マニュアルを教えないほうが新人が伸びる理由:当事者意識を育てる育成の秘訣
『自走するチームの作り方』著者で、チームビルディングコンサルタントの伊藤じんせいです。
部下とのコミュニケーションに困っている上司の方に役立つコラムを日々、投稿しています。
マニュアルは万能ではない
新人教育におけるマニュアルの活用は、本来、業務を円滑に覚えてもらうためのツールとして活用されています。
しかし、マニュアルを守ることが目的になってしまい、本来の業務の目的を忘れてしまうことがあります。
例えば、マニュアルに書かれた通りに対応しようとするあまり、お客様からのマニュアルにない依頼に柔軟に対応できず、クレームが増えることもあります。
このように、はじめからマニュアルを渡すと、新人の「考える力」を奪い、逆に成長を阻害してしまう危険性があるのです。
しかし、多くの会社では、柔軟な対応について教育するのではなく、失敗した内容をマニュアルに追加して対応することがあります。
失敗するたびにその失敗内容をマニュアルに追加するとマニュアルは辞典のような分厚さになっていきます。
まるで「失敗辞典」のようにマニュアルがなってしまうのです。
この「失敗辞典マニュアル」には以下のような問題があります:
読むだけで疲れてしまう
内容が増えすぎて、新人が目を通すのに時間がかかり、結果的に読む気を失ってしまうことがあります。考える余地がない
「マニュアル通りにやればいい」という受動的な態度を生み出し、自分で考える力を育てる機会を奪います。イレギュラー対応ができない
マニュアルに書かれていない問題に直面すると、「どうすれば良いかわからない」と手が止まる場面が増えます。
成長を促す「後出しロールプレイ」とは?
では、マニュアルでなければ、どのようにして新入社員を育てれば良いのでしょうか?
その答えの一つが、「後出しロールプレイ」という育成手法です。
後出しロールプレイとは、最初から正解を教えずに、新人に課題やシチュエーションをまずロールプレイで体験させ、次回の対策を自分で考えさせたうえで、先輩が補足のフィードバックを行う方法です。
この方法では、答えを与えるのではなく、自分で考えさせるプロセスを重視します。
後出しロールプレイの進め方
課題を体験させる
実際の業務に近いロールプレイを行い、新人に状況を体験させます。自分で答えを考えさせる
「どうすれば良かったと思う?」と問いかけ、新人が自分なりの答えを導き出す時間を与えます。フィードバックを与える
最後に、「こうすればもっと良くなる」という具体的なアドバイスを伝えます。
後出しロールプレイの効果
この手法を用いると、以下のような効果が期待できます:
当事者意識の向上
自分で考えた答えに対して責任感を持ちやすくなります。応用力の強化
自分で導き出した解決策は、他の場面でも活用しやすい知識として定着します。失敗を恐れない文化の醸成
「失敗しても大丈夫」という心理的安全性が、新人の挑戦を後押しします。
私たちの会社でも、この方法を用いてテレアポスタッフを育成しました。その結果、「失敗辞典マニュアル」と「後出しロールプレイ」の違いがはっきりと見えてきました。
失敗辞典マニュアルのアプローチ
最初は、スタッフが失敗するたびに「こうすれば良い」と答えを与え、その内容をマニュアルに追加していました。しかし、この方法ではスタッフが「マニュアルに書いていないことはできない」と言い訳をするようになり、成長が停滞しました。
後出しロールプレイのアプローチ
別のチームでは、ロールプレイを行い、「次回はどうすれば良いと思う?」と質問しました。新人が自分なりに考え、試行錯誤する機会を与えた結果、大きな成果を上げることができました。
このチームは3人で1億7000万円の売上を7ヶ月で達成。一方、マニュアルに頼ったチームは成果が出ず解散となりました。
後出しロールプレイのポイント
後出しロールプレイを効果的に導入するには、以下のポイントを押さえることが大切です:
正解をすぐに教えない
最初に答えを与えず、新人自身に考えさせることで、自発的な学びを促します。失敗を歓迎する文化を作る
「失敗しても良い」という心理的安全性を確保することで、新人は挑戦を恐れなくなります。具体的なフィードバックを丁寧に行う
最後に的確なフィードバックを提供することで、体験が成功体験として定着します。
新人教育の目的は、失敗を完全になくすことではありません。
むしろ、失敗を通じて学び、考える力を養うことが重要です。
「マニュアル」に頼るのではなく、「ロールプレイ」を取り入れることで、社員は自立心と応用力を育みます。
結果として、組織全体のパフォーマンスも向上するでしょう。
ぜひ、あなたの職場でも「後出しロールプレイ」を試してみてください!
きっと、新しい成果と社員の成長を実感できるはずです。
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