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特別講義編「借地権に関する登記」

みなさん,こんにちは。伊藤塾講師の髙橋智宏です。

今回は特別講義編として,「不動産登記法:借地権に関する登記~」を取り扱います。

【1】 通常の借地権

 ⑴ 自己借地権設定の可否

原則として,自己借地権を設定することはできないが,例外として,他の者と借地権を共有することとなるときに限り,借地権設定者が自らその借地権を有することができる(借地借家15条1項)。したがって,登記義務者が同時に登記権利者となる自己借地権の設定の登記の申請は,他に登記権利者があるときに限り,することができる≪確認問題①≫(平4.7.7民三3930号通達)。

 ⑵ 登記申請手続の注意点

地上権の場合,絶対的登記事項である地上権の設定の目的(78条1号)につき,「目的 建物所有」と表示する。

また,賃借権の場合,本来は賃借権の設定の目的は登記事項とはならないが,建物所有を目的とする土地の賃借権の設定の場合には,その旨が登記事項となり(81条6号),「目的 建物所有」と表示する。借地借家法の適用のある賃借権であることを公示するためである。

【2】 一般定期借地権

 ⑴ 意 義

一般定期借地権とは,存続期間を50年以上とし,契約の更新・(建物の再築による)存続期間の延長・建物買取請求を認めない,という3つの特約(以下「3点セットの特約」という)を合わせて付した借地権である(借地借家22条前段)。一定期間が経過すれば,必ず土地の返還がされる仕組みをとり,土地所有者が土地を貸しやすくなることを目的とした借地権である。

そして,一般定期借地権を設定する場合,3点セットの特約は,書面によってしなければならない(同条後段)。

〔補足〕特約の有無に関する後日の紛争を予防し,定期借地権であることを明確にする趣旨である。なお,条文上「公正証書等の書面」とされているが,この「公正証書」は例示的なものであるため,それ以外の書面による特約であってもよい。

 ⑵ 登記申請手続の注意点

申請情報には,借地権設定の目的として「目的 建物所有」と表示し,特約として「特約 借地借家法第22条の特約」と表示する≪確認問題②≫(78条1号,3号,81条6号,8号)。

そして,添付情報のうち,登記原因証明情報については,通常の契約書に加え,特約を証する書面を提供しなければならない≪確認問題③≫(令別表33添イ,38添イ)。

【3】 事業用定期借地権

 ⑴ 意 義

借地権は,工場などの事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)の所有を目的として設定することもでき,これについて借地借家法第23条に特別な規定がある。これを事業用定期借地権という。

 そして,事業用定期借地権の“設定”を目的とする契約は,公正証書によってしなければならない(借地借家23条3項)。

〔補足〕特約の有無に関する後日の紛争を予防し,定期借地権であることを明確にする目的に加え,専門知識のある公証人に,事業用定期借地権の要件の具備を審査させて,違法な事業用定期借地権の設定を防止する目的で,設定契約は公正証書によることが要求されている。これは設定の際に確認できればよいから,事業用定期借地権の“譲渡”を目的とする契約は,公正証書によってすることを要しない。

 ⒜ 存続期間を30年以上50年未満として設定する事業用定期借地権

専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし,かつ,存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合には,3点セットの特約をすることができる(借地借家23条1項)。

 ⒝ 存続期間を10年以上30年未満として設定する事業用定期借地権

事業用定期借地権は,存続期間を10年以上30年未満として設定することも可能である。この場合,3点セットの特約の内容が法律上当然に契約の内容となる(借地借家23条2項)。

〔補足〕普通借地権の場合,必ず存続期間が30年以上であるから,存続期間を10年以上30年未満とした場合は,当然に事業用定期借地権になり,たとえ契約において,当事者が特約について触れていなかったとしても,存続期間が10年以上30年未満であれば,事業用定期借地権であることは明らかであるため,“法律上当然に”3点セットの特約の内容が契約の内容に含まれることになる。

 ⑵ 登記申請手続の注意点

存続期間を30年以上50年未満として事業用借地権を設定した場合(借地借家23条1項)には,事業用定期借地権の設定の目的として「目的 借地借家法第23条第1項の建物所有」と表示し,特約として「特約 借地借家法第23条第1項の特約」と表示する(平19.12.28民二2828号通達)。

また,存続期間を10年以上30年未満として設定する事業用定期借地権を設定した場合(借地借家23条2項)には,「目的 借地借家法第23条第2項の建物所有」と表示するが,特約の記載は不要である≪確認問題④≫(平19.12.28民二2828号通達)。10年以上30年未満の事業用定期借地権であれば,特約の有無にかかわらず,3点セットの特約の内容が法律上当然に契約の定めになるからである。

さらに,事業用定期借地権は,その設定契約を公正証書によってすることを要するため(借地借家23条3項),登記原因証明情報として,当該公正証書の謄本を提供しなければならない≪確認問題⑤≫(令別表33添ロ,38添ロ)。

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今回の内容は以上です。最後に次の確認問題に取り組んでみてください!この記事がみなさんの学習のお役に立てば幸いです。

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