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アイドルタイムいとぶろ

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いとうくんの楽しい日々2
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#BL小説

タイムパラドクス・ゴースト・ライターフォーエバー

タイムパラドクス・ゴースト・ライターフォーエバー

 2020年8月3日
 週間少年ジャンプ2020年35号、発売。『タイムパラドクスゴーストライター』11話掲載。

 2020年8月8日
 『アクタージュ』原作者・マツヤタツキ氏、逮捕。インターネットを中心に事件はすぐに世界中を駆け巡る。
 翌々日、事件の重さを受け、週間少年ジャンプ編集部は『アクタージュ』連載終了を発表。

 2020年8月11日
 週間少年ジャンプ2020年36・37号、発売。

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タイムパラドクス・ゴースト・ライター

タイムパラドクス・ゴースト・ライター

 少年が笑った。隅で。場所はなんてことのない教室。体育を終えた男子たちがグラウンドの土と自分の汗で汚れた体操着を脱ぎ、かわりに首元が黄ばんだカッターシャツに着替えていた。あちこちでシーブリーズの噴射音が鳴る。それでも教室中に充満する、干からびた野球ボールの臭いは濃いままだ。
 窓際の一番後ろの席を取り囲むようにして、男子たちがゲーム機のメモリーカードをやり取りしている。
「これ?」
 男子Aが、押

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霊、霊、書く

霊、霊、書く

「入っていいですか?」
「いいですよ」
 男が云う。
 僕は小さな声でお邪魔します、と呟いて、靴を脱ぐ。ひた、と、冷たい感触が靴下越しに伝わってくる。両隣をアパートに挟まれているせいか、家のなかは人工的なまでに薄暗かった。今どき珍しい平屋というのもあって、なんだろう、ここだけ死んだ場所みたいな、そんな感覚を覚える。
 すぐ近くにある谷中霊園の気配が、そんな雰囲気を助長させているのかもしれない。ちょ

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俺はまだ子供がいい

俺はまだ子供がいい

 小五くらいまでの俺はとても人間じゃなかった。いや、もちろん、一応、生きてはいた。親がいて、帰る家があって、毎日飯食って、勉強して、たまに遊んで。そういう暮らしはあった。
 でも、価値なんて何もないような子供だった。いてもいなくても変わんないような、てきとーな存在だった。家やクラスに居場所がないわけじゃないが、別に俺じゃないといけないってわけでもなかった。誰でも変わらない。例えば、俺がある日突然転

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