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花束。

8月1日。

バイト帰りの電車でのこと。


私は人が少ない車両の1番端の席に座った。
電車から見る景色に見惚れながら、イヤホンをつけてお気に入りのプレイリストを流していた。


バイトに行く時に見た電車からの景色は明るくて、人通りが多かったのにこの時間帯は人が少なくて車が多い。
街の明かりがたくさんついていた。

私が電車乗ってから3駅過ぎた頃。

私の隣に、多分、何個か年上のサラリーマンが座った。

ふと横を見ると彼のスマホの画面が私の方を向いていてた。


ロック画面に映るアルバムのジャケット写真。


彼の画面にはback numberのアルバムが映っていた。流れていた曲の名前は、


        「花束」。

私にとっては懐かしい曲名だった。 
密かに想いを寄せていたいつかの彼を思い出す1曲。

サラリーマンの彼は、私のすぐ隣に座っていたから顔は見えなかったけれど少しだけ指が動いていて、曲に合わせてリズムを取っているようだった。私も好きな曲だったので少し親近感を覚えて心の中で微笑んで、視線を外の景色へと戻した。


そのとき私のイヤホンからは
GReeeeNの「君想い」が流れていた。

いつも君が笑ってるから 
その笑顔が胸にあるから
繰り返しの日々を乗り越えて行けるのは 
そう 君が居るから

GReeeeN 「君想い」

私は「花束」を聴いていた彼を見て、
「好きな人のことを想っているんだろうな」と微笑んだけれど、その後すぐに私も彼と同じだということに気づいた。「君想い」を聴きながらあの人を歌詞に重ね合わせていた。想っていた。

顔すら見たことないけれど、偶々隣に座った仕事帰りであろう彼もバイト帰りの私も心の中で自分にしかわからない声で誰かを想っていた。もしかすると、吊り革を握って私の前に立っているヘッドフォンをした彼女も誰かを想っているのかもしれない。

このガラガラの車両に揺られている私以外の誰かも心の中で誰かを想いながら音楽を聴いたり、景色を見たりしているかもしれないと思うと、不思議と幸せな気持ちになった。


きっと、
誰かから花束を貰ったら、
大切な人から貰ったら、
こんな風に心から温かくなる、
そんな気持ちなのだろうと思った。



最寄りの駅に着く。
席を立つときに彼の手元をチラッと見ると、
まだ、「花束」が流れていた。
とてもお気に入りの曲なのだろう。



電車を降りてから私も久しぶりに聴きたくなってプレイリストから探し、再生ボタンを押した。

 君とならどんな朝も夜も夕方だって
笑い合って生きていけるんじゃないかと
思うんだよ

back number 「花束」



家族、友人、好きな人、恋人、推し、そんな自分にとって大切な人の幸せを想って過ごす、そういう帰り道が誰にでも1度は、きっとあるのだろうと思う。



そして、多分、誰かを想いながら聴く音楽も見る景色も歩く帰り道も全部あったかいもので出来ているんだろうなと思う。

きっと、誰かを想うことが人を救ってるんだろうな。私も気付かないうちに何度も救われて来たんだろうな。
そんな気持ちになった。



現実に追われながら、日々生きている
誰かに、大切な人に、そして、私自身にも
こんな幸せな帰り道がまたあったらいいなと思う。






それではまた。

百。




p.s.誰かを想って聴いた曲、コメントしてくれたら嬉しいです☺️

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