見出し画像

「テキストの読み込みを頑張りましょう」というアドバイスの中身をガチで検討してみた

みなさんこんにちは。クラスマネージャーの黒澤です。

司法書士試験で受験指導を受けたことがある方は一度は言われたことはあるであろうアドバイスとして「テキストの読み込みを頑張りましょう」というものがあります。司法書士試験の場合、やはり過去問だけではカバーできない未出部分が存在するので、このようなアドバイスがされるのも、ごもっとも、といった感じでしょう。

 ただ、実際にそれを言われてテキストは読んでみたものの、「どうも読んでいるだけで勉強になっているか分からん」という方が受験生の多くを占めている気がします。実際のところテキストは「やるべきもの」だとは分かるのだが「どのように使うのか」という部分には受験生にとって謎が多いのではないでしょうか。

 私がカウンセリングをやっているときもこの「テキストの使い方」に関しては悩まれている方が多く、頻繁に質問を受ける事項の一つであったりします。

 そこで、今回は、テキストを学習の主軸に置いて合格した人間のサンプルとして、私が受験時代にどのようにテキストを使っていたかという点についてご紹介しつつ、「テキストの読みこみ」というものの中味を検討していきたいかと思います。

 具体的には、私は、テキストを読む勉強をする場合、

①「アウトライン」「要学習事項」をつかむための読み方(仕分けする)
②「要学習事項」の「理解」をしながら読んでいくという読み方(理解する)
③「要学習事項」を理解した後に「覚える」「刷り込む」ための読み方(理解したものを覚える)

という風に、同じテキストを読む行為でも読み方に段階を持たせています。以下、詳述します。


①「アウトライン」「要学習事項」をつかむための読み方(仕分けする)

まず、講義を受けた後等に初回でテキストを自力で読むときは、今から読む部分の「アウトライン」を把握するために「ざっと」読みます。基本的に学習したい部分の全体像を把握するために行う読み方なので、分からない部分があっても立ち止まりません。書いてあることについてじっくり考えたりはしないので「目を通していく」という感覚に近いかもしれません。

 そして、このときに「分からないな」だとか「すぐには頭に入ってこない」という感覚を持った部分、つまり「要学習事項」になりそうなものに付箋を貼っておきます。あまり深く考えず直感的に貼っていきます。その後の②の読み方をするときに注力すべき部分とそれ以外の部分を仕分けするイメージです。

②「要学習事項」の「理解」をしながら読んでいくという読み方(理解する)

いわゆる精読というやつです。上記で付箋を貼った「要学習事項」をメインに精読し、「ああそうだな」だとか「書いてある意味が分かった」という風に思えるレベルになったら、付箋を剥がします。

 そして、この段階でいくら精読をしても分からないという場合、その科目の全体を回していない初学者の段階であれば、長時間考えても答えが出ない可能性のほうが高いので、付箋に「戻ってくる」などと書いて先に進んでください。なぜなら、初学者の場合だと、「後でしっかりやることを今分からないだけ」の可能性が多いので、そのような段階で悩んでも無益に時間を使うことになるだけだからです。可処分時間の圧迫の原因の1つです。また、「分からない」という感覚を持ちすぎるとそれはモチベーションの低下にもつながりますし、結果として未受講の講義もそこが分からないと悩んでいるうちに溜まっていくという負のスパイラル状態になります。「落ち着いて考えた上で答えが自力で出せないなら今やるべきことではない」という判断は膨大な情報量の処理が求められる司法書士試験との関係では非常に重要なスキルです。悩み過ぎないで先に進んでください。そのための付箋です。

 他方、その科目の全体を既にある程度回している段階の方にとって、その部分が「ああそうだな」だとか「書いてある意味が分かった」というレベルに達していないことは、その部分はいわゆる「穴」というやつです。こういう部分にどれだけ意識的になれるかというのが、テキストを網羅的に学習するという観点から大切です。直前期でなければ、こういう部分を極力理解した状態にしていくのが、あと数点積み増しが足りないという方にはポイントになってきます。逆に、直前期であればそういった部分に過度に時間を使いすぎると他のことができなくなるので、どうしても分からないのであれば覚えてしまうという割り切りも重要です。以下で述べるように自分は読み込みの過程でどうしても分からない部分はICレコーダーなどにその部分に関しては吹き込んで試験開始ぎりぎりまで聞いていました。丸暗記だとしても正誤がつくなら司法書士試験との関係では3点になるからです。

3、「要学習事項」を理解した後に「覚える」「刷り込む」ための読み方(理解したものを覚える)

