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アジャイル初心者がScrum.orgのスクラムマスター研修を受講してみた

Scrum Alliance、Scrum Inc.、ICAgileなど、アジャイルにはいくつかの資格が存在します。その中のひとつ、Scrum.orgのスクラムマスター研修を、今回アジャイル初心者の私が受講してまいりました。

Scrum.orgとはなんなのかというと、スクラムのバイブル「スクラムガイド」の著者ふたりのうちのひとり、ケン・シュウェーバーさんが立ち上げた団体です。
世界には50万人以上の資格認定者がいるのですが、日本ではパートナー企業がいないため比較的知名度が低く、これまで日本語での研修もほとんど開催されていなかったようです。
そして、このたび、そのScrum.orgのスクラムマスター研修の基本である「PROFESSIONAL SCRUM MASTER™ I」をオランダのProwareness社に実施してもらい、それを日本語同時通訳するという形で、ITプレナーズが販売することになりました。

日本語で受講できるめったにない機会ということで、今回は既にアジャイルコーチをされている方も4人参加する―――という話が社内のミーティングであり、「へ~そうなのか~」とのん気に聞いていたところ、急に「ebikawaさん、この研修参加しない?」と私に(ありがたいことに)研修参加の話が持ちかけられたわけです。うわぁ。青天の霹靂。

え?アジャイルコーチが4人も参加するのに、そこに私も混ざるの?アジャイル経験皆無なのに、コーチとグループワークとか一緒にやるの?あまりにレベルが違いすぎないか…?
という心配が真っ先に頭をよぎりましたが、
いや、でも、アジャイルについては勉強したいと思っていたわけだし、見学ではなく受講者としてちゃんと参加できるのは貴重な機会、なのでは…?
とも思い直し、数秒間、頭の中でグルグル考えた結果、「あ、はい、参加します~…」とよわよわしく参加を希望しました。

参加を決めたはいいものの、当日まで「無知すぎて周囲から呆れられたらどうしよう」「グループワークで何も発言できなくてジャマになったらどうしよう」などと内心ビビりちらしておりました。
しかし、いざ研修が始まってみると他の受講生のみなさんは大変親切で、グループワークでは分からない箇所を教えてくださったり、私の拙い回答もほめてくださったり、本当に、ありがとうございました……アジャイルコーチ、人間ができている。これがスクラムの5つの価値基準のひとつ「尊敬」の持つチカラなんでしょうか……。

さて、Prowareness社の研修は、講師がペアで実施するのが特徴のようで、今回はGuusとBjornというオランダ人講師の方によるふたり体制でした。ひとりが話している間、もうひとりは次の出番の準備をしたり、受講者のためにホワイトボードツールの操作をしたり、阿吽の呼吸で進めていました。
ちなみに今回は14時から18時の4時間×4日間という日本からすると参加しやすい実施時間でしたが、時差のあるオランダでは朝の6時からスタートというなかなかの強行スケジュール。にもかかわらず、講師ふたりとも4日間疲れも眠気も見せず楽しい研修を実施してくださったので、本当にプロフェッショナルでした!

(なお、今回は同時通訳での実施ということで、通訳の方が2名体制で対応されていましたが、Zoomの通訳切り替え機能も使いやすく、通訳もアジャイルの用語にも精通されている方で、講義が英語であっても特に違和感なく受講できましたよ!)

GuusとBjornの研修スタイルは、パワーポイントを見せてスライドを読み上げる……ようなよくあるものではなく、説明しながら模造紙にひたすら図や文字を手描きしていく、という形式でした。ふたりとも、油性マーカーとクレヨンをうまく使って、巧みにライブドローイングしていきます。(あまりに見やすいので受講者からどんなペンを使っているのかと質問がありました。マーカーはNeuland社製、クレヨンはStockmar社製だそうです)
このスタイルがおそらくポイントで、スライドを見せる方式だと話を聞きながら先に内容を読めてしまうのですが、手書きなので次に何が出てくるかわからないこともあり、退屈せずに見ていられます。また、受講生とインタラクティブにやり取りをしながらキーワードを書き込んでいくので、頭に入りやすい、というのもあると思います。
(↓この動画の36分あたりで実際の様子がうかがえるかも)


