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創業者が一番の営業ってほんと? - 創業フェーズのセールスチーム立ち上げ

こんにちは、アルプの伊藤でございます! #SaaSLovers#秋のブログ祭り 企画でまたSaaS愛好家達の素晴らしい記事が毎日投稿されてます。僭越ながら私も末席として、15日目の本日を担当いたします。

アルプは、「Scalebase」というSaaS/サブスクリプションビジネスに特化した販売管理SaaS(契約管理・請求管理・決済)を開発・運営しています。ちょうど正式リリースをして1年経つタイミングでこういうアウトプットの機会をいただきましたので、今回は、セールスである毛利・石田とともにヒアリング形式でこの1年について、創業フェーズのセールスについて振返りたいと思います!

創業者が一番の営業ってほんと?

「創業者なのに一番の営業マンじゃなくてつらい」
創業してからずっと僕が一番悩んでいたことです。

BtoBスタートアップの世界ではよく「創業者が一番の営業」という話を聞きます。プロダクトの理解度も高く、またその場で意思決定もでき、何より創業者としての情熱も十二分にあるはずなので、結果的に最強の営業と言われる理由もわかります。多くの企業がそうであるし、「初期の営業・数字作りは代表がやっちゃいます/やれちゃいますよね。」とはよく聞いたものでした。

私がアルプをはじめた時も、営業完全未経験とはいえ、最初は自分で数字を作るものなんだろうし、作れるのだろうと思ってました。営業経験がああだこーだなんて、そんなことを言っても何も始まらないわけで試行錯誤の日々。しかし結果は燦々たるもので、いいねと言ってもらえても買うという話にはなかなかなりません。あれ、みんなどうやって最初売ってるんだっけ?というのもまったく見当もつかず、全然立ち上がりませんでした。涙。

プロダクトがまだまだできていない中とはいいつつ、今度は「プレゼンだけで契約を取ってこれるのが真のセールスである」という誰が言ったかもわからない言葉が己にプレッシャーをさらにかけていきます。

たくさんの企業に会い、ヒアリングの機会をいただけたことはすごく恵まれていたのですが、その後の、営業・提案・特にクロージングにおいて非常に大きな壁にぶち当たっていたのが創業初期1年半ほどです。創業者が一番売れるはずなのに、、、と悩み、あがく日々を過ごしながら、無事セールス毛利と石田に出会い今に至ります。その苦労も含めて振り返れたらいいなと思います。

紹介

毛利悠記(右)
2009年に新卒でワークスアプリケーションズ入社、ERPセールスとして特にエンタープライズ向け販売を牽引。首都圏の営業責任者だった2019年にアルプ代表の伊藤と知り合い、アルプへ参画。

石田一真(左)
2013年に新卒でワークスアプリケーションズ入社。ERPセールスとして担当営業からチームマネジメントまで経験。人材系ベンチャー、セールスフォースを経て2020年にアルプへ参画。

これまでのセールス経験との差分: 実績0からのスタート

Q. 前職はそれぞれ大手、外資系SaaSなど本当に大きいところから、創業フェーズのスタートアップに参加したわけですが、それぞれどういう1年でしたか?具体的な差分とかどういうのがありました?

(毛利)既に出来上がっているプロダクトではなく、実績も信頼も0からのスタートだったのは大きい差分でしたね。一般的にセールスの役割をかみ砕くと
①接点を作る
②課題解決の内容に合意する
③費用を合意する
④一緒に進める覚悟を持つ
に分けられるかなと思っています。アルプの場合、いろいろな縁もあって、通常スタートアップが困りやすい①には恵まれていたので、非常に助かりました。
そのため、②~④の「Scalebaseは何が解決できて、その対価はいくらで、なぜScalebaseじゃなきゃダメなのか」にフォーカスして考えることができたのはありがたかったです。ちなみに、伊藤さんはいつも気にしていますが”創業者が一番売れる”は一般的に創業者が一番会社や製品にコミットしていて熱量があるからだと思ってます。だから、そのコミットが同じように深ければ、たとえ創業者でなくても売れると思っていて、純粋にScalebaseの価値や、マーケットの広さや、メンバーの強さなどに自分自身がすごく共感できていたので、結構やりやすかったです。

