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北谷馨の質問知恵袋 「根抵当権消滅請求と抵当権消滅請求」に関する質問

今回は、「根抵当権消滅請求と抵当権消滅請求」に関する質問です。

Q:「根抵当権消滅請求」は元本確定前にしかできないのに、「抵当権消滅請求」は元本確定前でも可能というのがどういうことかよく分かりません。

398条の22の根抵当権消滅請求と、379条の抵当権消滅請求は、全く別の制度です。
根抵当権にはこの2つの制度がいずれも適用されますが、「根抵当権消滅請求」は元本確定後に限るのに対し、「抵当権消滅請求」は元本確定前後を問いません。

398条の22の根抵当権消滅請求とは、根抵当権の元本確定後に、物上保証人や第三取得者が極度額相当額を払って根抵当権を消すという制度です。極度額1000万円で、元本確定時の被担保債権が3000万円だったとしても、1000万円だけ払って根抵当権を消すことができます。通常の弁済で消すためには3000万円払う必要がありますが、根抵当権消滅請求では1000万円で消すことができます。

379条の抵当権消滅請求とは、第三取得者が、一定の金額(金額は第三取得者が決められますが概ね不動産の価額くらいの額)を担保権者に払って、担保権を消すという制度です。これは競売があった場合と同じように、「1番根抵当権」「2番根抵当権」「3番抵当権」と複数の抵当権や根抵当権があればそのすべてが消えることになります(398条の22の根抵当権消滅請求は「1番根抵当権だけ」消すという制度です。)。

この制度を使って消す場合は、根抵当権の元本確定は要件とはなっていません。

・そもそも379条の抵当権消滅請求と398条の22の根抵当権消滅請求は全く別の制度である。
・根抵当権は抵当権の一種であり、抵当権に関する規定は原則として根抵当権にも適用される。
・よって379条も根抵当権に適用される。
・379条の抵当権消滅請求について、元本確定前に限る旨の規定はない。

ということになります。

根抵当権の問題で「消滅請求」という言葉が出てくると、どうしても398条の22の「根抵当権消滅請求」のことだと思い込んでしまいがちですが,まずは問題文を正確に読んで「どちらの消滅請求が聞かれているのか」をしっかり把握するようにしてください。

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