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メタバース入門Ⅴ(代表的なメタバースサービスと始め方(2) オンライン3Dゲーム)

 【メタバース入門Ⅳ】に続き、「6.代表的なメタバースサービスと始め方(2)オンライン3Dゲーム」から解説します。


6.代表的なメタバースサービスと始め方

(2) オンライン3Dゲーム

 オンラインゲームは、メタバースが注目されるかなり以前からオンライン上の仮想空間を実現し、多くの人が実際に仮想空間を体験できるサービスを提供してきました。

 その中でも特に、MMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム)は、ゲーム内におけるユーザー行動の自由度が高まることによって、よりメタバースの概念に近いものが生まれています。

 また、MMORPGの運営者側も、積極的にユーザー行動の自由度を高め、ユーザー同士の交流などゲームの元々の目的以外での使い方を増やしていくことで、メタバースを実現していこうという動きを見せています。

① フォートナイト

 フォートナイトは、米国のEpic Gamesが2017年にリリースしたユーザーアカウント数が5億を超える世界最大規模のMMORPGです。パソコンや家庭用ゲーム機、スマートフォンなどの多様な端末でプレーすることができ、異なる種類の端末間でも一緒にプレーできるのが特徴です。

  Epic Gamesは、メタバースの実現に向けて積極的な取組を行っている企業として有名であり、フォートナイトの開発戦略から同社のメタバース実現に向けた戦略を見て取ることができます。

  フォートナイトで有名なのは、最大100人のプレーヤーが武器やアイテムを集めたり、建造物を作ったりしながら生き残りをかけて戦うバトルロイヤルモードですが、ユーザー自ら新しいマップを作成したり、他のユーザーが作成したマップで遊んだりできるクリエイティブモードもあります。
 このクリエイティブモードによって、ユーザー自身の手により世界が拡張されていくUGC(ユーザー生成コンテンツ)の要素を取り入れていることも、メタバースの実現に向けた戦略の一つと見ることができます。

 また、2020年5月には、プレーヤー同士の交流やイベント開催などのソーシャルサービスの要素を強化したパーティロイヤルモードが実装され、同年12月には、仲間とミニゲームなどで楽しめるパーティワールドも実装されました。
  さらに、フォートナイトのゲーム内で、トラヴィス・スコットや米津玄師などの有名アーティストを招いてオンラインライブを開催したり、ゲーム内のバーチャルスクリーンで「インセプション」などの映画を上映したりするなど、多くの参加者を集める様々なイベントを開催しています。

 Epic Gamesは、フォートナイトのような人気オンラインゲームに、UGCを活用する機能やソーシャルサービス的な機能を追加し、様々なイベントを開催して参加者を集めることによって、ゲーム空間上で人々の交流や活動が行われるメタバースの実現を狙っているようです。

フォートナイト内でのトラヴィス・スコットのオンラインライブ

② マインクラフト

 マインクラフトは、2011年11月にスウェーデンのMojang Studiosがリリースした、仮想空間内で3Dブロックを自由に配置して地形や建物を自分で作り、その中でサバイバルゲームを楽しめるサンドボックス型のゲームです。
 これまでの累計販売数は2億本を超え、月間アクティブユーザー数は1億4千万人に達しています。
 なお、2014年にMicrosoftが25億ドルでMojang Studiosを買収したことが話題になりました。

 マインクラフトも、3次元の仮想空間を作成し、アバターを利用してその仮想空間内を自由に行動できるゲームであり、他の参加者が作成したワールドにオンラインで参加できるUGC活用の要素も持っているため、メタバースに発展する可能性のあるゲームだと言えるでしょう。

 また、子供がマインクラフトをプレイすることによって、創造性が刺激される、協調性が育まれる、テクノロジーの基礎が学べるなどの教育的効果が注目されています。
 教育版マインクラフトも売り出され、英語、数学、化学、プログラミングなどの様々な教科をマインクラフトを通して学ぶことができ、世界中の教育機関などが導入しています。

