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観察力について考える

「観察力の鍛え方」と言う本を囲んでの対話会がありました。
私はまだ以下のリンクの要約しか読んでいませんが、良い観察力と悪い観察力はどう違うのかとか、観察力を高めるには「愛」を持って見ることが必要であると言うことが書かれているようです。

その場で出た話を聞きながら、この本で書かれていることとは別に、ぼんやりと4つぐらいの「観察力」が浮かびました。
それぞれを少し整理しつつ、まとめてみようと思います。

レベル1(私感的・バイアスで見る)

物事を観察する最初の段階は「自分(私)の視点で見る」と言うことだと思います。
誰もが自分の生まれ育った背景やこれまでの経験を通じて作られた色眼鏡で観察をしています。これはほとんど無意識におこなっているものではないでしょうか。
場合によっては、なんらかの評価や判断をしながら見ているかもしれません。

客観的に物事を見ているつもりでも、それはその人の考えている客観であり、なんらかのバイアスがそこに働いています。
人間は物事見ながら、同時に頭の中で情報を補ったり足したりしてしまっています。これは経験からくる思い込みがそうさせています。そして、物事を見ているようで見逃してしまわせる場合もあるでしょう。

自分にどのようなバイアスが働く傾向があるのかを知らないでいると、観察をしていても「わかった気になる」状態で止まってしまい、そこより先に進むことができません。全部見る前に全体を見た気になってしまっているのです。

レベル2(客観的・ありのままに見る)

自分自身のバイアスに気づき、それを外して物事をありのままに観察すると言うのが次のレベルだと思います。
これは簡単ではないように感じられますが、自分がわかった気になっていることに対して敢えて批判的に疑ってみる、「待てよ、本当にそうなのか?」と考えてみることで物事をありのままにみるきっかけを作ることはできるのではないでしょうか。

見えているもの、聞こえているものをまるで記録フィルムのように、そのままにみる。これは写生をしている感覚かもしれませんね。
認知行動の実験で、自分がいつも目にしているもの(例えば腕時計のようなもの)を現物を見ないでスケッチしてみて、後で実物を見ると自分が見落としているものがあることに気づきます。そこから現物を見ながらスケッチをすると自分が見落とす傾向があるものが理解できます。ものを見る時の癖のようなものを意識できたらそれを外して物事を見ることも可能になります。

また、「こうなっているはずだ」という思いを横に置いてあるがままを観察してそのまま受け取ったものは他の人とも共有できる客観的な情報になります。客観的な情報は「そうは見えない」にはならないので、ニュートラルに受け取ってもらえます。

レベル3(主体的・浸って見る)

観察をするときに、外から見ているだけではわからないこともありますよね。中に入ってどっぷり浸かってみると、そこから見えるものが大きく違うことに気付かされることも結構あります。

相手の立場になってみて初めて、そこから周りが自分達をどのようにみているのかを知ることにつながったり、どのような思いや気持ちから行動が起きていたのかを知ることができます。これがレベル3かなと思います。

このとき、自分自身の価値観を横に置いて批判的にならないことが重要です。つまり、レベル2の状態のまま別の世界に入ってゆく感じです。

このレベル3は相手の気持ちになると言うとはちょっと違います。相手の置かれた立場と同じ状況になって、同じものを同じように見てみる、と言うことです。言葉を変えると寄り添って一緒に見る、と言うことですね。

レベル4(客体的・世界観を見る)

最終的には、自分も相手も含めた世界全体を一歩離れたところから見るレベルがあるでしょう。
そこでは自分を横に置くのではなく、自分を含めた世界全体を見て、自分が他者にどのように影響を与えているか、逆に自分が周りからどのような影響を受けているのか、他の人たちはお互いにあるいは外部環境からどのような影響を受け、それがどのように行動やその結果に影響してゆくのか、を全体的にみることになります。

量子力学的では、観察者もシステムの一部であり、観察していることによって影響を与えていると言います。
それと同じように、自分を含めた世界を感じ、そこから影響を受けている自分と他の人たちのダイナミックな関係を認識してみると言うのがこのレベルだと思います。

組織開発の文脈では、プロセス・コンサルテーションがこのレベル4の観察力が求められます。具体的には、クライアントに外から関わるのでもなければ、中に入り込んで一緒に活動するのでもなく、同じ状況の中でいながらも、その中で異質な存在である自分の目から見た状況を共有することで影響を与えてゆく関わり方です。Use of Selfとも言われます。
言わずもがなですが、そこでの自分が何から影響を受けてその見方になっているかを伝えるとともに、その見方を伝えることが状況にどのような影響を与えることになるのかについても意識的である必要があります。

描かれている世界に入ってみると別のものが見えてきます

さて、観察力にはレベルがあるのではないかという話をして来ましたが、必ずしもレベル4で観察するのがゴールであるとか、そのレベルで常に見ないといけないと言うことはないでしょう。
しかし、今自分がどのレベルで観察をしているのかを知っていると言うのが大切であり、それがわかったらレベルをシフトしてみることで発見があるかもしれません。レベルを上げてみるだけでなくレベルを下げてみることでわかることもあるかと思います。

観察力は、絵画の鑑賞をやると鍛えられると思います。
パッと絵を見たときに自分にクローズアップして見えるもの、去来するもの、考えとか思いがレベル1だとすると、何が描かれているのかを目を凝らしてじっくりと見てゆくのがレベル2でしょう。
そこからさらに、絵画の世界に入り込んで描かれている風景を感じたり、登場人物の感情を探ったりするのがレベル3ですね。絵に描かれている解説とか表題、描かれた時代背景を理解した上で見ている感じです。
そして、レベル4はそれらの絵を見ている自分と周りの人を含めた展覧会の中の人間模様を観察したり想像している感じかもしれませんね。

このような観察レベルのシフトは、絵画でなくても、音楽や映画、小説でも可能かもしれません。
それができると、作品の奥深さを何度も味わうこともできるのではないでしょうか。
そして、それを可能にするのは、対象に対する興味であり、好奇心であり、あるいは、愛なのかもしれないですね。

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