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メタバース入門Ⅶ(代表的なメタバースサービスと始め方(4) ブロックチェーンベースのメタバースサービス)

【メタバース入門Ⅵ】に続き、「6.代表的なメタバースサービスと始め方(4) ブロックチェーンベースのメタバースサービス」から解説します。


6.代表的なメタバースサービスと始め方

(4) ブロックチェーンベースのメタバースサービス

 最近、メタバースの実現には、ブロックチェーンが必要だという意見をよく聞きます。 ブロックチェーンとは、取引履歴を暗号技術で1本の鎖のようにつなげ、多数のサーバーで共有することによって改ざんを困難にする技術です。

 また、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、このブロックチェーン技術を用いてデジタル資産が本物であることを証明する仕組みです。

  これまで、デジタルデータは簡単に複製ができることから、価値のある資産として扱うことが難しかったのですが、このNFTの仕組みを利用することにより、ゲーム内のキャラクターやアイテム、バーチャル空間の土地などのデジタル資産に固有の価値を持たせ、安心して取引をすることができるようになりました。

NFTの仕組み

 こうして、メタバース内の土地やアイテム、アバターなどのデジタル資産をNFT化することによって、仮想通貨やリアルマネーを使ってこれらのデジタル資産を売買できる環境が整備されることになります。
 また、NFT化されたデジタル資産は、メタバースの外部でも固有の価値を証明できるため、異なるメタバース間でアイテムやアバターを相互利用したり、メタバース外の現実世界で取引を行ったりすることも可能となります。

  メタバース内でユーザーが作成したデジタル資産などの取引が可能となることにより、メタバース内での経済活動が活発になり、多くの企業や個人の参加を呼び込むことができます。
 また、メタバース内の土地などを売ることにより、メタバースの運営者も収益を上げることでき、より安定したメタバースの維持・運営が可能となります。

 一方、米国の最大手オンラインゲーム配信プラットフォームのSteamは、2021年10月に、仮想通貨やNFTを発行・交換するブロックチェーンをベースにしたゲームの配信を禁止しました。
 これは、NFTブームが過熱して、ゲーム内のデジタル資産の価格が高騰し、NFTの投機的な側面だけに着目した悪質な事業者が現れてきたことを懸念したものと考えられます。

 ブロックチェーンベースのメタバースサービスやブロックチェーンゲームを提供している会社には、The SandboxのAnimoca Brands(香港)Enjin CraftのEnjin(シンガポール)Axie InfinityのSky Mavis(ベトナム)などアジア系の企業が多い印象です。
 他方、日本企業は、一部出資などで関わっている企業はあるものの、あまり目立ってはいません。
 お金を稼げるゲーム(Play-to-Earn)についての日本国内の規制などクリアすべき課題はありますが、ゲームやアニメキャラクターなどは日本が強い分野なので、今後のこの分野における日本企業の積極的な取組が期待されます。

① The Sandbox

The Sandboxは、仮想通貨のイーサリアムを利用したブロックチェーンベースの3Dゲームです。

 The Sandboxの世界は、ボクセルアートと呼ばれる小さな立方体を組み合わせたもので構成されており、仮想空間上の土地(LAND)を購入又はレンタルすることで、オリジナルのアイテム、キャラクターや3Dゲームを作成することができる「マインクラフト」に似たゲームとなっています。

The Sandbox

 自分が作成した3Dゲームは、公開ギャラリーにアップロードして、他のユーザーにも遊んでもらうことができます。
 また、土地、アイテム、キャラクターなどゲーム内のあらゆるデジタル資産がNFT化されており、公式サイトや外部のマーケットプレイス上で売買できることが特徴です。
 さらに、こうした売買に使える仮想通貨として「SAND」が発行されています。 

 The Sandboxは、元々2012年にリリースされたPC及びスマートフォン用のゲームでしたが、2018年に香港のAnimoca Brandsに買収され、ブロックチェーンベースの3Dゲームに作り替えられました。
 Animoca Brandsは、香港発のゲーム開発会社で、ブロックチェーンゲームのAxie InfinityやNFTマーケットプレイスのOpenSeaにも出資する世界で最も活動的なブロックチェーンビジネス企業の一つです。

  The Sandboxは、2021年11月にアルファ版を発表し、2022年中に正式版のリリースが予定されています。

 The Sandboxは、日本企業との関りも大きく、2019年にスクウェア・エニックスが出資しているほか、2021年11月には、ソフトバンクのVision Fund 2などが約105億円(9,300万ドル)の出資を決定しました。
 また、マネックスグループ子会社のコインチェックは、2020年にThe Sandboxとパートナーシップ契約を締結し、同ゲーム内の土地(LAND)を販売しています。
 さらに、コインチェックは、同社が保有するThe Sandbox内の土地に、近未来都市「Oasis TOKYO」を制作するプロジェクトを開始しています。

