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【第2回】IPO大賞受賞記念講演「IPOへの道のりと、これからのアイスタイル」

※この記事は2017年3月に取材した内容です。

2017年3月16日、アイスタイルは、東京ニュービジネス協議会が主催する「第11回IPO大賞」のグロース部門を受賞しました!
IPO大賞は、「新規株式の上場で日本経済の活性化に貢献している、或いは牽引役となっている企業を顕彰することにより、その意義を世間に広報すると共に、ニュービジネスやベンチャー企業の振興と育成に寄与すること」を目的に2006年に創設されたアワードです。

上場したばかりの成長著しい企業に贈られる「ルーキー部門」と、今回アイスタイルが受賞した、株式上場後4年経過し、企業として拡大発展し日本経済活性化の牽引役を担う新たなビジネスモデルのベンチャー企業に贈「グロース部門」の2つの部門賞が設けられています。

授賞式の場で、記念講演として代表取締役 兼 CEOの吉松がIPOに至るまでの道のりや、これからのアイスタイルが目指すべき姿。そして、今後起業を目指す方へのメッセージなどをお話しさせていただきました。

本記事はその記念講演の内容の書き起こしとなります。全5回の連載でお届けします。


―なぜ化粧品業界だったのか

で、なぜ化粧品業界を選んだのか。化粧品業界選んだ理由は非常にシンプルです。当時いろいろインターネット業界調べていて、出版業界にいちばん近かったのが化粧品業界だったかからです。化粧品業界と出版業界、近いと思わないですよね。それが実はすごく似てるんです。そこに新しいビジネスモデルができる可能性を感じた。

まずなにが近いかというと、再販制度。皆さんご存知ですよね、値引きしちゃいけない商品ってやつです。本ってどこで買っても値段一緒じゃないですか。これはルールが決まってるんです。元々は北海道の山奥に住んでいる人と東京にいる人で勉強の機会・知識を得る機会に差が出てしまってはいけないということで、そういった学習機会を平等にする目的で新聞とか本はどこで買っても値段が一緒なんです。

同じように近年まで再販制度があって、価格が比較的崩れない商品は何かって考えたら化粧品業界がそうだったと。安売りしてはいけない出版業界、講談社、集英社、小学館すごく大きい会社があります。でも一方で、名前を知られていない小さな出版社も山ほどもありますよね。化粧品メーカーも実は4000社から5000社あります。アットコスメに登録されているブランドだけで3万ぐらいある。資生堂さんだけでも100ブランド以上もってますからね。それだけ多くの会社が商売を成り立たせることができる業界ってことです。

もう一つ特徴的なのが、実は広告にかける金額が非常に大きいんですよ。よく広告ってテレビ、新聞、雑誌、ラジオ、インターネットが5番目でインターネットがよく伸びてますよっていうのは聞くと思うんですけども、そうじゃなくて、ビールとか車とか保険とか、そんな風に業界別の広告費規模を比べてみると、化粧品業界はいうのは、なんと第1位なんです。しかも売り上げに対する広告比比率もべらぼうに高い。

※2017年の資料

なぜか。メーカーの利益率が高いから。でも化粧品業界は、もう30年間ほど売り上げ規模はほぼ横ばいです。化粧品使う日本の人口増えてませんよね?でも、どんどんどんどん利益は上げなきゃいけない。そこにインターネットが入ってきた。インターネットを使えばマーケティング効率が良くなる。広告費全体の3000億の1%がインターネットになれば30億、10%インターネットになれば300億。

26歳の僕です。100万円の束すら、まだみたことない若造ですよ。でもどう計算しても億単位の利益が見込めた。これ、やらないわけにはいかないなって思いました。

―アイスタイルのビジネスモデル

でも、このビジネスモデルをもって色々な会社に説明して回ってもなかなか理解してもらえないんですよね。今ならクチコミとかレビューって誰でもイメージができると思うんですが、なにせその時世の中にアットコスメのようなクチコミサイト、レビューサイトってなかったですからね。それで、これはとにかくビジネスプランコンテストで入賞して箔をつけようって言って(東京ニュービジネス協議会のコンテストに)応募したんです。

そしたらですね、これが、優秀賞くれたんです。大賞じゃなかったからちょっとね、悔しかったですけど。絶対大賞は俺たちのプランだろうと思いましたけど(会場笑)。でも優秀賞をとったことで、話を聞いてもらえるようになった。賞をもらうことの意味とか価値みたいなものを、そのとき知りましたね。

