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ひとりむすめ

ひとりむすめ

 何年も前に文学フリマで購入した、山下真響さんの「ひとりむすめ」を読んだ。発行日を見たら2018年。読むタイミングを失い続け、長く眠らせてしまってごめんなさい。読みました。

 厳格な父とふたり家族だった千代子が、ある日唐突に零という男性の元へ嫁がされる。まだ高校生だった千代子。父に言われるままに家を追い出され、見知らぬ男性との生活をはじめることになる。零はとても声がちいさくてなにを言っているのか

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テート美術館展―光

テート美術館展―光

 以前気になった展示にきのう行ってきた。

 美術のことは正直よくわからない。すきな画家がいるわけでもないし、美術展に行くこと自体がなかった。でもこのテート美術館展はどこか惹かれるものを感じて、とうとう足を運ぶまでに至った。

 当日、うまく眠れなくてそのせいで頭がぼんやりしたまま展示を観ることになってしまって、かなりもったいない体験をしてしまったなぁと反省。絵を見てもすなおな感想が「絵うまぁ……

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塩田千春展:魂がふるえる

塩田千春展:魂がふるえる

 入ってすぐのところにある、最初の展示。手と針金の作品を見た瞬間から「あ、これはだめだ」と直感した。これは気持ちごと引っ張られるやつだと直感した。
(以下、展示内容を含むのでご注意ください)

 
 美術館に行く習慣はもともとなかった。ただ、別件で東京へ行くことがあり、その直前にこの展示があることを知り、なんとなく軽い気持ちで(時間を潰す程度の軽い気持ちで)足を運んだ。なんて軽率、浅はかだったんだ

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星の瞳

星の瞳

『星の瞳』 リリー・スイミーさん著
 
『手紙』『星の瞳』というふたつの短編を収録したちいさな短編集.それぞれにちがった毛色のおはなしで,気軽に読めるけれどすんなりとこころに落ちるのではなく,どこかで「ん?」と引っかかるなにかを残してくれる.
 

◎手紙

古書店で偶然買った画集のなかに挟まっていた一通の手紙.それを覗き見たことをきっかけに,主人公はすこしずつ自らを作り替えていく.

読み終わっ

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惣治郎

惣治郎

『惣治郎』 スイミーさん著
 
ほんとうは文フリ大阪の前日に本をもらっていたのだけど読む余裕がなくて,数日前にようやく読めました.

みっつの短編で構成された連作短編小説.以前webで発表された『惣治郎』を膨らませた物語.収録されたみっつともがそれぞれ愛おしくて,この物語すべてがひとりのために描かれた物語だったなあという印象でした.そのひとりを救うことで周囲のひとたちもろとも救われるようなお話.4

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ミニチュアガーデン・イン・ブルー

ミニチュアガーデン・イン・ブルー

『ミニチュアガーデン・イン・ブルー』 キリチヒロさん著
 
はじめてこの本を知ったのは第三回文学フリマ大阪(2015)でした.
表紙がまず目を引いて,Webに上がっていた冒頭の試し読みを読んでから気になっていた本でした.
すでに多くの方が読んでそれぞれ魅力的なレビューを書いていらっしゃるので,そちらを参考に,第一回文学フリマ京都でようやく手を伸ばしたという次第.

以下,ネタバレを含む読書記録です

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EINE KLEINE

EINE KLEINE

『EINE KLEINE』 キリチヒロさん著
 
2015年の第3回文学フリマ大阪で購入してから早数か月.
会社からの帰りの電車内で,気力があるときだけ本を開いてすこしずつすこしずつ読み進めてきて,年を越して,ようやくすべて読めました.
むっつの短編のおはなしで構成されている短編集.どれもすてきなおはなしだったのですが,とくに印象に残っているのは『エム』と『きみはギフト』.もちろん他のおはなしだっ

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ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』

 演劇というものにまるで興味がなかった。
 学校行事で観る機会が何度かあったり、誘ってもらって観に行ったことはあるけれど、ピンとくることがなかった。表面をさらりと一瞬触っていったくらいで、自分のなかにいつまでも残るものはなかった。
 2.5次元舞台というジャンルはいまや立派なひとつの演劇コンテンツとしてその立場を確立しているように思うけれど、それに対しての肯定も否定も、だから持たなかった。興味がな

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