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『糸と魚と川Vol.03』イベントレポート② トークセッション編

2022年3月7日、駅北広場キターレ in 糸魚川にて「外と中、関係人口とローカルプレーヤー・企業・団体との接点をどう作り広げていくか?その先の未来は?」をテーマに2人のゲストをお招きして、第2回となるトークセッションがおこなわれました。

本記事は、前回記事に引き続きトークセッション編の内容をまとめたものです。

前回の記事はこちら。
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https://note.com/ito_sakana_kawa/n/n94b2abb5a16c

◎マニア受けする観光資源が多い糸魚川

山崎:受け入れ側の市町村として、ワーケーションを進めていく中で、課題に感じるところはありますか?

宮路:平成31年6月に上司に「ぜひ会ったほうがいい」と箕浦さんを紹介され、その頃から応援していただいています。全国の自治体を見てきた箕浦さんからは、糸魚川はどのように見えていますか?

箕浦:ワーケーションという特別なものがあるわけでないと思っています。糸魚川市からは魅力的なコンテンツを用意してもらっていて、とても満足感のある企画になるんだろうなっている思いますが、ゆくゆくは何かを用意しなくても自然と人が集まるようになっているのではないでしょうか。では、何のために糸魚川へ来るのか。その目的をデザインしていくことが課題かと思っています。

また課題とは違うかも知れませんが、私は軽井沢からワーケーションの世界に入ったところ、快適なライフスタイル過ぎて、まさに沼ですね。自分が自分らしく過ごせるから、一度入ったら抜けられません。私が総務省を辞めた100ある理由の1つです(笑)

宮路:地方って人口減少など課題を抱えている中、ワーケーションは解決のきっかけになりますよね。その地域課題を深刻に考えずに楽しみながら考えさせてくれるのは、伊藤さんのような人な気がします。

伊藤:私、実はワーケーションって、あまり意識してないんですよ。企業って福利厚生にあまりお金が掛けられないので、企業研修などしか手段がないですよね。でも、個人に訴えかけるには、糸魚川はフォッサマグナやヒスイなどマニア受けのものが多くて、一部の層にしか刺さらないんですよ。近年では『Digging糸魚川』というお試しに糸魚川に来ていただく企画をおこなっていますが、糸魚川のマニアックな沼にはまりたい人に、ぜひ参加していただきたいです。

山崎:糸魚川は巨大観光地と勝負するのは違うと思うんですよね。勝負すべきは同じ規模の地方自治体なんです。

伊藤:市のプログラムとは別なんですけど、5組くらいの親子が糸魚川へ遊びに来たんです。その中に石の図鑑好きの男の子がいて、3時間くらい海で石を拾っていたんです。他にも糸魚川は化石が出るんですよ。新種を最初に見つけた人は、その化石に名前が付けられるので、毎年来る人もいるんですよね。その話を糸魚川に来た高校生に話したら目をキラキラさせていました。

宮路:炎天下の中、5時間くらいハンマー振っている子もいましたね。手に取った物が化石だって分かったときの感動がすごいんですよ。マニアックですが、そういう体験が糸魚川の強みかもしれませんね。

伊藤:糸魚川は標高3千メートルの山から海抜1000メートルまで一気に下ることで、すごく生物の多様性があって、世界にも類を見ない貴重な土地なんですよね。日本のコスタリカと言われているくらいなんです。

山崎:普段糸魚川にいない方から、そのように言われると「頑張ろう」って気持ちが強くなりますね。

伊藤:糸魚川には世界初発見の石が2つもあって、それが博物館に並んでいるんですよ。地方の博物館で、そんなことはまずないですからね。

山崎:石が好きな人って本当に石が好きなんですよね。

宮路:海が荒れていてもヒスイを取りに行こうとする人がいるので、市としては止めるんですが、糸魚川に来たからには、どうしてもヒスイを拾って帰りたいみたいなんですよね。

伊藤:昨日の海は荒れていたんで、そういう人にとっては最高の環境でしたね。

宮路:糸魚川の魚の身が締まって美味しいのも海が荒れてくれるおかげかもしれませんね。

箕浦:波で毎日筋トレしてるわけですね(笑)

◎受け入れ側と訪れる側のミスマッチを埋める大切さ

山崎:糸魚川市は親子ワーケーションや防災ワーケーションを進めていますが、自治体として課題感はありますか?

