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「どこに行っても同じ」じゃない。「好き」を求めた転職活動の顛末

「好きなことを仕事にしたほうがいいのか、得意なことを仕事にしたほうがいいのか」。

本質的な問題は「どちらが向いているか」というより「仕事で何を得たいのか」なのだと思います。

「接客」を志した学生時代

「将来は接客業をやりたい」。書店アルバイトでそう思いました。
皆、レジに来る時は真顔です。当たり前ですが。
だけど接客の工夫で、お客様はニコニコ顔になって帰っていきます。
それがとても嬉しくて、楽しかった。

最初の就職先は、市役所でした。
接客業をやりたいと思っていても、その頃は学費を出してくれた親が「公務員になりなさい」と言っていたので、従った次第です。

選択方法の是非は置いといて、公務員にも色々あります。
わたしは労働基準監督官と一般市役所の2つに合格しましたが、市民対応をやりたい! という思いで、後者を選びました。

接客だけやっていればいいお仕事ってのは少ない

接客が好き。そんな思いで入庁しましたが、そもそも公務員は配属先を選べません。初めは政策系の部署に2年間勤め、その後、念願の市民窓口に異動しました。

窓口業務や、受領した書類に係る事務は本当に楽しかったです。最高でした。一生やっていたかった。
アルバイト時代「自分の接客の工夫で、お客様がニコニコ顔になって帰っていくのが嬉しい」という理由で就職したものですから、窓口業務は本当に気合いを入れました。

役所の手続きって、何やってるのか正直意味不明じゃないですか。書類も統一感ないし。自分もそうでした。
だから、不安な表情でいらしたお客様が、帰る時には安心した顔になっているのを見ると、本当に幸せだったんです。

ただ、接客だけやっていればいい正社員のお仕事って、少ないです。
わたしの場合、事務は得意だったのでいいんですが、並行して政策系のプロジェクトの一期目に放り込まれたり、別のプロジェクトを一人で担わされたりと、イレギュラーが多く、体調を崩しました。恨み節で申し訳ない。

さらに窓口業務は基本的に激務なので、病休している職員が多く、部署の人員が常に「MAXの3分の2」くらいしかいなかったのも、キツさに拍車をかけていました。

市役所には7年いましたが、睡眠障害やパニック障害を患いました。このままじゃダメだ! と思い詰めた矢先に躁鬱の躁がハジけてしまい、勢いよく転職。自分で部署を選べる会社に就こう! と決めました。

「接客」を求めて職種選びをミスる

誰かの役に立つかもしれないので、恥を捨てて書きます。

「もっとお客様一人一人の役に立てる仕事がしたい」「お客様対応に時間と労力を割きたい」という思いから、次に選んだ仕事は個人営業(一般のお客様への営業)でした。

しかし、当然ながら「個人営業」と「接客」は、実質的には異なる職種。

営業は営業です。売らなければならない。個人ノルマのある会社に就職したわけではないですが、4か月程度で挫折。
この頃、緊急事態宣言で思うように経験が積めなかったこともあり、パニック障害が悪化していました。

会社はいい会社だったので、私の体調を考慮してくれ、社内で営業事務に転職。営業はしませんが、接客業務もあります。接客はやっぱり楽しかった。

営業事務で気付いた、意外な「好き」

「接客が楽しい」という気持ちは変わらなかったものの、ここで新しい気付きがありました。

営業事務って、営業さんのサポートをするんですけど、これが意外と大変。わたしがいた会社は、法的な決まりが長々と書かれた文書を読まなければならないことが多く、多くの営業さんは「これを読んできっちり守ることが苦手」という方が多かったです。

そんな業界なので、「接客」を求めていた頃のわたしも、ここの個人営業を選んだのです。そのくらい複雑な制度の業界でした。

そのため、営業事務が複雑なあれそれを、あの手この手で(書いたり話したり定期的にリマインドしたりして)、営業さんに分かりやすく伝えます。
そして、決まりを守りやすい仕組みと環境を整えます。「これをこの通りやっていれば法律違反になりませんよ」という。

事務は得意でした。(得意な理由は割愛)
なので、これがなかなか上手くいきました。
すると、相手はお客様ではないけれど、人の役に立てるわけです。そのたび「仕事って楽しい!」「もっと頑張りたい」と思えました。

もしかして、わたしは人の役に立ちたかったんじゃないか?
接客が好きというより「人の役に立つこと」を求めていたんじゃないか?

