夏のはじまりに
「線路みたい!」
きみがそう言ったのは、どこかの家の柵の影。
散歩の途中。
陽射しに照らされた道の上に、たくさんの影が続いていて。
家々の柵の影。
ガードレールの影。
フェンスの影。
こんな、なんでもない影を。
こんな、どこにでもあるものを。
きみは
線路みたい!って言って、笑う。
はじけるような笑顔で。
こんなに楽しいことはない!って顔をして。
パタパタパタっと影の上を駆けていく。
14.5センチ。
かわいらしくて元気いっぱいなその足で。
ちいさな背中が、踊るように跳ねて。
転ばないでねと、笑って後ろを追いかけながら。
そのすがたを、笑顔を、いつまでも憶えていたいと、私は思う。
夏のはじまり。
きみと歩いた道の途中の、まばゆい思い出。
読んでいただきありがとうございます◎ 日々のなかに、やさしさと明るさを、さがしていきたいです。