  現在、LANDの価格は急激に高騰して、1区画100万円程度で取引され、米国の有名ラッパーのLANDの隣接地は、約5000万円で落札されました。

The Sandboxの全体マップ

 2022年2月現在、アルファ版の公開は終わってしまったので、ゲームはプレイできませんが、3Dゲームを自作できるGame Maker、アイテム、キャラクター及び建築物のボクセルアートを自分で作成できるVoxEditアイテムやキャラクターを売買できるマーケットプレイスは使えるようです。

 The Sandboxを始めるには、仮想通貨を保管するウォレットが必要であり、具体的には、以下の手順で進めます。

  1. 仮想通貨ウォレットのMetaMaskをインストールし、登録します。

  2. The Sandbox公式サイト右上の「サインイン」をクリックして、アカウントを作成します。

  3. Game Maker及びVoxEditをダウンロードし、セットアップします。

 詳細は、「Blockchain Game Ch」の「MetaMaskの登録方法」及び「The Sandboxの始め方」をご覧ください。

Coincheck NFT(β版)で販売中のLAND


② Decentraland

Decentralandも仮想通貨のイーサリアムを利用したブロックチェーンベースのVR(仮想現実)プラットフォームであり、米国カリフォルニアを拠点とする非営利団体のDecentraland Foundationによって開発・運営されています。

 Decentralandは、2015年に最初は2次元のプラットフォームとして誕生し、その後、VRとブロックチェーン技術を組み合わせた3次元のVRプラットフォームとして2020年2月に一般公開されました。

 「Decentral」というのは、中央集権的でないという意味で、Decentralandは、ブロックチェーン技術を利用したDAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自立組織)によるユーザー主導の運営体制が採用されていることが特徴です。

Decentraland

 Decentralandのユーザーは、仮想空間内の土地(LAND)を購入することで、自分のワールドを作成することができます。
 そして、自分のアバターを操作して、他のユーザーが作成したワールドを探索したり、チャットで他のユーザーと交流したり、イベントに参加したり、オリジナルゲームをプレイしたりすることができます。

  また、The Sandboxと同じように、土地やアイテムを売買するためのマーケットプレイスが用意されており、「MANA」という仮想通貨でユーザー同士が取引を行うことができます。

MANAやLANDの所有者には、株主のように一定の議決権が与えられ、イーサリアムのスマートコントラクト機能(ブロックチェーン上で契約を自動的に実行する仕組み)を通じて、直接、Decentralandの運営に関与することができます。
 したがって、MANAやLANDは単なる通貨や資産ではなく、株式のようにガバナンス(組織の運営を管理監督する仕組み)に関する機能も併せ持っていると言えます。

Decentraland Genesis Cityの地図

 世界最大のオークション企業である英国のサザビーズがDecentraland内にアートギャラリーをオープンして、アート作品の競売を行ったり、米国のビデオゲーム会社のアタリが「アタリカジノ」を建設して、自社ブランドのゲームを体験できるようにしたりと、現在、多くの企業がDecentralandに注目しています。
 また、日本企業のアソビシステムも、Decentraland内に「メタトーキョー」を構築し、NFTを利用した日本のデジタル文化の輸出を目指しています。

 このように、Decentralandは、既存のインターネットの問題を解決する分散型の新しいインターネットの概念である「WEB3.0」を代表するプロジェクトとして期待が集まっています。
 一方で、LANDやデジタルアイテムなどの価格高騰で初期投資の参入障壁が高くなったことや、データ負荷が大きいために一般的なPCでは動きが遅くなることなどが課題として指摘されています。

Decentraland内のサザビーズのアートギャラリー

 Decentralandの始め方も、The Sandboxとほぼ同様であり、最初に仮想通貨を保管するウォレットを用意する必要があります。

  1. 仮想通貨ウォレットのMetaMaskをインストールし、登録します。

  2. Decentraland公式サイトの「GET STARTED」をクリックして、設定を開始します。

  3. メニューを選んで自分用のアバターを設定します。

  4. ユーザー名を登録します。

 詳細は、「NFT Now」の「ディセントラランド(Decentraland)の始め方・注意点」をご覧ください。

ユーザーがNFT化したコスチュームを披露するDecentraland内の仮想パーティ


③ MyMeta Minecraft (ブロックチェーン版マインクラフト)

 2020年5月に、ブロックチェーンゲーム関連サービスを提供するシンガポール企業のEnjinが人気3Dゲームのマインクラフトをブロックチェーン化するプラグイン「Enjin Craft」をリリースしました。

 このEnjin Craftを導入したサーバー上で提供されているブロックチェーン化されたマインクラフトが「MyMeta Minecraft」で、マインクラフトのアイテムや土地をNFT化して仮想通貨で売買することができるようになります。

 マインクラフトは、世界中に1億人以上のユーザーを抱えるメジャータイトルであることから、Enjin Craftを通じた仮想空間における仮想通貨の利用やNFT化されたデジタル資産の取引が一気に普及することが期待されています。
 また、メタバースの実現にはブロックチェーンの導入が不可欠だという立場からは、メジャータイトルのマインクラフトがブロックチェーンを導入することで、メタバースの実現に一歩近づいたと言うこともできるでしょう。

