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【択一式】組織再編・本店移転・持分会社に関する登記(髙橋講師)

みなさん、こんにちは。伊藤塾司法書士試験科講師の髙橋智宏です。

今回の問題 ~組織再編・本店移転・持分会社に関する登記~

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【1】第1問の解説 ~組織再編における承認決議~

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株式移転における完全子会社が種類株式発行会社である場合において,完全子会社の株主に対して交付する完全親株式会社の株式等の全部又は一部が譲渡制限株式等であるときは,当該株式移転は,当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く)の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ,原則としてその効力を生じない(会804条3項)。本問の場合においては,当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式が譲渡制限株式であるときは,当該種類株主総会の決議は不要であるため,本問の登記の申請書には,当該譲渡制限株式の割当てを受けるすべての種類の株式に係る種類株主総会の議事録を添付しなければならないわけではない(法90条6号参照)。

〔趣旨〕譲渡制限株式を対価として受け取る種類株主のうち,譲渡制限の定めのない種類株式を有する種類株主は,投下資本の回収が困難になるという不利益を受けるが,もともと譲渡制限の定めのある種類株式を有する種類株主は,上記の不利益を受けない。そのため,承認決議が必要となるのは譲渡制限の定めのない種類株式を有する種類株主からなる種類株主総会決議であって,すべての種類株主総会が必要なわけではない。

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【2】第2問の解説 ~本店移転の登記手続~

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新所在地の管轄登記所は,送付を受けた新所在地における本店移転の登記の申請に却下事由があるときはこれを却下し,その旨を旧所在地の管轄登記所に通知しなければならない(法52条3項)。そして,新所在地における本店移転の登記の申請が却下されたときは,旧所在地における本店移転の登記の申請も却下されたものとみなされる(同条5項)。

〔趣旨〕そもそも,本店の管轄外移転の場合に経由同時申請の形式が採られているのは,審査の矛盾が生じないように併合審査を行う趣旨であるので,新所在地の登記が却下されれば,これと整合性を取り,当然に旧所在地の登記も却下したものとみなされる。

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【3】第3問の解説 ~持分会社の種類変更~

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合資会社の無限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が有限責任社員のみとなった場合には,当該合資会社は,合同会社となる定款の変更をしたものとみなされる(会639条2項)。この場合には,合同会社となる定款の変更をするとき(会640条1項)とは異なり,社員が出資に係る払込み及び給付を完了させなければ定款の変更の効力が生じない旨の規定はないため,本問の登記の申請書には,出資に係る払込み及び給付の全部を履行したことを証する書面を添付する必要はない(法113条2項2号参照,平18.3.31民商782号通達)。

〔趣旨〕合同会社の社員は間接責任しか負わないため,設立登記の時点で出資の全部を履行しなければならないとも思えるが(会578条参照),合同会社への種類の変更は,法律上当然の効果として生じるため(会639条2項),出資の全部の履行に猶予期間がない。そこで,当該変更が生じた時から1か月以内に,出資に係る払込み及び給付の全部を履行すればよいとされている(会640条2項本文)。

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