今からはじめる2022年度認定考査対策
はじめに
みなさん,こんにちは。伊藤塾司法書士試験課の教材制作スタッフの市口です。
この夏も厳しい暑さが続いていますが,体調に気をつけながら仕事も勉強も,もちろん遊びも取り混ぜながら過ごしていただきたいです。
今回は,2022年9月11日(日)に予定されている簡裁訴訟代理等能力認定考査についてお話しします。
従来は1月~3月で特別研修を行い,これを受けて6月に実施されていましたが,新型コロナの影響で本試験が延期された年があったこともあり,昨年から9月実施となりました。特別研修も昨年から5月~7月の日程へ変更されています。言い訳ではないですが,認定考査までの間が7月~9月という夏の真っ盛りでは,勉強がはかどらなくても仕方ないですよね。
仕事していると本気で時間ないけど,勉強するの!?
昨年の司法書士試験は従来どおりの日程で,特別研修までの期間が長くなりましたので,既に司法書士事務所へ就職した方も多かったのではないでしょうか。特別研修中は勤務時間を配慮してもらえる事務所も多いかなと思いますが,特別研修終了後から認定考査までの間は,勉強時間の確保が難しいかと思います。私は事務所勤務ではありませんでしたが,やはり仕事をしながら認定考査の準備をすすめましたので,その時の経験をちょっとお話しておきます。みなさんの参考になれば幸いです。
認定考査の準備は,司法書士試験のような,毎日少しずつ,継続して積み上げていく…というものではありません。基本は,特別研修で集中的に学んだ内容を思い出すことが中心です。ただ,特別研修は訴訟を完遂するための事務的な手続のトレーニングに重点が置かれます。これに対し認定考査は,要件事実と司法書士の業務範囲及び倫理が出題の中心となります。印象深い模擬裁判の雰囲気を引きずるとちょっとズレますので,勉強の方向性としては,実務的ではあるけれど,どちらかというと概念的な知識の理解と,その応用をトレーニングすることに向けておくことをお勧めします。
仕事をしていると,確かに時間というか,気持ちの余裕も無いけれど,できる事の範囲を絞っておき,何とか直前2週間前には準備に手をつけていきたいものです。
準備する内容と各設問への対応
1 準備に使用した教材
特別研修の資料は別として,私の場合,要件事実は「認定司法書士への道」(弘文堂/坂本龍治・蛭町浩著/伊藤塾編 通称「道」)を使いました。理論編を中心に,グループ研修で扱った内容を思い出していきます。基本的な要件事実を概観したい時は,入門編を使ってはいかがでしょうか?端的に基本的なテーマの要件事実がまとめられており,本も軽いので,とても便利です。
実践編は,知識の理解と応用のトレーニングとして,問題形式でカンを取り戻すために有効です。請求の趣旨ひとつとっても,頭で分かっていても,いざ文章として書こうとすると意外と手が進まないものです。なるべく実際に文章を書いておきましょう。特別研修でも,手書きで書面を作成する機会はあまり無かったかと思いますので。
また,伊藤塾の「認定考査対策講座 模擬演習編」も非常に有用でした。予想問題だけでなく,付属の重要問題や,簡潔にまとめ上げられた解説レジュメは,超直前期で非常に役立つこと間違いなしです。
2 要件事実の大問について
問題文を読む時は,時系列を把握するために日付を正確に抽出する事を意識すると良いです。私は日付を蛍光ペンで塗っておき,問題冊子の余白に上から下へ時系列で事実の流れをまとめていきました。未払期間の賃料計算や契約解除の効力発生のタイミング,時効期間の把握など,時系列で図式化しておけばケアレスミス防止につながります。試験当日は試験時間が2時間あります。司法書士試験の記述式と違い,時間は十分とれますので,焦らずに解き進めていきましょう。
請求の趣旨は,「登記の目的」や「登記の事由」のように,おいしい得点源です。判決主文にあたりますので,定型文のように正確な記述ができれば安心です。ついでに,訴訟物の個数を正しく判断し,訴訟物の名称を正しく書けるようにしておきましょう。
問題の指示にもよりますが,請求原因事実の記述は,対応する要件事実を示しながら段落分けをして書くクセをつけておくと良いです。頭の整理をつけて要件事実の漏れを防げますし,主張と反論の対応関係が見やすくなり,答案も読みやすくなるので,好印象で採点してもらえるかなと期待してしまいます。
昨年の大問の出題テーマは賃貸借でした。債権法で改正された他の分野も要注意です。保証絡みの金銭消費貸借や売買の契約不適合責任の流れについても確認しておきましょう。
なお,独立した小問形式で,特定の要件事実だけを問われることもあります。特に立証責任が転換されているものには気をつけましょう(即時取得や無断転貸など)。唐突に脈絡なく設問が現れますので,落ち着いて問題文を読みましょう。ペースを崩さず解ければこっちのものです。
3 司法書士の業務範囲や倫理について
『道』理論編と特別研修のテキストを中心に見直します。ただ,細かい点を問われることもありますので,日司連の「簡裁訴訟代理等関係業務の手引」(日本加除出版/日本司法書士会連合会編)を見ておくと安心です。主に特別研修で扱った事例を振り返っておき,結論だけでなく理由も,チューターが解説していた姿を思い出しながら確認しておきましょう。もし試験中,結論に迷いが生じても,理由を理解しておけば,演繹的に解答を導くことができます。例えば,司法書士は依頼に応じる義務がありますが,簡裁訴訟代理等関係業務については,依頼人との継続的かつ強い信頼関係が必要であることを理由に,除外されています(司法書士法21条)。依頼人との間に信頼関係を構築できる見込みが無い場合は,依頼を断ることもできるわけです。簡裁訴訟代理等関係業務について依頼に応じる義務の有無とその理由を問う出題がされても,簡裁訴訟代理等関係業務では特に信頼関係が重要である点を理解しておけば,条文を知らずとも,結論を導けるかと思います。
私の場合,直前2週間あったかどうかという期間内で,上記の内容で認定考査対策を済ませました。試験の準備に完璧は無いのですが,それでも最低限の備えとして,主要な要件事実の項目,訴訟物の名称,請求の趣旨の記述,業務を行い得ない事件の例外,について覚えておけば,何とか戦えるのではないかと思います。
当日は,まるで同窓会
司法書士試験では緊張して受験会場へ向かっていましたが,認定考査はちょっと違い,特別研修で知り合ったメンバーとの再会の場でもあります。試験開始までの限られた時間ではありますが,再会を喜んで,まるで同窓会のように賑やかな集団があちこちで見られます。みんな司法書士資格者ですので,時間に余裕をもって集まっていますから,近況報告がてら,思いのほか色々と情報交換もできるかと思います。比較的リラックスした心持ちで試験開始を迎えられるのではないでしょうか。
おわりに
ここまで私の経験談を交えてお話しましたが,みなさんの中には初めての受験の方も多いかと思います。この記事で認定考査の雰囲気もお伝えできていれば良いのですが。とにかく落ち着いて試験に臨めることをお祈りしております。
なお,認定考査の直前2週間前には準備を始めたいところであると申しましたが,出願は,郵送の場合,書留郵便で令和4年8月10日(水曜日)まで(必着)ですので,くれぐれもお忘れなく~!