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新刊「ボブ・ディランとジョン・レノンでは世界を語れない」が5月19日にamazonから発売されました。(あとがき)読書好きで、小説を読めないようなひとにも読める小説を書きたいと願っている。

 私の新刊「ボブ・ディランとジョン・レノンでは世界を語れない」が5月19日にamazonから発売されました。

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 さて、下記の文章は、その「ボブ・ディランとジョン・レノンでは世界は語れない」のあとがきです。もし読んで、お気に召すようでしたら、ぜひ手に取ってみてください。

 どうぞ、よろしくお願いいたします(緒 真坂)

                   *

 前作の長編小説「切望ブルー、ピンクフォトグラフ、イエローラブ」を出してから、次はどうしようと考えていた。前作が全力を尽くし、自分が書き得る世界を拡張しようと挑んだ作品だったからである。
 今度は、リラックスして、楽しめる小説を書こう、と私は思った。手抜きではない。リラックスだ。

「ロボットです」
 私には切ない話や絶望する話が多く、ハートウォーミングな作品が少ない。これはその数少ない作品の一つである。
 短いものなので、さらさらと書いた。SFのような設定だが、SFだと思っていたわけではない。
 ある日、ふと思いついた。その事情については、作者にもわからない。こんな話を書く気になったとしかいえない。
 短いものなので、一日で書いた。
 だが、結局、何度も書き直すことになった。時間をかけて、熟成するようにして出来上がった作品である。
 時代遅れの哲学者・小説家、サルトルの著作の声がなぜか、響いているような気がする。

「ボブ・ディランとジョン・レノンでは世界は語れない」
 私は、名前を探すストーリーというのが好きだ。かつて「極北」という小説でも、このテーマでストーリーを構築したことがある。
 といって、前回と同じことをしても仕方がない。そのことを踏まえながら、書きすすめた。
 この小説を書いているとき、ビートルズの全アルバムを取っ替え引っ替えよく聴いていた。ビートルズには「ユー・ノウ・マイ・ネーム」「アイ・コール・ユア・ネーム」というタイトルにネームがつく楽曲がある。これらの楽曲が、どのような影響を私に与えているのか、わからないが、流れてくると、ふっと立ち止まるように耳を澄ませた。
 なお、「アクロス・ザ・ユニバース」は、ジョン・レノンではなく、ビートルズの曲である。ただ、実質的にはジョンが作詞・作曲をしたといわれている。私は、ジョンの思いが込められた楽曲だととらえているので、この小説では、私の個人的な思い入れを通させてもらった。ご理解いただければ幸いである。

「十一月のスケープゴート」
 この小説は「別れの季節は三月だけとは限らない」(「アラフォー女子の厄災」所収)の続編である。「アラフォー女子の厄災」を出版したとき、ネットで続編を希望する書き込みを読んだ。高校の庶務課という一般的には知られていない職場を舞台にしているのがうれしい、と書かれていた。どうやらその書き込み者も、作品と同じ職場のようだった。最後に続編を希望する、とそっと言葉が添えられていた。
 読者が続編を望んでいる。作者としてはモチベーションが上がる。
 そして出来上ったのが、「十一月のスケープゴート」である。
 かつて映画のパート2は、面白くない、というのが定説だった。近年はちがうようだが、この作品がそうなっていないことを祈るばかりである。

 収められた三作品を改めて読み直してみると、奇しくも、どれも季節は晩秋(あるいは初冬)である。
 意識的に設定したものではなく、書かれる小説にいちばんふさわしい季節を選んだだけだ。 
 私の心は、無意識に晩秋(あるいは初冬)にいる、ということなのだろうか。

 本との出会い方が変わってきている。書店(古書店)ばかりが本と出会う場所ではない。ネットもある。
 先日、本を読む環境に特化したブックカフェに足を運んだ。その店の本は、自由に手に取って読める本と、販売用の本に分かれていた。そして、私語は厳禁。美味しい料理と、読書に集中する環境を提供する。筆記用具が用意されていて、話をしたい場合は筆談する。
 筆談ノートをペラペラとめくっていると、「この店は小説中心ですが、私は小説が読めないのでつらい」と書いてあった。
 ブックカフェにくるような読書好きであっても、小説が読めないひとがいる。
 信じられない。ショックだった。

 読書好きで、小説を読めないようなひとにも読める小説を書きたいと願っている。

                              緒 真坂



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