教育版マインクラフト

 マインクラフトでは、マインコインというゲーム専用の通貨を使って、ユーザーが作成した様々なアイテム、スキン(キャラクターの見た目を変えるコスチューム)、ワールドなどのコンテンツをマーケットプレイスで購入することができ、ここでもUGC(ユーザー生成コンテンツ)が活用されています。

 また、マインクラフトは、ブロックチェーン技術を活用したEnjinプラットフォーム上でマインクラフトをプレイできるようにするなど、ブロックチェーン技術の導入に積極的で、将来的にマインクラフトのアイテムや土地などのデジタル資産をNFT(偽造不可能な所有証明書付きデジタルデータ)化して売買できるようにすることも検討しているようです。

 仮想空間内で通貨を流通させたり、ブロックチェーン技術を用いてデジタル資産を取引できるようにしたりすることは、仮想空間内でのビジネス活動を活発にするとともに、仮想空間の運営の収益化に繋がり、仮想空間が永く利用されるメタバースへと発展していくことに貢献できると考えられます。

MicrosoftとEnjinが開発したマインクラフト対応のNFTを獲得できるゲーム

③ あつまれ どうぶつの森

 あつまれ どうぶつの森(略称:あつ森)は、2020年3月に任天堂が発売したNintendo Switch用のゲームソフトで、同社が2001年から販売してきた「どうぶつの森」シリーズの最新作です。
 発売時期が新型コロナ感染症拡大による巣ごもり消費が伸びた時期と重なったことも影響して、2021年9月末時点の販売実績は3,485万本と、世界中で大ヒットを記録しました。

 あつ森は、ゲーム内の無人島の住民として、島のどうぶつたちと交流したり、道具や家具を作って家を飾ったり、虫や魚を捕まえたりして、日常と異なるスローライフを楽しむゲームです。
 また、通信プレイで離れた人の島を訪問したり、自分の島に人を呼んだりすることができます。なお、一つの島で遊べるのは、最大8人までとなっています。

 ゲーム内で支給されるスマートフォンのアプリとして、「マイデザイン」があり、ユーザーがオリジナルの服や家具をデザインすることができます。マイデザインでデザインしたアイテムをオンラインで他のユーザーへ配布することも可能です。

 あつ森は、VRヘッドセットを使用するようなVRゲームではなく、一度に参加できる人数も限られますが、ゲームの最終目的というものが存在せず、仮想空間内でのアバターによる生活体験を楽しむゲームとなっていることから、メタバースと見なされることがあります。

 また、ユーザーが作成した島に人を呼んだり、ユーザーが作成したオリジナルデザインの服や家具を公開して、他のユーザーに配布したりできることから、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用も行われていると言えるでしょう。

 大ヒットしたあつ森は、企業からの注目も集めています。
 ANNA SUI、VALENTINOなどの有名ブランドが自社コレクションをマイデザイン用に公開しています。

あつ森用にANNA SUIが公開したマイデザイン

 また、日本のポーラ美術館、台湾の国立故宮博物院、アメリカのメトロポリタン美術館などが所蔵作品のイメージをマイデザイン用に公開し、ゲーム内に作成した会場で会社説明会を行う日本企業も現れました。

メトロポリタン美術館が公開した所蔵作品のイメージの展示例 

 さらに、政治利用が問題となって、最終的には計画が撤回されましたが、2020年9月には、自由民主党の石破茂氏があつ森に自分のアバターを登場させて、総裁選の選挙運動にあつ森を利用する計画を発表しました。
 また、アメリカでは、同年10月にバイデン大統領候補がゲーム内に選挙本部を開設しました。

あつ森のゲーム内に開設されたバイデン大統領候補の選挙本部

〇全体構成

【メタバース入門Ⅰ】
 1. メタバースとは何か
 2. メタバースを支える技術
 3. メタバースの分類
【メタバース入門Ⅱ】
 4. メタバースの歴史
【メタバース入門Ⅲ】
 5.メタバース実現に向けた企業の取組
メタバース入門Ⅳ、Ⅴ、
 6. 代表的なメタバースサービスと始め方
【メタバース入門Ⅷ】
 
7. メタバースの課題と展望

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