・「想起」の重要性について
 実際に「テキストを読め」といわれた場合に、繰り返して読んでいれば頭に入るという一部の天才は別ですが、文章形態のテキストを単に読んでいるだけで重要事項を精密に暗記できる方というのは稀です。なぜなら、単に読むという行為にはそこまで脳に負荷があまりかかっていないからです。楽勝に持ち上げられるバーベルを何回持ち上げても負荷がかからず筋力がつかないのは記憶に関しての脳も同じです。

 そこで、テキストから重要事項を暗記するために、テキストを読んでいるときに、読んだ直後に「想起」のプロセスを挟んで脳に負荷をかけるわけです。要は、業界では「テキストでアウトプット」、「テキストを問題化」「テキストの脳内再生」などと言われているものがこれにあたるかと思われます。

 たとえば、テキストで民法の錯誤の部分を勉強していたとします。この場合、本文を読んでそのままだとその読んだ部分が強力に脳に残ることはないかと思います。ですから、本文を読んだ後に「要件などの見出しだけをヒントにその要件が脳内で思い出せるか」ということを一度テキストを閉じておこないます。具体的には、①錯誤に基づく意思表示があること、②法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があること、③表意者に重過失がないこと、④動機の錯誤であれば、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていることが答えですが、これを頭で思い出せるか、ざっとでいいから言えるのかどうかということをテキストを読んでいる間にはさむわけです。

 これをやっているかやっていないかで変わるのはいわゆる、「知識の精度」というやつです。

 ただ、やってみればわかりますが全ての項目に関してこれをやるのは地獄です。そこで、Aランクといわれる「知識の精度」を高く要求される部分から徐々にB+ランク部分を潰していくという風に可処分時間に合わせて行っていったほうが費用対効果が高いかと思われます。

 最初にこれをはじめると張り切って全てをやろうとしてしまうのですが、必要なことを必要な時に脳から引っ張り出せるという記憶の精度というのは、択一で正誤を答えればいいだけの限定された記憶の精度よりはるかに高いものです。

 たとえば、「表意者に重過失がある場合でも錯誤取消ができる場合をいってみろ」と言われてスラスラ答えられる記憶の精度と、「表意者に重過失がある場合でも相手方が錯誤があることを知り又は、重過失によって知らなかったときは錯誤取消しは可能である」→○、「表意者に重過失がある場合でも相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは錯誤取消しは可能である」→○、と正誤判断できる記憶の精度は違うし、覚えることに要求される努力の量は違いますよということです。

 ですから、Aランク等の常識化しなければいけないもの、つまり、どんな形で聞かれても反応して脳から引っ張りだせないといけないものからやるわけです。私の場合、Bランクレベルの程度の優先度が低い知識であれば2のプロセスまでしかやらないという風にやってメリハリをつけていました。なぜなら、負荷をかけすぎてもつぶれますし、細かい知識は読んで意味が分かれば足りるからです。

・ピンポイントで覚えたい部分は音読
 これは上記の「想起」と組み合わせると効果的です。たとえば、上記の錯誤の要件を「想起」できなかったとします。この場合に①~④の要件を延々と繰り返して唱えます。実際声に出して行ったほうが聴覚の刺激もあるので頭に入ります。そして、何回も唱えた後に、覚えたかなと思ったら「想起」してできたら次へといった感じです。公共の場所でやると不審者なので黙読でかまいませんが、実際にやってみると音読のほうがはるかに効果が高いことがわかるかと思われます。ここでどうしても分からない部分は自分の場合ICレコーダーなどに録音して持ち歩いて本試験の直前まで聞いていました。

・表は穴埋め問題に改造
 テキストには必ずまとめ表のようなものが付いているかと思います。そのような表の部分は上記のような「想起」や「音読」という手段がやりにくいです。そこで、表の重要部分を消えるペンなどでマークしてしまい、赤シートなど隠して答えられるかといった風に学習してしまうのが一番手っ取り速いです。

まとめ

 以上のように、

1、分からない部分と分かる部分に仕分ける

2、理解するために、分からない部分をメインに精読する

3、特にAランク、B+ランク等の強固に覚えておかなければならないものは、理解した上で覚える作業を入れる

という風に学習していくわけです。3についてはあくまで強調しておきますが、2までが原則で、Aランク等の常識化しなければいけないものから取り組んで無理をしすぎないでやっていくことが重要です。あくまで重要事項について鉄壁の基礎を作るために3があると考えて、メリハリをつけてテキストを読んでいくのが重要です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?