今回の研修はオンラインでの実施でしたが、演習に関しては、ホワイトボードアプリであるMuralを使い、チームごとに書き込むためのスペースや演習の前提条件などもそこにすべてばっちり準備されていました。(教材として、スクラムガイドとScrum.orgのワークブックは配られているものの、研修中はほとんど見る機会はありませんでした)
演習は、Mural上に書き込んだりふせんを貼ったりして、集合型の研修と同じように行われました。むしろ、Mural上に研修中のすべての情報が集約されていたので、紙に書くよりも後で振り返るのにとても便利でした。(研修後もずっと残しておいてくれてます)
講師ふたりはMuralの様々な機能を使いこなしていて、まだ実施しない演習の情報は非表示にしておいたり、受講者がMural上で迷わないようにフォーカス機能を使ったり、受講者が集中できる環境を作るさりげない配慮がいたるところに感じられました。

演習の内容は、特に2日目に実施したものはスクラムの用語があらかじめ頭に入っていないとできないものだったので、初心者の私には難しい部分もありました。他の受講者に経験者が多かったので(しかもみなさん優しかったので)、なんとかついていけましたが…。ただ、スクラムの用語を振り返りながらスクラムのイテレーションを体験できる演習だったので、経験者にとっては一石二鳥な演習だったのでは、と思います。
私は2日目に「これはついていけなくなるかもしれん、ヤバい」とかなり焦って、その日の研修終了後にスクラムガイドを慌てて読んだりしましたが、それ以降は幸いにして、ついていけなくなるようなことはありませんでした。
最終日には受講者からの質問に合わせて講師が演習を選択している様子もあったので、受講者のレベルを見ながら、柔軟に対応しているように思いました。

そうしてあっという間に終わった4日間でしたが、研修を通して一番印象的だったのは、講師ふたりが研修内でスクラムを実践しようとしているところです。
チーム決めも、経験をもとに講師が分けるのではなく、受講者が自己管理的にチームを結成するようになっていました。受講目標に対する進捗も可視化してありますし、講師は受講者からフィードバックを得たら、その場でどんどん改善。
なにより、研修を良い雰囲気で進めていこう、より良いチームにしよう、という気持ちを感じられたのがとても良かったです。

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↑たまに頑張って日本語で書いてくれたりする

余談で、研修中のちょっと良い話ですが、今回の受講者の一人に、研修終了翌日に入籍される予定の方がいました。おめでたい! 最終日にそれを知ったGuusが、休憩中に突然「てんとう虫のサンバ」を流すという洒落た演出をしてくれました(Japanese wedding song rankingで検索し、1位で出てきたそうです)。そしてGuusは受講者の反応から「てんとう虫のサンバ」はちょっと古い曲だったかもと察したらしく、次の休憩ではSuperflyの「愛をこめて花束を」を流してました(改善されている…)。
こういうところからも、研修の雰囲気と講師の人柄の良さが伝わるんじゃないかと思います!

いやー、楽しいし、わかりやすい研修だった、良かったなあ――――といって「愛をこめて花束を」を流してこのブログも良い感じにめでたしめでたし、にしたいところなのですが、スクラムマスター認定研修なのでこれで終わりではありません。

そうです、最後に試験があるのです。

今回は研修直後に全員そろって試験を実施するのではなく、受講後に受験用のパスコードがメールで送られ、2週間以内に各自が好きなタイミングで受験していいという流れでした。研修終了時に、講師から受験についてのアドバイスもしっかりありました。
私はそのアドバイスに従って、Open Assessment に繰り返し挑戦し、研修内容とスクラムガイドをきっちり復習して、研修1週間後に受験してみましたが、

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80点で落ちました。(合格点:85点)

うわーん!!! いや、でも、60分で80問もあるから時間も厳しいし、Open Assessmentになかった問題がいっぱい出たし、スクラムガイドに載ってないこともいっぱい出たし、実践経験がないとわからない問題も出たし、そもそも85点ってかなりキビシイ気もするし、
今回イチから勉強始めたわりに80点取れたのは結構すごいのでは…? えらいのでは…?

と自分を慰めつつ、次回に向けて頑張りたいと思います。

そう、次のチャンスがあるのです。

慈悲深いことに、PROFESSIONAL SCRUM MASTER™ I 研修の受講者は、2回試験に挑戦するチャンスが与えられているのです!
そういうわけで、せっかく研修受講したからには、なんとか再試験で合格したいと思います(試験結果のメールには、一応「どの分野ができてなかったか」「これを読め」みたいなアドバイスも載っておりました)。
合格したらPROFESSIONAL SCRUM MASTER™ I 保持者だっていうバッジの画像を貼っていいらしいので、合格した暁にはこのブログとか自分のZoomの背景にデカデカと貼りたいと思います…!


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