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趣味が高じて小商いを始めたころの話

会社員をしながら、自分の趣味を「複業」にしていった方法を振り返るシリーズ。

まずは、自分の趣味「編みもの」が商いになったきっかけから。

はじまりは、大学時代、自分で編んだかぎ針編みのショールを、初めて人前で羽織って使ってみたときのこと。友人がとても褒めてくれて、編み物ができること自体をとても驚かれた。あ、これが特技になりうるんだ、と気付いた。

そうやって編みものに没頭しつつあった大学時代、ひょんなことに、手編みのセーターとカーディガンをつくる会社でインターンをすることになった。

人気のニットデザイナーさんがデザインしたカーディガンやセーターを、オリジナルのこだわりの糸で、訓練されたプロの編み手さんが大切に編む。出来上がった作品は、他のニットではなく、これが欲しいんだ、というお客様のところに、数万円から数十万円でもらわれていく。この日本で、手編みを生業にできるのか、と衝撃を受けたものだった。誇りをもって働く編み手さんたちや、遠い地からわざわざお店にきてくださるようなお客様とも店頭で関わらせていただいたり。大学生にもかかわらず、とても貴重な経験をさせていただいた。

人が時間をかけて手で編んだものは、実際に何十万円の価値があるが、その魅力をきちんと伝える働きをして、納得してお求めいただけるようなクオリティでないと、生業にしていくことは難しい。それも目の当たりにした。

果たして、私が編んだものを、いくらで買ってくださる方がいるというのか。編みもの(編んだものを売ること)を仕事にしていくのは、とんでもなく大変なことだと思えた。

それから、大学卒業とともにインターンも卒業し、東京でIT企業に入社した。内定前のプレゼンでも、入社後も、いつか自分で、社会課題を解決するようなビジネスをできるようになりたいと話し、まさにビジネスで社会課題を解決する日々を過ごすことになる。この辺りの話は置いておくとして、わたしが複業で編みものを仕事にしていく話に戻ろう。

社会人2年目の夏だったと思う。大学時代の留学先であり、婚約者の故郷であるフィンランドに帰省。留学時代よりもいっそう興味が深くなっている編みものや手工芸にアンテナを張った旅行だった。

手芸クラブのような活動を一緒にしていた仲間とも再会。編み会をしながら、彼女の持っていた糸車を体験させてもらった。

編みものをする者としては、どうやら、毛糸は自分で紡いで編む人もいるらしい、というのは知っていたし、何ならスピンドル(つむぎごま)という道具で一度はチャレンジしたこともあった。でも、手でコマを回して、ふわふわの羊毛から、少しずつ、少しずつ、、実際に何かを編めるくらいの毛糸を紡ぐことは、途方もない作業に思われたし、何より全く上手に紡げなかった!

一方で、糸車は、足でペダルを踏んでヨリをかけていく。手でコマを回していたのとは、もちろんスピードが大違い。羊毛を繰り出す手加減とか、そもそもペダルをコントロールしながら車を回し続けることとか、全てが初心者には難しいのだけれど、練習したら、何か編めるくらいの毛糸は比較的早く紡げるんだろうなと思うと、もっとやってみたくなった。

帰国するとすぐ、オランダから糸車を迎えた。たしか、フィンランド語とか英語とかを駆使してめちゃくちゃ頑張ってググって探したのだったと思う。なにせ、日本語のリソースはとても限られていて、そのうえ高価な物ばかり、新卒2年目のわたしに買えるようなモデルや中古品が出回っている状況でもなかったから。

それから、糸紡ぎの練習が始まり、色々な糸を紡いでみたくなって、材料を手に入れるにも、それほど選択肢がないことも知った。いろんな種類の羊毛を扱っている「アナンダ」さんというお店が吉祥寺にあって、東京はこんなお店もあるなんて、すごいな、と思いながら通ったりしていた。そのうち、羊毛を染められることを学んで、小さなアパートのキッチンで染めを始めた。

自分で羊毛を染めると、そこから生まれる色も、それを紡いで生まれる毛糸も、世界に一つだけのオリジナルのものになる。何色かを使ってグラデーションになるように染め上げたような羊毛は、あまりどこでも手に入らなかった。でも、糸紡ぎを始めたら、いろんな糸を紡いでみたいとみんな思うだろうし、染めるところまで自分でやらなくていいけど、こういう羊毛から紡いでみたい、という人もいるのではないか、と思った。しかも、糸紡ぎについての情報はあまり日本語のインターネットにも出回っていなくて、自分が一番困ったので、これは、ちょっと発信してみようかな、とも思ったのだった。

そんなふうにして、手紡ぎ糸と、手染め羊毛のお店、itoshigotoが始まった。

はじめのころのitoshigotoの中心は、糸紡ぎだった。

簡単な道具で作ったスピンドルを使ったワークショップで紡ぎ方を教える。
Youtubeに紡ぎ方のハウツー動画を載せる。
材料としての羊毛を染めたものを売る。
自分で染めて紡いだ糸を売る。
紡いだ糸を作ったアクセサリーを売る。
紡いだ糸をアクセントに使って編んだものを売る。などなど。

なんと、あんなに「編んだものを売るのは難しい」と思っていたのに、手紡ぎ糸の活用方法として見て欲しいという気持ちでどんどんサンプルを編み、それを欲しいと言ってくださる方が現れ、目玉商品の一つになっていったのだった。

こんなふうにして、自分が糸紡ぎを始めた時に欲しかったノウハウや材料、紡いだ糸の活用まで、糸紡ぎを中心に、どんどんやってみたいことが広がっていった。元々は自分が使うために染めていたり、紡いだ糸を何かに使おうと思って作品を作ったりしてわけなので、最悪、売れなくても自分で使うからいいんだ、という気持ちで気軽に始めてしまったのだけど。

これは、itoshigotoが、手染め羊毛と手紡ぎ毛糸のお店だったころのお話。

次回は、このころ、作ったものをどこで売っていたのか、どういうことを考えて商品ラインナップができあがっていったのか、について書いてみようと思います。

おまけ:今でもitoshigotoのYoutubeチャンネル一番人気の、糸紡ぎレクチャー動画シリーズ。

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