見出し画像

何のために過去問を使うのか・・・次を考える素材。

蛭町 浩

1. 過去問を学習することの意味

受験勉強は,常に時間との闘いと言えます。それは,司法書士になることを決意した時の「熱い気持ち」が冷めないうちに勝負を決めなければならないからです。

そのため受験勉強は,最も効率的な学習方法を模索すべきことになります。理想は,来年度の本試験を入手し,それを解けるようにすることです。しかし,その実現は不可能ですので,次善の策として過去の本試験である「過去問」を使うことになります。

試験委員ですら,過去問との連続性・整合性を無視できず,全くのオリジナルな発想で本試験を作ることはできず,過去問こそが来年度の本試験を作成する素材になっていると推察できるからです。現に試験委員には,参考資料として過去問が配布されているとの噂があり,試験委員と同じ資料から過去問の次(来年度の本試験)を考えるのが,試験委員の発想に迫る近道となるのです。

この場合の過去問は,あくまで来年度の本試験の代わりとして,次の出題を考える素材という位置づけになります。そのため,過去問を学習する際の問題意識は,常に次に出題されるとしたら,何がどう出題されるかを,考え続けることに尽きることになります。

過去問を学習する意味を考えず,漫然と過去問さえやっていれば,何とかなるという「過去問至上主義」,ある種の思考停止に陥ってはならないのです。

2. 学習対象とする過去問の分量

さて,過去問を学習対象にするとして,何年分ぐらいの過去問を学習すべきかは,受験生の悩みのタネとなっています。過去問そのものが当然に再出題される訳ではなく,近年,頻繁に繰り返される法改正(価値転換)を考えれば,やみくもに過去問の「量」を追うことに意味がありません。

記述式の過去問に関していえば,試験委員が来年度の本試験を作る資料だと考えた場合,論点のバッティングを確認するための令和5年度及び令和4年度の最大2年分,出題内容が来年の本試験に近似しても差し支えがない令和3年度以前の出題のうち,改正による出題変化を考慮すれば3年分の合計5年分(令和5年から平成31年計5年分)の過去問があれば足りると推察できます。

そのため受験生が次の本試験を考える資料として過去問を使う場合にも,試験委員と同じ土俵で考えを進めるという意味で,この分量で過不足がないことになります。

生身の人間がやる受験勉強の世界では,とかく不安を量で解決しようとする傾向が生じやすいのですが,生身の人間には「量」と「質」とは両立できません。「量」を増やせば「質」が低下するのは必定で,作業に追われれば,考える時間さえ失いかねず,本末転倒の結果となりかねません。

また,答練などの模擬問題は,次の出題がどうなるのかという問題意識で作られており,答練だけで,殆ど過去問をやらずに合格を果たす受験生もいることを考えれば,学習対象とする過去問の年度を増やすことが効果的とは言えないことを肝に銘じておくべきです。

3. 過去問の学習の可能性

もちろん,過去問には,現在の学習レベルが,本試験にどの程度,対応できるのかをチェックし,自己の学習到達度を定量的に把握するという機能があります。そのため,学習の節目ごとに単に過去問を解くという伝統的な手法も,過去問の学習方法として十分に成り立ちます。

しかし,この伝統的手法では,学習対象となる過去問の分量をいかに増やして過去問をやりこんだところで,過去問を超えることはできません。そこで,上記のように過去問を次の出題を考える素材として位置づける学習が意味をもつことになるのです。

このように過去問を何のために学習するのかの意味を考え直せば,過去問の使い方には,様々な可能性が見えてくることなり,過去問の世界がなかなかに奥深いものであることが分かります。

学習対象となる過去問の分量を絞り,答練などの模擬問題を参考に,過去問の次にくる出題を考える,単なる学習レベルのチェックを超えた過去問の使い方を,考えてみて頂ければと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?