(石田)初期のフェーズだと、④の一緒に進める覚悟を持ってもらう、が最も難しいですよね。プロダクトの実績も製品としての機能も足りていない中で、お客様からの信頼を勝ち取らなければならないので。その点は僕も毛利さんと同じ意識で、プロダクトに対して強いコミットメントを持つことが重要だと考えています。後は、領域に対する深い理解、課題に対する解像度の高さ、が重要だと考えていて、プロダクトもそうですが、何よりアルプという会社や自分自身を信頼してもらうことを強く意識しています。

(毛利)ここはプロダクトの世界観、解決すべき課題とのフィットはもちろんなんですが、僕が最終的に意識しているのは「目の前のあなたにコミットします」というのをどうお客様に直接伝えるか?でした。あなたの課題を僕が解決します。という話は伝え方はどうであれ、目の前のお客様には絶えずしてました。初期はどうしてもプロダクトの現実と目指しているところのギャップは大きいわけで、そこは人が間に入って解決していくしかないと思っています。

(石田)すごくわかります。あと観点は少し変わりますが、セールスの前後のプロセスを見ることができるのは非常にポジティブな差分でした。プロダクトができあがってしまい組織ができあがってしまうと、セールスなら右から左に流すだけじゃないですが、どうしてもかなり固定化した役割になってしまう懸念は持っていました。セールスの領域だけでは改善できないことももちろんたくさんたくさん(笑)あるので、セールスだけに特化しない(正確には、できない笑)ことが新しくもあり楽しいとは思ってます。これまではセールスプロセスのチューニングしかできてませんでしたが、マーケティングやアライアンス、オンボーディングにまで携るようになり、もちろん色々走り回ることも多いですが、セールスプロセス自体にもポジティブな影響が多いですし、何より全体のプロセスを通してお客様にコミットメントできるのは非常に良いなと感じています。

創業者からセールスをバトンタッチして変えたこと

Q. なるほど。毛利くんが入ったタイミングでも、一応創業者がプライシングや資料を作って(できてないなりに…)営業をやり始めてたと思いますが、そこはどういう風に変えていったとかありますか?

(毛利)コアにある、お客様のどのような課題を解決するのかというポイントやストーリーラインは大きく変わっていないと思います。ただ、それを資料にどう表現するか、どんな言葉で伝えるか、デモをどういう順序と機能でやるかは、入社したばかりで知識0の僕が聞いてもわかる内容にガンガン変えていきました。笑。創業フェーズだけではなく、お客様が求めるであろう、響くであろう内容や表現にチューニングし続けるだけじゃないかなというのは入った当時も今も思っていることです。

プライシングの考え方やディスカウント自体も、世の中にはいろんな考え方ありますが、僕はどんどん柔軟に変えてました。なにより最初はお客様とプロジェクトを始めることが一番大事だと強く思っていたので

Q. (その視点最初は全くありませんでした申し訳ありません)毛利くんは、アルプに入って1年ほど経ちますが、この1年でScalebaseを売ることについて、何か確変のタイミングってありましたか?

(毛利)大きく3つくらいタイミングはあって。まず1回目は入社直後ですね。前職では既にあるマーケットにソリューションを提供していたので、すぐに検討してくれるお客様は10社訪問して1社あったら良いくらいでしたが、Scalebaseはお会いしたお客様の3社に1社は非常に良い反応をしてくれたり、具体的に検討を進めてくれることに非常に驚きつつ、まず第一歩としてマーケットへの自信は持てました。
2回目は入社して半年の間に、誰もが名前を知ってる様なSaaS企業とご契約をいただけたタイミングです。スマートキャンプ・Sansan・AI insideといった企業が抱える課題をいかにScalebaseで解決していくのか、という提案を通して、SaaSのマーケットには確実に大きな課題が眠っているなと感じました。
3回目は直近ですが、SaaSではない電力事業者・SIer・サービス業・人材紹介業などのお客様からお問い合わせをいただいて、そもそも我々はサブスクリプションビジネスの課題を解決したいわけではなく、現状のScalebaseが解決できる課題が一番大きい領域がサブスクリプションビジネスなだけだと気づかされた時です。従来型のビジネスにおいても定期的な(契約期間を持つような)形での商材管理や契約請求業務は世の中にたくさんあり、SaaSのマーケット以外にも大きな広がりがあるなと思えたこと。解決できる課題、SaaSだけじゃないわ、と思えたのは嬉しかったです。お客様との対話を通して、次第にそういう広がりを感じられたのは一層励みにも自信にもつながってきていますね。

