見出し画像

【択一式】役員に関する登記(髙橋講師)

みなさん、こんにちは。伊藤塾司法書士試験科講師の髙橋智宏です。

今回の問題 ~役員に関する登記~

画像2

【1】第1問の解説 ~非取締役会設置会社の代表取締役の就任登記~

画像10

非取締役会設置会社において,取締役が株主総会の決議によって代表取締役に選定された場合には,代表取締役の就任による変更の登記の申請書に,就任承諾書を添付することを要しない(登記研究646号参照)。

〔理解のポイント ~直接選定と間接選定~〕
 非取締役会設置会社において,「直接選定方式」とは株主総会決議又は定款により代表取締役が株主によって「直接」的に選定される場合をいい,「間接選定方式」とは定款の定めに基づく取締役の互選により代表取締役が「間接」的に選定された場合をいいます。
 直接選定方式は,そのネーミングから代表取締役となる者に会社から代表権を与えているようにも思えますが,実は代表取締役でない者から代表権を剥奪するものです。例えば,取締役ABのうち,株主総会又は定款によりAを代表取締役に選定すれば,代表取締役に選定されないBは代表権を失うことになり,結果的にAのみが代表権を有することになります(非取締役会設置会社においては各自代表が原則ですから,Bが代表権をもともと有していることが前提となっています)。なので,選定した者に新たに代表権を与えるものではない以上,委任契約の申込みに当たる意思表示が存在しないため,これを前提とする就任承諾も要求されません。また,委任契約がないことから,委任契約の任意解除(民651条1項)の表れである辞任(代表取締役の地位だけ)も自由にすることができず,その承認決議又は定款の変更が必要です。
 間接選定方式は,一度取締役が本来有する代表権を剥奪した上で,定款の定めに基づく取締役の互選によって特定の取締役についてだけ,代表権限の委任契約を締結し,その取締役についてのみ代表権を付与するものです。この場合は委任契約を締結することになるため,就任承諾が必要です。また,委任契約があるわけなので,辞任(代表取締役の地位だけ)も自由にすることができます。

画像6
画像7

【2】第2問の解説 ~権利義務代表取締役の当否~

画像10

代表取締役を兼任する取締役が,取締役という前提資格を喪失する場合,権利義務承継代表取締役とはならない(昭32.5.1民事甲858号回答参照)。本問の場合,代表取締役を兼任する取締役が取締役を辞任したことに伴い,定款に定めた代表取締役の員数を欠くことになるが,取締役としては法定員数を満たしているため,取締役の辞任による退任の登記を申請することになる。これに伴い,代表取締役の退任の登記も申請しなければならない。

〔趣旨〕代表取締役の権利義務を有するためには,その前提として取締役の権利義務を有する者である必要があるからである。

画像1

【3】第3問の解説 ~就任承諾書としての株主総会議事録の援用~

画像10

株主総会の決議によって新たに選任された取締役が席上で就任を承諾した場合において,当該取締役の就任による変更の登記を申請する際に本人確認証明書の添付を要するときは,株主総会議事録に当該取締役の住所の記載がなければ,就任承諾書として当該株主総会議事録の記載を援用することができない(平27.2.20民商18号通達)。

〔趣旨〕本人確認証明書は,登記官が就任承諾書に記載された取締役等の氏名及び住所を公的書面と照合し,その実在性を審査することを趣旨としているため,本人確認証明書の提供が要求される場合においては,就任承諾書として援用する株主総会議事録においても,就任を承諾した取締役等の氏名及び住所の記載がなければならない。

画像8

※ こちらの記事に関する質問は受け付けておりません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?