 Enjinは、ゲームやアプリにNFTや仮想通貨を組み込むためのブロックチェーン開発プラットフォームであるEnjin Platformを提供しています。
 2021年10月時点で、Enjin Platformには39種類のゲームが公開されており、合計2000万人以上のユーザーに利用されています。
 また、ゲームで獲得したアイテムはNFT化されていて換金できるため、ユーザーは遊びながらお金を稼ぐこと(Play-to-Earn)が可能となります

  Enjinは、独自仮想通貨のEnjin Coinを発行し、他にも、仮想通貨やデジタル資産の管理ができるEnjin Wallet、デジタル資産の取引ができるEnjin Marketplaceなどの最先端のブロックチェーン関連サービスを提供しており、世界で注目されている企業の一つです。

 MyMeta Minecraftを始めるための手順は以下の通りです。

  1. Java版のMinecraftを購入し、PCにインストールします。

  2. MyMetaverse公式ホームページ左上の「LOGIN」をクリックし、アカウントを作成します。

  3. スマートフォンでEnjin Walletアプリを入手します。

  4. 公式ホームページにログインし、上部メニューから「COLLECT」をクリックして、MyMetaverseとEnjin Walletを連携します。

  5. スマートフォンで入手したEnjin Walletアプリを起動し、表示されたQRコードを読み込みます。

  6. Java版のMinecraftを起動し、「マルチプレイ」をクリックして、MyMeta Minecraft Serverに接続します。

  7. マインクラフトをMyMetaverseアカウントと連携します。

  8. 公式ホームページの上部メニューから「Play」をクリックすると、MyMeta Minecraftの横に「Linked」と表示されます。

 MyMeta Minecraftの始め方や遊び方の詳細は、「sra Note」の「MyMeta Minecraftの始め方」や「がじゅのゲーム部屋」の「MyMeta Minecraft(エンジンクラフト)の遊び方」をご覧ください。

MyMeta Minecraft


④ Axie Infinity

Axie Infinityは、ゲームをプレイすることで暗号資産が獲得できるPlay-to-Earn型のブロックチェーンゲームを代表するオンラインゲームです。
 1日当たり280万人のユーザーがプレイし、これまでの総取引額は38億ドルに達しています。

Axie Infinityの対戦画面

 Axie Infinityは、「アクシー」というキャラクターを育成し、他のプレイヤーと対戦することなどができるブロックチェーンベースのオンライン・キャラクター育成ゲームで、ベトナムのゲーム開発会社のSky Mavisが2018年にリリースしました。
 また、Axie Infinityを開発したSky Mavis CEOのチュン・グエン氏は、ベトナムの天才プログラマーとして有名で、Coindesk が選ぶ「2021年の暗号資産で影響力を持つ世界の10人」にも選出されています。

 ゲームで稼いだ暗号資産を取引所で売却することにより、一日2~3時間のプレイで月に数万円程度を稼ぐことができると言われており、フィリピンなどでは、本ゲームをプレイすることで生計を立てているプレイヤーが相当数いることが知られています。

 ゲームで育成するキャラクターのアクシーは、それ自体が、独自の外観と固有の「遺伝暗号」を備えた代替不可能なトークン(NFT)であり、ブロックチェーンに格納されます。

 また、アクシーを対戦させるだけでなく、「ルナーシア」と名付けられた仮想空間の中で土地(LAND)を保有し、素材を集めたりアイテムを作ったりすることもできます。
 2021年11月には、Axie InfinityのLANDが550ETH(約2億8600万円)で取引され、大きな話題になりました。

 Axie Infinityを始めるには、仮想通貨取引所の口座やMetaMaskなどの仮想通貨ウォレットが必要となります。
 また、ゲームをプレイして得た仮想通貨のSLPやAXSを換金するには、これらの仮想通貨を取り扱っているBINANCEなどの海外の仮想通貨取引所の口座も必要となります。

 Axie Infinityを始めるための手順は以下の通りです。

  1. MetaMaskをインストールします。

  2. Axie Infinityでアカウントを作成します。

  3. Ronin Wallet (Axie Infinity専用のウォレット)を作成します。

  4. 仮想通貨取引所の口座を開設してイーサリアムを購入します。

  5. 公式マーケットプレイスでAxieを3体購入します。

  6. アプリをインストールしてゲームを開始します。

公式マーケットプレイス

 Axie Infinityの始め方や遊び方の詳細は、「Media Argo」の「アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)とは?始め方や稼ぎ方を徹底解説」をご覧ください。


〇全体構成

【メタバース入門Ⅰ】
1. メタバースとは何か
2. メタバースを支える技術
3. メタバースの分類
【メタバース入門Ⅱ】
4. メタバースの歴史
【メタバース入門Ⅲ】
5.メタバース実現に向けた企業の取組
メタバース入門Ⅳ、Ⅶ】
6. 代表的なメタバースサービスと始め方
【メタバース入門Ⅷ】
7. メタバースの課題と展望

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