(石田)(伊藤さんどんな営業してたのかなって思っちゃいますが。笑)提供しているプロダクト領域が世の中の課題に確実にフィットしているという実感はすぐに持つことができましたね。そこへ共感というか自信を持つことができるのはセールスとしてはとても幸せなことでありやりやすかったです。一方で課題感は強いのにプロダクトとして応えきれないこともまだまだあるので、同時に悔しい思いをすることもあります。

1人目のセールスの役割 = まずはプロジェクトを始めること

Q. 悔しいというところで、苦労したところも聞いていきたいのですが、この一年での苦労/直面した壁とかどういうものがありましたか?

(毛利)プライシングと機能開発の時間軸は確かに悩みましたね。この点は今でも悩みが深いです。正直初期のプライシングはお客様に全然刺さっていなくて、どんどん変えていきましたし。
1人目のセールスの役割は「なんとしても売る、プロジェクトを始めるということ」にピンを留めるべきだなと明確に思います。
買ってくれるお客様には必ず売る、そこから始めていくというのが大事だと思いました。その時にプライシングロジックやその他の内容も議論し常に調整してきたという感じです。
機能開発はビジネスサイドだとコントロールしきれない部分ではありますが、お客様にどう伝えるか、期待値の調整はビジネスサイドがやるべきことだと思っています。

(伊藤)まず始めていく、そのハードルは下げるというのが大事だったと?

(毛利)そうですね。僕が一番面白かったのは、僕が入社した直後くらいの伊藤さんのセールスエピソードですね!「いくらの値段で提供したいと思います」と提案して、お客様から「それじゃちょっと高いね~…」となった時に、伊藤さんは定価の意味わかってるんだろうか…と帰ってきた時があって(伊藤注:今思うと本当に恥ずかしい😅)、いやそれはもっと表現方法ややりかたあったでしょ…むしろ条件を模索して少し値段を下げてでも売るべきなのでは…と思いましたね笑
ベストストーリーは逆算で、あるべき姿ももちろん大事だけど、積み上げていくことはやっていかないと何も始まらないというのは僕が伊藤さんに最初にインプットしたことでしたね笑

創業フェーズの不安

Q. 創業フェーズは何でも決められる、推進できるという点で自由とは思いますが、自由度が高すぎることでの不安もありませんか?

(石田)勿論日々これがベストか?という不安というか、そういう問いは常にありますよ。まだセールスのメンバーも限られているので、一回一回のロス・機会損失のインパクトが大きいことは不安だし、プレッシャーでもあります。経営陣やエンジニア陣と距離が近く日々会話をしている分、自分がフロントに立つことで彼らの想いを台無しにしてはいけないな、という気持ちも非常に強いです。僕が与える印象や打ち出すメッセージがアルプとしての印象やメッセージに直で繋がってしまうわけで。自分がちょっと調子悪いなーとなっても、誰か代わりがいてぽんぽん売ってくれる、というわけでもないし。契約に至りお客さんからお金をいただくプロセスの入り口は営業にしかないので、そういう緊張感は日々感じています。

あとは、いいマーケットなのに、機能的に片手落ちになってしまってお客様にハマらないケースはやっぱりどうしても悔しい。そこは落ち込むのではなく、自分たちの伸びしろと捉え、しっかりチームにフィードバックしながらやっているし今後もそうしていきたいですね。

(毛利)セールスだけの目標達成を考えると、小さな案件の積み重ねよりも大きな案件に注力して、乾坤一擲がんばるぞー。というやり方が良いフェーズもありますが、スタートアップではそうもいきません。あらゆるチャンスをすべて取り逃さないことが必要なので、常にアンテナを張り続けることが大事です。THE MODEL型の業務設計なども、1人しかいないのに分業なんてできないですよね笑。色々な人から色々なインプットをもらえたり、世の中にも知見がたくさん落ちている時代ではありますが、僕らがゴールに辿り着けるかどうかは、最後ゴールに到達した時にしかわからないと思っているので、やれることをやり続けるしかないです。

(伊藤)ちなみに、こうした不安やわからないことは、どう乗り越えていってますか?