宮路:観光目線の話をすると、1泊2日の旅行を基本として考えられてきたことが問題だったかもしれませんね。箕浦さんや渋谷さんなど、各地を巡る中で「その土地に長く滞在したい」って感じることもあるかと思いますが、受け入れ側はその土地の豪華な食事をたくさん食べてもらいたいと思う一方で、滞在する側にとって量が多すぎる気がするんです。同じ場所に長く滞在してもらうなら、1回の食事の量を少なくしたほうがいいのではないかって思うんですよね。
   
伊藤:1泊2日で豪華な食事を食べると、次の日にお腹がいっぱいで仕事が手に付かなくなってしまうので、今後は少なくして「糸魚川の日常の食事サイズにしたらどうか」と提案してますね。

箕浦:受け入れ側と訪れる側の温度差がありますよね。観光面でも同じだと思うんですよ。市内の人がオススメしたいと思っていることには目もくれずに、思いも寄らないところに興味を持ってくれたりしますからね。そのミスマッチを埋めていくところが大変だけれど、面白いんじゃないですかね?

山崎:最近の話だと、こちらとしてはカニなどの新鮮な魚介類を食べてもらいたいと思っていたんですが、後から聞いたら地元のソウルフードになっているコロッケが1番印象残ったって言われたんですよ。

箕浦:僕もこの近くにあるローカルな『あおい食堂』っていう定食屋のカレーが好きですからね。

伊藤:確かにワーケーションって、旅行と日常の中間にあるので、ワーケーションに来る人には程良い距離感で友達や家族に対する接し方のような感じが良いんですよね。やっぱり日常を求めているんですよ。

箕浦:先日、昼に糸魚川で打ち合わせをした後、次の仕事まで1時間くらい時間が空いたんです。そうしたら「時間が来るまで好きにしてて良いですよ」って、ほったらかしにされたのが良かったですね。この時間が本当に大切で「自分でその地域をどう過ごすのか」を決めることが大事なんです。プログラムをびっしりと詰められても、楽しいかもしれませんが後から思い出に残るものは少ないんですよね。

伊藤:自分から情報を探しに行くことが大切なんですよね。

箕浦:さっきの食事の量の話になりますが、ベースとなる量は少なくして、オプションで追加出来るようにすればミスマッチも減っていくかもしれませんね。

渋谷:伊藤さんのようにコーディネーターとして『聞いたら教えてくれる人』くらいが良いんでしょうね。選択肢があるからこそ自分で選んで、その土地を楽しめる。ネットで検索しても見つからない地元の人だけが知っている良さを教えてもらえるけれど、おせっかいすぎないことが大事なんでしょうね。

山崎:今日このイベントを見ている人は箕浦さんオススメの『あおい食堂』のカレーが食べたくなったと思いますよ。

箕浦:最初は何の変哲もない食堂のカレーだと思ったんですよ。それが食堂のカレーとしての完成度が凄いんですよね。豚バラ肉の油とのマッチングが…って何の話をさせているんですか(笑)でも、すごく美味しいので糸魚川に来た際には、ぜひお立ち寄りください。

◎糸魚川での妄想

山崎:それでは最後に毎回恒例の糸魚川での妄想を伊藤さんと箕浦さんのお二人からお聞かせいただけたらと思います。

伊藤:妄想というよりも本気の願望なんですが、早く糸魚川に遊びに来てくれた人とマスクを取って顔を合わせて、お酒を浴びるほど飲みたいですね。

山崎:同感です。箕浦さんは、いかがですか?

箕浦:面白い地域のプロジェクトやコミュニティなど、関係性のコアとなるものが糸魚川にはたくさんありますよね。今回も親子ワーケーションとして糸魚川に来てくれた人がいましたが、ただ「ワーケーション楽しかったね」で終わってはもったいないです。これからはリモートなど様々な繋がり方を通じて、どんどん糸魚川のコアなファンのコミュニティが広がっていくと良いですよね。
人口減少はもはや危機ではなく、当たり前に起こることですが、そこに人間の行き来がなくなれば、家と同じで廃れていってしまうんですよ。そんな中、数年後には「糸魚川は関係人口だけで5000万人くらいいるよね」って言われるくらいになってほしいと思っています。そして、これまでに山崎さんや宮路さんのように熱心に取り組んでいる方が糸魚川にはいるので、他の地域にはない理想的な形が実現する未来を妄想しています。

山崎:ありがとうございます。これからも人の繋がりを大切にしていきたいですし、これから伊藤さんもキターレで新しい取り組みをしていただきたいですね。

伊藤:そうですね、どんどん糸魚川の面白い人達との繋がりを作っていこうと思います。

と締めくくり、今回のトークセッションは終わりを迎えました。

『糸と魚と川Vol.04イベントレポート① ~「your turn」 様々なターンの形とこれからのターンを考える~』のレポートはこちらから。
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https://note.com/ito_sakana_kawa/n/n90de3ca4f9a1

今回のイベントのアーカイブ動画をの様子を見るならこららから。
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https://www.youtube.com/watch?v=8oXq5k2ZSn4