初めてそう気付きました。

「人の役に立てる事務探し」を始める

とはいえ、派手めに体調を崩していたので、なんやかんやあってその会社は退職。事務で役に立てるかもしれないという手がかりを得て、「人の役に立てる事務探し」の開始です。

なお、退職理由は主に二つで、結婚し職場と自宅がかなり遠くなったこと、一番近い配属先がエリア内で最も激務だったこと、です。
己の努力ではカバーできないと感じたため、悔いはなかったです。

転職先が見つかるまで、アルバイトとして「法人農家の事務」をやってみました。最初は「農家の事務ってどんな感じだろう~」と気楽に応募してみたのですが、行ってみたら事務所は散らかり放題、書類山積み、泥だらけ。事務は体系化されていないしマニュアルもほぼない。

社員さんが一人しかいなくて、手が回っていなかったみたいです。わたしは正社員志望だったので、そこに長くいられなかったのは申し訳ないですが、そこで「事務職が人気とはいえ、事務自体が上手くいっていない会社があるはず」「そこで役に立てるかも」と熱意を燃やしました。

ベンチャー企業で最適解を見つけた

熱意を燃やした結果、自分にとっての最適解は「営業さんが集まって立ち上げた小さな会社の事務をなんとかする仕事」でした。

前職で培った「営業さんに必要な情報を整頓して伝える」「仕組みや環境を整える」という経験をフルに活かせます。
ただそのぶん、歴史の浅い会社なのです。

学生時代「公務員になれ」と言っていた親の本質的な願いは「少しでも安定している仕事を選べ」ということでした。
わたしもしばらくそれに縛られ、公務員を辞めるのには時間がかかりましたし、初めて転職する際も大企業を選びました。

「設立されたばかりの零細企業への就職」は、20代前半のわたしにはあり得なかった選択です。

(理由はもちろん親が反対するからですが、そもそも「反対されるだろうな」という気持ちで、求人への応募自体をしていませんでした)

仕事で身体を壊したな……という自覚はあるし、己の浅学から色々挫折したり失敗したりしました。

けれど10年かけて「なぜその仕事を好きだと思うのか」「その仕事で何を得たいのか」を追究した結果、新卒では絶対にしなかった選択をし、自分が本当にやりたかったことを見つけることができました。

あまつさえ余談ですが、事務がめちゃくちゃな会社というのはまず労務がめちゃくちゃなので、労基を辞退してからも続けていた労務関係の勉強が役に立ちました。
専門性のある分野や業界に対する「好き」は、趣味の範囲内だとしてもある程度追っておくことを、わたしはおすすめします。大雑把にいえば、これが「得意」につながります。

「どこに行っても同じ」じゃない

わたしは転職の話をする時、必ずといっていいほどこの話をするんですが……。最終的に伝えたいことは、いつもこれです。

転職する人が必ずといっていいほど聞く心無い言葉、あるいは自分に投げかけてしまう言葉の一つに「どうせどこに行っても同じ」というのがあります。

「どこに行ってもどうせうまくいかない」という意味のアレです。わたしも親から言われました。

ですが、そんなことないです。転職回数やブランクも、志望動機でカバーできます。その志望動機のタネになるのが「仕事や転職での失敗」です。
そこに「自分が本当にやりたいこと」が隠れていると思います。
新しい場所でできることを、見つけられます。

急に熱入って話がそれましたが、「好きなことを仕事にしたほうがいいのか、得意なことを仕事にしたほうがいいのか」これで迷った時には、
仕事をいったん「好き」と「得意」に分けず、「なぜ好き?」「どんな時に幸せ?」を考えてみてほしいです。

その「好き」は、思っているよりもっとたくさんの仕事で活かせるかもしれない。自分がうまく働ける場所は、思うよりたくさんあります。

皆、「どこに行っても同じ」じゃないです。絶対に。

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