(石田)不安だ不安だと言っていても仕方ないので、とにかく日々学びと実践のサイクルをいかに高速で回せるか、ということを意識しています。幸い他社の知見やノウハウは今は相当周囲にあふれているので、それらから学んでまず試してみる、そして自分たちのプロダクト特性やフェーズに合わせて日々チューニングをしていく、もうそれしかないと思ってます。最近では、SaaSの営業の方に会うたびに質問ばっかしている気がしています 笑。 後になって振り返ってみると違ったなと思うこともきっとあるのでしょうけど、学んで実践してまた学んで...自分たちが日々進化していく以外に前に進む方法はないと思っています。

(毛利)○か×かはわからないけど、0点、50点、70点なのかとかは周りの経営者、投資家、お客様との対話の中でフィードバック・インプットをもらいつづける。究極はお客様から「ありがとう」の一言を引き出せるか、それを積み重ねることができるかが大事だろうなと思っています。

この記事を読んでくれているSaaSスタートアップの1人目のセールスに伝えたいことは、トレンドの営業スタイルを学ぶことはもちろん良いと思いますが、同じ商品を同じタイミングで販売したことがあるセールスはこの世に一人もいないし、最後に責任が取れるのも自分自身だけです。だから自分がやるべきと思ったことを全部トライしないといけないし、世間に溢れる情報に引っ張られすぎてはいけません。自分で道を切り開く覚悟を持つことが一番大事だと思います。

創業期のセールス = 領域横断で思考し、行動すること

Q. 創業フェーズにおけるセールスで大事なことってなんだと思いますか?

(石田)セールスに領域を限定して思考・行動しないこと、これに尽きると思っています。あくまでセールスは単なるロールでしかないと捉え、ビジネスを拡大していくことに強いコミットメントを持って思考・行動するのが何より重要だと思っています。具体的には、セールスやオンボーディングといった形を明確に定義したり分断しないこと。そして自工程においては次工程のことを優先して思考すること。これは創業フェーズのアルプに来て、自分自身が最も変わり、最も学べたことの1つだと思っています。例えばマーケティングなら、セールスの人たちはどんな状態で商談を始めたいかな?と考え、保守・運用ならどんなマーケティングメッセージに繋がればいいかな?と思考すること。自工程のKPIだけでなく、次の工程の人がどのようにボールを受け取りたいかを具体的に考えてそこにアクションをつなげていく。僕の頭の中ではキャッチボールをイメージしていて、要は自分がどこにどんな球を投げたいかではなく、どこなら取りやすいかな?胸の高さがいいかな?と考えることです。言ってしまえば当たり前のことかもしれませんが、頭で理解しているのと実体感があるのでは全然違っていて、創業フェーズでは往々にして1つのロールだけでなく、複数のロールを担うことが多いと思うのでこの経験は何より貴重ですしありがたかった。別の工程を経験することで双方の理解も深まりますし、この経験は創業フェーズならではと感じます。長くなったのでまとめると、売上責任へのコミットメントを果たすために、セールスプロセスだけでなく、領域を横断して思考し、行動して解決に近づけていく、そんなことが重要なんじゃないかと思っています。

(毛利)スキルセットじゃないですが、会社と製品のことを純粋に好きであること、フィットしていることはめちゃくちゃ大事だと思います!

求!セールスアニマル!

Q. どういう人が創業フェーズのセールスに向いてると思いますか?

(毛利)「セールスアニマルになろう」という資料があるのですが、プロダクトカンパニーにおけるセールスのあり方について非常によく書かれています。セールスとは顧客と話すこと。セールスのフィードバックを活用してプロダクトを検証していくということ。など、非常にこれまでの話にも通じて共感できる内容です。
これに共感できる人はSaaSスタートアップのセールスに非常に向いていると思います。いやアルプに向いている。連絡ください!笑
アルプのセールスやカスタマーサクセスはこの姿を体現した組織になっていきたいですね。

最後に

セールスチームは、どういうプロダクトを、どういう顧客セグメントに提供するかによっても全く変わります。なので、この話が幅広くSaaSスタートアップにどこまでフィットする話かは定かではありません。

ただ、僕がこの話で少しでも伝えられたらと思ったのは、セオリーはどこまでもセオリーであって、創業者が営業に苦労していても、力強く支えてくれるメンバー・チームを呼び込めれば立ち上がっていくということ。またこれを通して、経営者は、できないことに悩まないこと、できる仲間をどう増やすかにコミットすることが一番なんだなと再確認できたことです。

セールスに限らず、あらゆることができる経営者なんてどこにもいません。そんな時は力強い仲間集めに奔走しましょう!そんなわけでアルプも、引き続き最強のセールスメンバー、それに限らずカスタマーサクセス含め大募集してますのでよかったらこちらもみてくださいね。

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