で、誤解されやすいことと書きましたが、よく「クチコミサイトのアットコスメを運営するアイスタイル」とご紹介いただくのですが、実は僕たちが考えていたビジネスモデルは、データベースマーケティングです。「Market Reputation DB」、「クチコミデータベース」、市場のクチコミ情報を使ったデータベースを軸にしたビジネスをやろうと考えていました。それは今も全く変わりません。

とはいえもちろん、世の中の人は「アットコスメ=クチコミ」って知っていてくださっていて、それはそれで充分なんです。さきほどもね、「日本中の女性が知っている」とご紹介いただきましたけれども、でも知っていただいているのがほとんど女性なので、こう、男性の集まりに行くと「アットコスメやってるアイスタイルです」って言ってもへー、ふーんって(会場笑)。

そんな中で、僕たちが面白いなとほめていただいたのが、各企業様はみなさん、自分のお客様データを持っているわけです。資生堂は資生堂、カネボウはカネボウ、コーセーはコーセーの。自分のお客様に次の商品も買ってもらうのは大事ですけど、それだけだと新しいお客様は増えないですよね。(資生堂が)本当にやりたいのは、カネボウの商品を買ったお客様に「なんでカネボウ買ったんですか?資生堂の方がいいですよ」って聞くことなわけですよ。じゃあ、カネボウのお客様のデータはどこにあるか。カネボウさんが持っているんですよね。

カネボウさんにピンポーンって行って、「すみません御社のお客さまデータ使わせてもらえないですか」って聞いたって、「何言ってんですか、大事なお客様データベースなのに」って言われちゃいますよね。ましてや個人情報の問題もありますというと話が進まない。

メーカーが自社だけでデータを集めようとしても限界がある。だから、僕たちは業界全体の巨大な顧客データベースを作りたいと思ったんです。アットコスメに資生堂のクチコミが100件入ってます。カネボウのクチコミが100件入ってます。これはこれでもちろん、生活者のみなさんが商品を選ぶときの大事な参考データになるんですけども、翻って裏から見てみると、資生堂を使っている100人のお客様データだし、カネボウを使っている100人のお客様データベースなわけです。

そう考えると、アイスタイルがお手伝いすることで、資生堂とカネボウ両方使ってる人、資生堂だけ使ってる人、カネボウだけ使ってる人にユーザーを分けてグループインタビューして、それを商品開発に生かす、ということができるようになるんです。お客様の情報をみんなで共有化しましょう、お客様は独占するものではなく、共有化するものですっていうところが私たちのビジネスの原点になっています。

ー生活者中心の市場創造

ですので、クチコミサイトを作るっていうよりも、いかに疑似的な購買データとして集めるかということをこの17年間やってきました。生活者中心の市場の創造ですね。ユーザの声を集めて市場を作っていく。これが僕たちのやりたかったことです。本来、またあとで詳しくお話させていただくんですけれども、生活者の声が市場を作るはずですよね。でも実は、メーカーや流通に関わる方々が見てるのは生活者ばかりじゃないんですよね。

実際、化粧品メーカーさんは面白い言葉を使うんです。コンシューマーとカスタマー。コンシューマーはもちろん商品を購入してくださるお客様のことです。でも、実際のところメーカーさんのカスタマーは小売店さんなんです。先ほどの講演の農家さんの話と一緒ですよね。農家さんにとっては本来消費者がお客さまなんですけど、誰を見て野菜作っているかっていうとカスタマー、つまりJA。自分たちの売り上げというのは、小売店が仕入れてくれることでできるわけですから。

だから、例えばfacebookで「いいね!」が10万ついている商品と1万の商品を仕入れるときに5:5とか、下手したたら3:7みたいなことが起こる。「生活者の支持を得ている」という以外の要素、掛け率みたいなことが、どうしてもMDの判断材料に入ってくるから。

そこに変化を起こしたいとずっと考えてやってきています。ですので、私たちはマーケットデザインカンパニーを名乗っています。アットコスメのデータベースに集まってくる生活者の声をベースにした、新しい市場の在り方をこれからも提案していきたいと思っています。


『IPO大賞受賞記念講演「起業からIPOへの道のりと、これからのアイスタイル』第3回はこちらからご覧ください。