアホな想像をネタに遊ぶのが流行った時があった。
実現の可能性があろうがなかろうが、そんなことはどうでも良くて、発想が面白ければそれでOKという、カネはないけど時間だけは売るほどあった頃にはうってつけの遊びだった。

「全公道サーキット化」とか「逆回り野球」とか、アホ丸出しのアイデアをみんなで寄ってたかって真剣に考える。
逆回り野球なら、
1)打ったバッターにどちらへ進むかの選択権がある
2)打球の方向次第で1塁へ向かうか、3塁へ向かうかを決めて良い
3)野手はバッターランナーの動向を見て、送球方向を判断しなければならない
といった具合。
前のバッターが通常回りで3塁打を打っても、次のバッターが内野ゴロで3塁に向かって走ったら、せっかくの3塁打がただのシングルヒットと同じになってしまうわけだ。
通常のダブルプレーは「5−4−3」と流れるのだが、逆回り野球だと「3−4−5」のダブルプレーもあり売る。
頑張って3塁打にしたバッターは怒り心頭で、ベンチで大揉めになるかもしれない。
と、こんな具合にアホな妄想を膨らませて楽しんでいたわけだ。

「棒幅跳びって面白いんじゃない?」と誰かが言い出した時があった。
走幅跳は道具を使わずに跳んだ距離を競う。棒高跳びはポールの反動を生かして跳んだ高さを競う。棒幅跳びはポールを使って飛んだ距離を競うというわけだ。
助走路は50メートル。使用するポールは50メートル以下なら長さも太さも自由。助走中と、ポールを突き立てるポイントを選手が通過するより先にポールが地面に着いたらファウル。
ポールの反動を生かしても、突き立てたポールをよじ登って距離を稼いでもOKというルールだ。
ポールが長いと助走距離が短くなり、ポール自体の重さも増す。
ポールを持つ力が強くなければ長いポールは使えない。短すぎると距離が出ない。これはなかなか面白いんじゃないかと。

使うのはもちろん100メートルのコースの上だ。
そこに学校のプールより長い30メートルものポールを持った選手が入ってくる。
ポールを立てると表彰式で国旗が掲げられるポールより高い。
その異様な長さにスタジアムの観衆から低いどよめきが湧く。
「あんな長さのポール、本当に扱えるのか?」
「助走の途中で先端が着いちゃうんじゃないか」
「どうやって使うんだ?」
客席では予想するヒソヒソ声が漏れる。

助走路に立った選手はやおらポールを担ぐと、現場の職人のようにスタスタと助走路を歩き始める。
先端がポールの差し込み口に近づいたところで、ゆっくりと慎重にポールを傾け、ポールを差し込む。陸上競技というよりも、大黒柱を立てる大工のようで、いったい何が始まるのかとスタジアム全体がざわめき始める。
選手は器用にポールを立てると、軽業師か出初式の火消しのようにスルスルと登り始める。

ただ突き立てられているだけのポールである。選手が手を伸ばすだけでゆらゆらと揺れる。
以下省略(笑)。

とまあ、寄ってたかってこんな想像をして遊んでいたのが、どこかで僕の基礎になっているような気もする。
何の役にも立たないけど(笑)。

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