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【せめてもの償い】

授業中つらつらとノートの空白に詩を書いたり、夏休みの宿題ではいち早く作文を書いたりしていた。
想いがこぼれそうになるから、こぼれ落ちて蒸発する前につなぎ留めておく。
いつも怖かったからだ。
私の想いが考えが消えてなくなると、私まで薄く透けていきそうで。


そしていつも、紙は私を批判しなかった。
クラスの女子や別れた彼氏みたいに、気ままに揺らめいたりしない。
気分や機嫌で私を傷つけたりしない。
紙はいつでも真っ白で、ピシッとそこに広がっている。
「いくらでもどうぞ。」
泣きながら吐露する日もあった。

        ∇∇∇

noteを初めて二ヶ月と少し。
テキストボタンをタップすると、パッと真っ白な紙が広がる。
私の指先は想いを紡ぎ出す。一生言えないだろうと決め込んでいたことが、痛みを伴って震える指先から溶け出してゆく。

初めて、その紙が日光にさらされた日を忘れることはないだろう。
誰も見たくないような、黒く渦巻く私や、ねっとりとへばりつく私や、つんざく様に尖る私。
ずっと奥深くに閉じこもっていた私を日光にさらした日。noteを始めた日。

        ∇∇∇

意外だったのは、その紙に寄せ書きされた感想だった。
「透明」「淋しい」「穏やか」「多くを語らない」「静か」「距離感」

飼い慣らせない程に激しく燃えるこの火を、あんなにどろどろと這う魔物を書いたはずだったのに。
意外な言葉が私に降り積もる。


自分は自分が思う自分じゃない。
それが私の見た真実で、心地よい事実だった。
嬉しかった。
自分が何者か知れたようで嬉しかった。

まだよちよち歩きのこの文章を、私は大きく育ててみたい。
透明色が、深く濃く揺らめくのを見てみたい。

書き続けてみる。
出し続けてみる。
それが、これまで閉じ込めてきた自分自身へのせめてもの償いだからだ。



ぇえ…! 最後まで読んでくれたんですか! あれまぁ! ありがとうございます!