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筋のよい進め方を考えよう

もうすぐ子供は夏休みですね。旅行やプールやお祭りなど、各種の楽しいイベントを想像して子どもたちはわくわくしているのではないでしょうか。しかし、そこにひたひたとついてくるのは夏休みの宿題です。夏休みの最後の数日に慌てて頑張るのは、もはや日本の風物詩とも言えるほど、多くの方が生々しくイメージできるのではないでしょうか。その苦労を理解している親は、なんとか早い段階から進めるように子供に促すのですが、それでもうまくいかないものです。さて、どうしたものでしょう。
 

進め方の重要性

実行を続けて、しっかりやりきるのに必要なものの一つはモチベーションです。モチベーション維持の方法は世の中でいろいろ語られており、明確なゴール設定やマイルストーンを描くことが代表的です。弊社のコラムでも途中段階での成果の見える化を紹介しました("良い習慣"参照)。しかし、子供を強く動機付けて、自発的に夏休みの宿題をやるように仕向けるのは一朝一夕でできることではなさそうです。

そこで必要なのは進め方です。計画化とは少し異なります。計画化とは、ドリルを1日2ページずつ実施するなどになります。もう少し詳しく、朝の9時から10時までに2ページ実施すると計画されているかもしれません。一方、進め方というのは、そこに場の想定を含めています。例えば、集中力を乱さないように宿題専用の部屋を作る、その時間は親も一緒にデスクワークをする、どの宿題をするかはその場のくじびきで決めてワクワク感を醸成する、などです。子供を信頼することも大事ではありますが、やってくれるはずという妙な過信でスタートを切るだけに留まり、それ以上の手を打たなければ、今年も痛い目をみるかもしれません。

これは夏休みの宿題だけでなく、皆さんの業務にも当てはまるのではないでしょうか。企画や設計の新しいアイデアに対し、実現方法や進め方の吟味が甘いままにトライしてしまい、段取りの悪さによる会議の炎上や、途中で計画自体があいまいになっていくようなケースがそれに当たります。「こうしておけばよかった」を終わった後に考えるのではなく、始める前にいくつも考え、いけそうな進め方を選ぶべきなのです。
 

一つの進め方に固執しない

我々が支援する業務改革でも、ここは非常に重要です。業務改革は一義的な進め方がありませんし、失敗をなかったことにしてやり直すというのも難しいです。また、改革のビジョン、改革を推し進める方法論など、進め方そのものがいくつものパターンを持ちえます。加えて、進め方を選ぶ際には、活動メンバーの動機付けができるのか、企業風土にあっているのか、いつ効果を出すのか、既存事業への影響はどの程度かなど、多面的に考える必要があります。それ故に、進め方の設定はロジカルな検討ステップを踏むだけではむしろ不十分で、進め方の仮説をいくつか考え出してから、本当にそれでいいのかの仮説検証を繰り返すことで、より適した進め方を見出せるのです。そのように作り出した仮説にも、筋のよい仮説とそうでない仮説があります。もし筋が悪い仮説にハマると、改革が遠回りをしてしまうことや、最悪の場合には改革の頓挫もありえます。いくつもの案を出し、その市場・企業・社員に適したやり方をシミュレーションする必要があるのです。始める前や改革途中にも、進め方を何度もブラッシュアップすることが成功のキーとなりえます。
 

考えを捨てることで見えるもの

仮説の見直しが大事と書きましたが、実は、コンサルタントでも仮説の見直しを怠ってしまう罠があります。外的要因は当然いくつもありますが、ここでは内的要因の一つとして、仮説を捨てられないことを取り上げます。最初に設定した仮説も、成功体験などの経験を踏まえて一生懸命考え出したなど、それなりのバックグラウンドがあるものであり、自分ではじき出した解の一つです。場合によっては、資料作成をしながら作ることもあるでしょう。そうなると、なおさら完成度の高い仮説のように自らが感じてしまいます。だからこそ、一度その仮説を捨てる必要があるのです。想いを含みすぎた仮説はすでに客観性を損ないはじめているからです。特に初期仮説は想いが入り込みやすいので注意です。その想いに囚われずに、仮説を一度捨てて、改めて考え直すと、意外と別案が出てくるものです。その結果、思考のしがらみが取り除かれ、一段と広い視野・高い視座で考えられるものです。
 

考えを捨てるためのヒント

私は初案の完成度向上に手をかけすぎないことを心がけています。ちゃんと説明できるようにしようとするうちに、手に余る資料になり、捨てにくくなるからです。オススメは、人に伝えるつもりで考えを手書きで可視化することです。仮説の矛盾や考慮すべきことの取りこぼしが無いかを確認します。手書きで一度吐き出すと、粗が見えるのと同時に、意外と捨てられるようになるものです。こうすることで、「仮説をブラッシュアップするために資料化する→手をかけるほど仮説が捨てられなくなる→仮説のブラッシュアップを阻む」というパラドックスを防ぐことができます。一度、お試しください。
 

シニアマネージャー 横山 英祐