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これから埴谷雄高の『死霊』を読む人へ

はじめに

近年、埴谷雄高について知りたい、読んでみたいという人が増えているような気がします。(肌感覚)
そこで、埴谷の代表作『死霊』を読もうとしている方に、その文学世界をより味わってもらうため、ちょっとしたアドバイスを書いてみたいと思います。

難解だと思ってかからなくていい

『死霊』は、読み方によっては、難解な本かもしれません。
でも、シンプルに読書を楽しみたいなら、そう気負って読む必要はありません。
『死霊』は小説です。面白いキャラクターや面白い挿話によって構成されています。
初読は、むしろそういった「推しキャラクター」や「推しポイント」を自分なりに探してみるのはどうでしょうか。

用語を軽く押さえてみる

『死霊』にはいくつかの固有用語があります。
たとえば、

「自同律の不快」
「虚体」
「存在の革命」

といったものです。
こういったいくつかの観念を中心に物語が展開していくので、見慣れない言葉がでてきたら少し立ち止まってチェックすると、後の話にスッと入りやすいと思います。
といっても、やはり初読では「なんとなく」でもいいと思います。
まったりと『死霊』の世界に親しんでいきましょう。

長い対話は、一気に読んでみる

『死霊』は全九章の小説です。
各章に、山場となる長大な対話があります。
おすすめするのは、そういった対話の場面を、この小説の「サビ」として一気に通しで読んでみることです。
少しずつ理解しながらじっくり読むのも楽しいですが、そうすると複雑なやりとりのところもあるので、少し息が続かなくなってしまうかもしれません。
シェイクスピアや、ドストエフスキーの小説のように、エンターテイメントとして、観念的なファンタジックな対話を読むと、『死霊』が好きになるでしょう。

「もののざわめき」に耳を傾ける

『死霊』には、「もののざわめき」や「存在の囁き」が神秘的に、くりかえし描かれます。まるでドローンミュージックのように、存在の発する声は作中を通底しています。
時には。まるで百鬼夜行のように、魑魅魍魎がその気配をにわかにうかがわせます。
源氏物語が「もののあはれ」の文学と呼ばれるように、『死霊』は「もののざわめき」の文学なのです。
重厚ともいえる観念的なテーマの間にただよう、存在のかすかな感覚は、文章の細部に宿っています。
『死霊』の世界に慣れてきたら、その幻想的な文学の交響曲をじっくり味読してみてください。

終わりに

どうでしたでしょうか。参考になる項目があったら幸いです。
『死霊』を読んで、その雰囲気が気に入ったら、埴谷雄高の他の著作や『死霊』について書かれた本に手を伸ばすのもいいと思います。
願わくば、『死霊』が人生で何度も読み返す大切な一冊になれば。
読んでいただきありがとうございました。


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