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北谷馨の質問知恵袋 「時効の改正」に関する質問

今回は、「時効の改正」に関する質問です。

Q: 改正により、「時効の完成猶予」と「更新」という制度が規定されましたが、具体的にどのような効果があるのかよく分かりません。

「時効の完成猶予」や「更新」の事由は様々なものがありますが、まずは、裁判上の請求があった場合について考えると理解が深まります。

例えば、AのBに対する100万円の債権が10年の消滅時効にかかりそうになっているとします。
そこで、時効期間が9年10か月まで進んだところで、AがBに対して「100万円払え」という訴えを提起したとしましょう。
まず、訴えを提起すると、時効の完成が猶予されます(147条1項1号)。訴訟が続いている間は、時効が完成することはありません。
仮に1年経っても訴訟がまだ続いているとすると、9年10か月+1年が経過しても、時効は完成しません。
その後、確定判決によらずに訴訟が終了したとします。
例えば、Aが訴えを取り下げたような場合です。この場合、訴訟の終了の時(訴えの取下げの時)から6か月間は、時効が完成することはありません。
「時効期間が9年10か月まで進んだところで訴えを提起した」→「その1年後に訴えを取り下げた」という場合、取下げの時から6か月は時効は完成しないということです。
この場合であれば、通算11年4か月(9年10か月+1年+6か月)経過したところで時効が完成することになります。
また、「時効期間が8年10か月まで進んだところで訴えを提起した」→「その1年後に訴えを取り下げた」という場合は、通算10年4か月(8年10か月+1年+6か月)で時効が完成します。
なお、「時効期間が7年10か月まで進んだところで訴えを提起した」→「その1年後に訴えを取り下げた」という場合は、取下げから6か月が経過しても9年4か月しか経過していませんから、通常どおり、通算10年のところで時効が完成することになります。

次に、確定判決が出た場合です。
AがBに対して「100万円払え」という訴えを提起し、A勝訴の確定判決が出ると、時効の「更新」となります(147条2項)。
「更新」により、時効期間は振り出しに戻ることになります。
Aの債権の消滅時効は、また0から進行しますから、判決確定後10年間は時効は完成しません。
これは従来の「裁判上の請求による中断」と同じ考え方です。

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