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今日のアクシデント

接触事故に遭ってしまった。
いや、事故扱いしていないのだから、交通事故は起きてないことになるのか。
自転車専用帯を走行中、脇をすり抜けようとしたタクシーがハンドルに当たり、5メートルほど並走しつつ引きずられた。
幸いこちらもタクシーも徐行程度の速度だったおかげで、どうにかバランスを保ったまま、タクシーに寄りかかるようにして停まれたので、外傷はなし。右手の親指の付け根を軽く捻挫しただけで済んだ。
自転車ごと車に引っ張られてシャーシが揺れ始めたので、結構な力で抑え込んだときに捻ったらしい。

相手は老人ドライバー。耳には補聴器が入っている。
それでもこちらの言うことを聞き取れずに聞き返すことが多くて、事故に巻き込まれたこっちが気を使う始末。

昔はタクシーの運転手といえば、運転は荒くても一般のドライバーより運転は上手いものと相場が決まっていた。
それが今や道はカーナビ任せで「行き方教えてもらっていいですか」なんて平気で言うし、今日の調子だと技術だって怪しいものだ。
一応は二種を持っているのだろうけど、アテにはならない。

車を止めさせたあと、屋根に乗っかっている行灯とナンバープレート、運転手の免許証の表裏、全部写真に撮って保存した。
免許証に書かれていた住所をもとにストリートビューで建物をチェックしたのだが、予想通り決してきれいでも新しくもないアパートだった。
いろんな事情でタクシーの運転手を生業にしているのだろうけれど、高齢化社会の歪みがこんな形で自分に影響するのはかなわん。
昔からどこかしらマトモとは思えないことがある国ではあったけれど、今日はそれだけではなく、ここまで貧しくなったのかと思ってしまった。

警察を呼んで現場検証するのを待ってる時間はなく、怪我らしい怪我もなかったので今日は事故扱いにはしなかったけれど、今日の接触事故はただ幸運が重なっただけ。
一つ間違えばもっと大きな怪我をしたかもしれないし、打ち所が悪ければそれで死んだかもしれないし、何より胸に入っている機械が段差にでも当たったらかなりヤバかったのだ。

自分の隣を走っている車を運転するやつがマトモとは限らない。
僕のように疑り深い人間にとっては、道路は怪しいやつが列を作って走っているようなもの。
そんなやつが前や後ろや両隣にいるかと思うと、とてもじゃないが運転などする気にならないのだ。

なんの因果か幸運か、接触したのは消防署の真ん前。
接触に気付いた署員が素早く駆けつけてきた。
彼らは捜査はしないので、聞かれるのは僕の身体の状態のことばかり。
場所柄、救急車は歩道の向こうに控えている。
「救急車要りますか? 出しますか?」と救命の署員から代わる代わる協力プッシュされたのには参った。
いや、ありがたかったけど、コロナ患者の搬送に忙しい昨今、指の捻挫程度で救急車を出させてはあまりに申し訳ない。

せめて運転手があと10歳若ければ、財布の中身を全部吐き出させて、泣き出すほど怒鳴り潰してやったのになあ。
車の左には切腹したように長く深い傷がはっきりとついていたが、事故扱いせずにどう修理するかなど知らん。勝手にやれ。
高齢化社会や貧しい社会構造がいかにダメなものか、身をもって理解した気がする。

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